著作権侵害の監視をプロバイダーに強制する「SMART著作権法」案に対してInternet Archiveや電子フロンティア財団が反対意見を表明

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2022年3月18日、アメリカのトム・ティリス上院議員とパトリック・リーヒ上院議員が、Strengthening Measures to Advance Rights Technologies Copyright Act of 2022(権利技術を進歩させるための強化措置著作権法)、通称「SMART著作権法」案を連邦議会に提出しました。このSMART著作権法案に対して、Internet Archiveや電子フロンティア財団が反対意見を表明しています。

Internet Archive Joins Opposition to the “SMART Copyright Act” – Internet Archive Blogs
http://blog.archive.org/2022/03/29/internet-archive-joins-opposition-to-the-smart-copyright-act/

The New Filter Mandate Bill Is An Unmitigated Disaster | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/ja/deeplinks/2022/03/new-filter-mandate-bill-unmitigated-disaster

SMART著作権法案は、「ユーザーによるコンテンツのアップロードを認めるすべてのデジタルプラットフォームあるいはウェブサイトに、著作権局が指定した『技術的措置』の使用を強制する」というもの。この技術的措置とはコンテンツ監視ツールのことで、オンラインサービスプロバイダーはコンテンツ監視ツールの使用義務を怠ると数億円規模の罰金が科せられる可能性があります。


Internet Archiveは「SMART著作権法によって、一部のロビイストや弁護士が著作権局に自社製品を採用するように働きかけることになります。そして、そのツールがどんな代物であったとしても、大手ハイテク企業から地元の図書館まで、この法律の対象となる誰もが実装しなければなりません」と述べ、技術的措置の危険性を指摘しています。

アメリカ・カリフォルニア州にあるサンタクララ大学法学部のエリック・ゴールドマン教授は「SMART著作権法は、著作権で保護された作品のフィルタリングの義務化をめぐる委任状の争奪戦を巻き起こします。強制的なフィルターは消費者を傷つけるような間違いを起こしやすく、参入の障壁を高めて競争を低下させるものです」とコメントしました。

さらに、Internet Archiveは「もっと踏み込んで言えば、SMART著作権法は真に並外れた力を著作権局に与えることになります。著作権局は何千もの事業に、企業側の費用負担で、企業が望まず必要としないであろう技術を強制的に導入させることができます。強制された技術的措置はインターネットの仕組みを作り変えるかもしれません」と述べ、SMART著作権法に対して反対する姿勢を示しました。


電子フロンティア財団はSMART著作権法に対して、「技術的措置を義務化することは、必然的に合法的な表現を抑圧します」と述べています。そもそも積極的に「Content ID」というコンテンツ監視システムを取り入れているYouTubeでは、システムの不具合によって問題のないコンテンツが著作権侵害と判断されることも多いほか、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を悪用して不正に著作権侵害を行う「コピーライトトロール」が横行している状態。例えば、単なるホワイトノイズを10時間垂れ流すだけの動画に、著作権侵害を主張する者が複数現れたという事例もあります。

ノイズを流すだけのムービーに著作権侵害の申し立てが続出、一体なぜなのか? – GIGAZINE


電子フロンティア財団は、コンテンツ使用が合法なのか違法なのかを区別するためには文脈を解釈する必要があり、こうした文脈解釈は人間であれば判断できても、自動化したシステムには不可能だと主張しています。

さらに、技術的措置の義務化はセキュリティとプライバシー上の懸念がある、と電子フロンティア財団。「一部の著作権者は、ネットの権利侵害を阻止する責任をサービスプロバイダに押し付けようとするのではなく、堅固で信頼できるオープンなインターネットという重要な公益に道を譲らなければなりません」と述べました。

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