今週のつぶやき:孫正義氏の世界ほか

アゴラ 言論プラットフォーム

どうやらバンクーバーは祟られているようです。マクドナルドがポテトの販売制限を再び行うと発表したその報道にはバンクーバー港での大幅な遅延と明記されています。私どもでも3週間前以上にバンクーバー港に到着した輸入貨物が昨日ようやくリリースされました。船が着いてからこれだけの時間がかかるようでは貿易港として機能しません。報道では天候の理由にしていますが、私の見たところ、人がいないとみています。オミクロンで隔離、オミクロンがいやで出勤しないという具合です。私の会社の事務所では2週間前にスプリンクラーを飛ばし、6基あるエレベーター全部が水に浸かり私は毎日13階まで歩いて行き来しています。20階建てのこの雑居ビル、階段が嫌なのか、人が極めて少なく幽霊ビルのような状態です。

では今週のつぶやきをお送りします。

何か臭うぞ、市場の変化

新年になって第1週の取引。どうもおかしな気がします。アメリカ12月度雇用統計は事前予想の45万人増に対してわずか19.9万人増ながら失業率は0.3ポイント改善の3.9%。雇用者の絶対数はコロナ前に程遠い一方、アメリカにおける失業率3%台は完全雇用に近く、これ以上労働市場がひっ迫すれば賃金は加速度的に上昇し、雇用の質が大きく下がるのは経済学で説明されている通りです。株式市場ではハイテク株の多いナスダックが散々でラスベガスで開催されているCESで普通、盛り上がるこの時期もいつもとは明らかに違う風景です。

一方、原油の価格は堅調で80㌦程度まで戻しており、専門家の予想は100㌦に向けて上昇継続とされます。萩生田光一経済産業相は火力発電を擁護し、CO2を地下貯留する技術を実用化させると述べてます。そのインタビューで目に留まったのが「欧州の方式がすべて正しいというのではない。日本は日本の独自のしくみで結果を出すのが大事だ」(日経)という発言。また、カザフスタンではLNG価格が上昇し暴動が起きてロシアに支援を要請する事態になっています。2022年、欧米主導のカーボンゼロは理念から現実に引き戻されて妥協点探しに向かうのでしょうか?

そういえばそのカザフスタンはビットコイン採掘のメッカですが、ネットが遮断され採掘が止まっています。そのため、業者が手持ちのビットコインを売る動きが出たため、現在、ビットコインの相場は41000㌦台まで下がっています。ですが、思い出してほしいのは中国がマイニング禁止とした時も暴落した後、その後、倍返しをしています。市場は明らかに浮ついており、向かうところ探しをしています。私の目先だけの予想は今は過渡期で喉元を過ぎれば一時的にはなんとやら、になるとみています。

アメリカ、議会襲撃から1年

あの議会襲撃事件から早1年。その間、俎上に載せられたのが民主化とアメリカの向かう道でした。昨日、バイデン氏は演説でトランプ氏の名指しこそしなかったもののほぼ明白なトランプ氏攻撃を行う一方、トランプ氏も反論するなど世論は相変わらずです。ただ、メディアで報じる世論の二分化どころか民主党のちぐはぐぶりを見ると「世論の細分化」が正しい表現ではないかとみています。

バイデン氏の鳴り物入りの「Build Back Better」法案は上院の民主党マンチン議員の反対表明で50:50の上院通過が出来ない状態です。マンチン氏に対して民主党極左のサンダーズ議員が食って掛かるなど内紛に近い状態でバイデン氏はさっぱり纏められない状態です。私から見ればバイデン氏は国内もうまく纏められないのにやれ中国だ、やれウクライナだといっている場合ではないとみています。逆に言えば全くの力量不足でアメリカも不幸な時代を迎えたものだと思っています。

ではトランプ氏が3年後に復活するのか、といえばこれもまた極端な話だと思っています。個人的にはトランプ氏再選はないと思っています。アメリカ国民や共和党が劇場型政治にまた振り回されたいのか、という自問をするだろうと信じています。ただ、共和党は当面はトランプ氏に吠えさせるでしょう。なぜなら共和党には有利ですから。但し、いざ、大統領候補を選ぶときは有権者は冷静になるはずです。そしてトランプ氏ももういい歳です。バイデン氏が年寄りだったという反省が起こればトランプ氏でもないと選ぶでしょう。それまではもう少し、ブロードウェイとハリウッドを足したような政治エンタテイメントが続くのではないでしょうか?

孫正義氏の世界

私は日経ビジネスの回し者ではないですが今週号の「孫正義の『資本論』 ソフトバンク、巨大ファンドの内幕」はなかなかの力作で編集長の孫氏とのインタビュー記事では孫氏が「いかがわしくあり続ける」と述べたのが極めて印象的でした。この「いかがわしい」は経団連的な価値観の経営者から浴びせられた孫氏評価に対するレスである、という趣旨を編集長が述べています。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(同社サイト:編集部)

経営のやり方は100人100色であるべきで投資家もクライアントもその色に惹かれることに魅力があり、創業者冥利に尽きるものがあります。企業の色はサラリーマン経営者の場合なかなかつけづらく、伊藤忠の岡藤会長とかサントリーの新浪社長といった剛腕型の方にしてようやく、という感じかと思います。なぜ色が付けにくいのか、と言えば従業員の色を社長と同じ色に染められないからです。どうせ社長やっても6年という高をくくったところもあるでしょう。派閥が渦巻き、いやな社長なら見ぬふりです。それは日本型雇用の弊害でもあると言えましょう。

さて、孫氏と取り巻くブレーンの声から見る孫氏の目指すところは「ビジネス版革命家」。何度となく「だめだ」と思わせた孫氏の数々の事業もいつの間にか兆円単位のビジネスになっていて今やベンチャーキャピタルでは世界ナンバーワン。その孫氏がウォーレンバフェット氏率いるバークシャーを「単なる投資家」と冷たくあしらっているのが印象的です。「俺は配当金目当てのちっちゃい夢は追わない」と言わんとしているのでしょう。日本の経営者でここまで言える人はいません。孫氏のやんちゃ、腕白ぶりは通常次元でモノを見る人には絶対に理解できない世界です。正月の読み物としては刺激的でした。

後記
オミクロン株で沖縄、山口、広島の米軍基地がある3県にまん延防止措置適用となりました。ここカナダでも手に負えず、政府は一定の制限を施していますが、多分、ピークアウトするまで爆発的数字になるとみています。フランスのマクロン大統領はストレスが溜まり過ぎたのか、ワクチン未接種者に対して「うんざりさせたい」と。ただ、再三言うようですが、病床使用率、重症化数で判断しないと過去のコロナとは違う相手だという認識をすべきでしょう。高齢者にはブースター、若者の感染者には飲み薬を早く提供することで乗り越えるしかなさそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年1月8日の記事より転載させていただきました。

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