ドロステン教授の「オミクロン分析」

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新型コロナウイルスの変異株オミクロンが世界で猛威を振るっている。オミクロン株の場合、感染の重症化件数には増加はみられない一方、感染者の急増で社会の基幹インフラ(医療、看護、電気、交通、警察、消防など)が機能できなくなる事態が予想されてきた。

ドロステン教授(NDR公式サイトから)

ドイツの世界的ウイルス学者、クリスティアン・ドロステン教授(シャリテ・ベルリン医科大学ウイルス研究所所長)はドイツ公共放送局の北ドイツ放送(NDR)情報ポットキャスト「コロナウイルス・アップデート」(1月4日)でオミクロン株の現状とその対策について初期研究結果を報告している。以下、その概要を紹介する。

同教授は、「オミクロン株は急速に拡散しているが、感染者のその後の症状の悪化はデルタ株より確かに少ない。英国や1日で100万人の新規感染者がでた米国と比較すれば、ドイツでは感染者の増加テンポは遅いが、オミクロン株は1月末までにはわが国を席巻するだろう。わが国では現在、感染者数は4日で倍加のスピードだ。他の国ではオミクロン株が初期感染時に既に2日で倍加している」という。

英国からのデータ(クリスマス前に収集されたデータ)によると、集中治療室に入院する新型コロナ患者は少なくなり、感染した患者のうち病院に行かなければならない患者の割合は少なくなっている。インぺリアル・カレッジ・ロンドンの研究では、オミクロン感染症で病院に行かなければならないリスクは、デルタ株による感染症より最大30%低い。2回ワクチン接種を受けた人の場合、リスクは34%減少、3回目ブースター接種を受けた人の場合、入院のリスクは63%減少している。ドロステン教授は、「英国のデータからみても、オミクロン株から保護するためには3回目のワクチン接種が必要となることが明らかだ」と強調した。

興味深い点は、ワクチン未接種者の入院リスクもオミクロン株ではデルタ株より24%減少するという。ドロステン教授は、「ワクチン未接種者にとて朗報かもしれないが、そうとも言えない。ドイツでは60歳以上のワクチン未接種者が約300万人いるが、高齢者グループにとってオミクロン株の高い感染力のために必然的にさまざまな経過で感染症や病気を起こすことが予想できるからだ」と説明する。

次に、同教授はデンマークの研究結果を紹介する。デンマークで昨年12月、デルタ株とオミクロン株の2次発病率を調査している。感染者と直接接触して感染する人の割合がどれほど高いかを調べた。2225人のオミクロン株感染者と9712人のデルタ株感染者を調査した結果、オミクロンの場合、全体の感染率は31%、デルタ株の場合21%だった。2回のワクチン接種を受けた人の比率は32対18、3回目の接種の場合、その比率は25対11となっている。オミクロンの場合、3回目のワクチン接種でようやく感染率が下がることを示している。同教授は「2回のワクチン接種では、おそらくオミクロンによる拡散制御にあまり貢献しない」と指摘した。

オミクロン株の感染で重症化リスクが低いとしても多くの人に感染する。感染すれば人は発熱し息切れなどを発症する。オミクロン株の感染力を考えると、多くの人が感染することで多数の労働者が不在となる結果、社会の重要なインフラストラクチャーの領域(病院、看護、食糧供給、交通、電力)で問題が生じる。

ドロステン教授は、「検疫期間(Quarantane-Zeit)を短縮することを考えなければならない。感染接触者(Kontaktperson)が安全のために14日間家に留まらなければならない場合、社会は多くの労働者を失うことになる。社会にとって大きな損害だ。だから、政治的な観点からそのような事態を回避しなければならない」という。ドイツでは現在、隔離(感染者)と検疫(感染者の接触者)はそれぞれ14日間だ。ドロステン教授は、「少なくとも重要な分野では、検疫期間を短縮する必要がある」という。

同時に、重症化リスクが少ないのならば、ワクチン接種を受けるより、感染症を経験することで免疫が付くと考える人がいるが、「若い人がそのように考えるのは理解できるが、感染症は免疫系の訓練ではない。新型コロナ感染による肺の損傷リスクが出てくる。感染症で免疫系を訓練できると考えるのは間違いだ」と警告している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。