その拡散力から、ハッシュタグチャレンジといったブランディング系のメニューでよく知られるTikTok。しかし最近は、運用型広告のニーズも高まっている。
実際、国内でも2020年のローンチ以来、ゲームや漫画といったエンタメ系アプリを中心に、ニーズを集めているという。その大きな要因となっているのは、獲得効率の良さだ。
「TikTok広告の成長ぶりは、かつてのFacebook広告を彷彿させる」。こう語るのは、TikTok公認のMCN(マルチチャンネルネットワーク)で、同プラットフォームの活用支援も行うNatee(ナティー)の取締役COO、朝戸太將氏だ。かつてFacebook広告は、運用型広告を武器に、ローンチから数年で国内でもかなりの規模まで成長した。現在のTikTok広告の運用型広告へのニーズの高まりは、当時のFacebookに近いものがあるというわけだ。
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本稿では朝戸氏に加え、企業のソーシャルメディア活用支援を手がけるテテマーチの取締役、松重秀平氏のコメントから、国内におけるTikTok広告活用の現在地を探る。
ブランディング活用の傾向
朝戸氏によると、現在、同社の支援のもと、TikTokにブランディング目的で出稿している広告主は、美容系、ゲーム、日用品、飲食、食品系が多く、なかでも美容系、次いで教育関連企業が多いのだという。その活用方法は主にふたつだ。
ひとつは、テレビCMで獲得した認知の山を、TikTokのハッシュタグチャレンジや純広告といったブランディング系のメニューを活用してブーストすることだ。「統合プランニングの重要性が叫ばれる昨今、テレビCMの活用も、ソーシャルメディアと組み合わせて実施されるケースが多い。その際、若年層にリーチできる媒体として、TikTokが候補に挙げられることが多いようだ」。
ふたつ目は、YouTubeやインスタグラムに次ぐ新たな出稿先として、TikTokをテスト的に活用するケースだ。「YouTubeやインスタグラムで成功体験を積んだ広告主が、TikTokに注目している」。
では、何がこうした広告主を魅了しているのか。それはTikTokが持つ拡散力にあるという。松重氏は「一度バズったときのTikTokの拡散力は、Twitterをも凌駕する」とメール取材で述べる。「加えて、最近は年齢の高いユーザーも参入しつつあるため、活用の幅はさらに広がるだろう」。
高まる獲得系ニーズと運用型広告の成長
ブランディング活用だけではない。獲得系のニーズも高まっている。
現在TikTokでは運用型広告が大きく成長しており、国内でもゲームや漫画アプリをはじめとする広告主やD2Cブランドが、顧客獲得を目的に広告費を積極的に投下している。
朝戸氏はこうした運用型広告の成長ぶりについて、「かつてのFacebook広告に近しいものがある」と述べる。思い出して欲しい。Facebook広告は、ローンチから数年で国内でもかなりの規模まで成長した。同氏によると、そのドライバーとなったのは「運用型広告の獲得効率の良さだった」という。TikTokの運用型広告も、その獲得効率の良さから広告主の注目を集めている点が、当時のFacebook広告に近いというのが同氏の見解だ。「今後も、運用型広告がTikTokの大きな成長の要になっていくと思う」。
広告主にとってのペインポイント
ただブランディング広告については、広告主にとっての、あるペインポイントに目を向ける必要がある。
現在、国内ではハッシュタグチャレンジをはじめとしたブランディング系の広告に、URLを仕込むことができない(運用型広告は可能)。投資対効果を可視化したい広告主にとって、これは出稿をためらう要因にもなり得る。
「URLを貼れないという事実を告げると、残念がる広告主は多い」と朝戸氏。「海外では、ブランディング系のメニューに関してもShopify(ショッピファイ)との連携が進んでおり、eコマースサイトへの接続も可能になっている。国内でも、そうした機能の実装が待たれる」。
また、松重氏も同様の見解を示す。「現状TikTokでは、データで購買につながったかを追い、広告の投資対効果を可視化するのは難しい。これは惜しいポイントだ」。
ライブコマースという可能性
また、TikTokは広告媒体としてだけでなく、eコマースプラットフォームとしても、存在感を高めている。その要になっているのが、ライブコマースだ。今後国内でも、TikTokがトレンドの中心になる可能性も考えられる。
しかし朝戸氏は、「日本の消費者はそもそも、KOLやインフルエンサーといった個人ではなく、企業やブランドに多くの信頼を寄せる傾向があるため、国外のようにライブコマースが流行るのには時間がかかるだろう」と述べる。
「国外のTikTok活用事例で見られるような、『1時間で数千万円を売り上げた』というような事例が日本で出てくるまでは、まだ相当な時間がかかるだろう。現状、国内におけるライブコマースは、広告主とインフルエンサーが、手を取り合う方向で発展していくと考えている」。
Written by 村上莞
Illustration by IVY LIU