メモ
アメリカ各州の司法長官らが「Googleは独占禁止法に違反している」として起こした訴訟に関連して、2022年1月14日に新しく裁判の証拠となる文書が提出されました。この文書から、広告市場におけるGoogleとMeta(当時の名称はFacebook)の優位性を維持するためのプロジェクトに、Googleのサンダー・ピチャイCEOとMetaのマーク・ザッカーバーグCEOが直接的に関与した可能性が浮上しています。
THIRD AMENDED COMPLAINT
(PDFファイル)https://www.documentcloud.org/documents/21179902-3rd-complaint-for-texas-google-antitrust-case
Zuckerberg and Google CEO approved deal to carve up ad market, states allege in court – POLITICO
https://www.politico.com/news/2022/01/14/facebook-google-ad-market-lawsuit-527108
Mark Zuckerberg and Sundar Pichai were involved in ad collusion plot, claims court filing – The Verge
https://www.theverge.com/2022/1/14/22883987/mark-zuckerberg-sundar-pichai-ad-collusion-tx-ag-paxton-complaint
Lawsuit: Google, Facebook CEOs colluded in online ad sales – ABC News
https://abcnews.go.com/Technology/wireStory/lawsuit-google-facebook-ceos-colluded-online-ad-sales-82273527
2020年12月、テキサス州のケン・パクストン司法長官らが率いる司法長官らの連合が、「Googleは独占禁止法に違反している」として訴訟を起こしました。この訴訟では、広告市場の独占に関連してFacebookと反競争的な契約を交わしたことも指摘されており、裁判の証拠として提出された文書からGoogleが打ち出したさまざまな計画が明らかになっています。
Googleは、複数のアドネットワークをまたぐ広告売買を容易にするアドエクスチェンジの1つ、「Ad Exchange(AdX)」を運営しています。ところが、広告の売り手でもあり買い手でもあるGoogleがAdXを運営する状況については、「Googleが野球のピッチャーもバッターも審判もやるようなもの」と批判されています。近年では、広告競売システムにおけるGoogleの支配力を軽減するため、複数のアドエクスチェンジに対して同時にオークションを実施するヘッダービディング(ヘッダー入札)というシステムが導入されており、2016年にはアメリカの主要オンラインパブリッシャーの70%がヘッダー入札を採用していました。
ヘッダー入札が自社の広告システムを脅かす存在だと認識していたGoogleは、外部に公開された場合に批判を集めるリスクを承知で、AdXにおけるGoogleの手数料のみをゼロにする「ジェダイ」というプログラムを導入。さらに2017年にFacebookがヘッダー入札を採用すると、今度はFacebookと共謀して広告市場の優位性を維持する「ジェダイ・ブルー」というプログラムを始めました。「ジェダイ・ブルー」は、広告枠の競売においてFacebookが落札できる頻度を上げるというもので、訴状では「Facebookが入札・落札する頻度と最低金額を設定することで、文字通り競売を操作していた」と指摘されています。
Googleがインターネット広告市場を独占するための施策「ジェダイ・ブルー」や「Project NERA」の詳細が明らかに – GIGAZINE
2019年の調査では、Facebookは他のプラットフォームより多くの広告をGoogleのオークションで落札していたことだけでなく、アプリ内インプレッションごとに支払う平均価格が、Googleが運営するオークションでは他のプラットフォームより低いことが判明していると報じられています。
そして2022年1月14日、ニューヨーク州の裁判官が「さらに追加の詳細情報を公開するべき」と判断したことを受けて、州司法長官連合は黒塗り修正が少ない新たなバージョンの証拠文書を公開しました。この文書の中では、Meta(当時はFacebook)のシェリル・サンドバーグCOOが「ジェダイ・ブルー」の交渉を支援し、ザッカーバーグ氏に対して「戦略的に大きな問題」と訴えて承認を促したことが示されています。取引交渉を行ったチームはザッカーバーグ氏へのメールで、「私たちは署名する準備ができており、前進するためにあなたの承認が必要です」と記していたとのこと。
訴状では、ザッカーバーグ氏は決定を下す前にサンドバーグ氏やその他の幹部との面会を求め、2018年9月にサンドバーグ氏とGoogleの上級副社長が「ジェダイ・ブルー」の契約に署名したと述べています。また、Googleのピチャイ氏もこの契約条件に関して個人的に署名したと司法長官らは主張しています。
Metaの広報担当者であるChris Sgro氏は、Googleやその他の入札プラットフォームと結んだ同様の契約は、広告設置の競争を増やしたと主張。「これらのビジネス関係により、Metaはパブリッシャーに公正に補償しながら広告主により多くの価値を提供し、全ての人にとってよりよい結果をもたらします」と述べています。
Googleの広報担当者であるPeter Schottenfels氏は司法長官らの一連の主張に対し、「不正確さに満ちており、法的メリットを欠いています」「当社の広告テクノロジーは、ウェブサイトやアプリの資金調達に役立ち、中小企業が世界中の顧客にリーチすることを可能にします。オンライン広告の競争は激しく、アドテクノロジーの利用料は低下しており、パブリッシャーや広告主の選択肢は広がっています」と反論。また、ピチャイ氏が契約の承認に関与したことを否定し、「私たちは毎年のようにCEOの承認を必要としない何百もの契約に署名しており、『ジェダイ・ブルー』の契約もそうでした」と述べました。
また、ウォール・ストリート・ジャーナルは新たに公開された文書から、Googleの広告購入システムに優位性を与える「プロジェクト・バーナンキ」に3つのバージョンが存在したことや、広告関連のプロジェクトについてGoogle従業員が懸念していたことが判明したと報じています。
Google Misled Publishers and Advertisers, Unredacted Lawsuit Alleges – WSJ
https://www.wsj.com/articles/google-misled-publishers-and-advertisers-unredacted-lawsuit-alleges-11642176036
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