感染で無収入「風俗戻るのは…」 – BLOGOS編集部

BLOGOS

「大げさだと思うかもしれませんが、コロナに感染して私の生活の全てが狂いました」

各地で新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株の感染報告が相次ぐ中、今年夏にコロナ感染を経験したという女性はそう話す。

「話を聞いてくれませんか?」

女性は、人の移動が盛んになる年末年始を前に「感染とそれが原因で引き起こされる経済的な苦しみを誰にも味わって欲しくない」と口を開いた。

コロナで崩れた月収13万円の生活

Getty Images

都内に住む典子さん(38歳・仮名)は、今年の8月にコロナに罹患した。全国で感染者が2万人を超え、都内では5000人を超えていた時期だ。

新宿で友人女性とルームシェアをしている彼女は「住んでいる場所柄、いつかは感染してしまうかもしれないと覚悟していた」と話す。

元々風俗店に勤務していた典子さんだが、コロナ禍で稼げなくなったため必死に就活をした結果、派遣会社に就職することができた。

派遣の仕事で何とか月13万円程度が稼げるようになってきた。そんな時にコロナに感染した。

「今後どうなってしまうんだろう…」

1番最初に頭に浮かんだ不安はお金が尽きること。派遣の仕事は日給制だ。有給休暇もなければ休業保証もない。働かなければ収入はゼロになる。

だが感染してしまった以上、保健所の指示に従い自宅療養する他なかった。

「本当はホテル療養したかったんですが、当時はホテルが一杯で受け入れ先がありませんでした。救援物資の必要有無の連絡もなく、本当に色んなところで行政の手が回っていないんだと実感しました」

「もう風俗には戻りたくない」 消える貯金の14万円

ルームシェアをしている家の賃貸料は月12万円。それを同居人と折半するため、典子さんの毎月の家賃支出は6万円だ。それに光熱費やスマホ代、食費などを足すと、どれだけ節約しても月に計12万円の収入は必要となる。

感染時、彼女の銀行の貯金残高は14万円だった。

「とりあえず1ヶ月は暮らせるけれど、最低でも2週間分の給料は入ってこない。病床ではお金の計算ばっかりしていました」

もう風俗には戻りたくはない。翌月のことを考えると頭が痛くなった。

コロナ陽性でホストクラブに通っていた同居人

そんな彼女にさらなるショックを与えたのが同居女性のものとみられるTwitterアカウントの投稿だった。

「きっかけは友人のTwitterを見ていたこと。同居人は私に『SNSはやっていない』と言っていたのですが、ツイートの口調や職業、写真で明らかにその子だとわかるアカウントがありました」

そこには、典子さんの感染5日前にコロナに感染していた事実が投稿されていた。病院に行って検査したこと、陽性発覚の翌日も職場に出勤したこと、ホストクラブを訪れたこと…。

「彼女は無症状でした。陽性だったけれど体調の悪さは感じなかったために、陽性発覚後も気にせず普通の生活を続けたと話しています」

Getty Images

同居人が身勝手に行動せず、きちんと事実を伝えてくれていたら典子さんが感染することはなかったのではないか…。

感染源の特定はできないが、そういう可能性があるだけで怒りがこみ上げてきた。

「働けなかった療養期間は給料がでないため月収から6万円がマイナスになりました。裕福な人からしたら大きな額でははないかもしれないけど,月収13万円の不安定な派遣社員からすると生きるか死ぬかの問題です」

同居人を散々問い詰めたという典子さんは返ってきた言葉に唖然とした。

「症状が落ち着いたら風俗出勤すればいいじゃん」

復帰後に待っていた金欠地獄

それからしばらくの間、同居人は自宅に帰ってこなくなり、典子さんはただひたすら療養期間が終わるのを待った。

回復後、派遣先の職場では「腫れ物」のように扱われた。咳をしただけで嫌な顔を向けられたこともある。感染前は週5日入っていたシフトが週2〜3日に減らされた。理由はわからない。

収入は減り、ストレスが溜まっていった。

出会い系で知り合った男性からご飯を奢ってもらうなどして”節約”する生活。同居人の女性とは感染をめぐるケンカ以降、険悪な関係が続いている。

だが、出て行きたくでも出ていけない。引っ越しをするお金など手元に残っていなかった。

「どうせならもっと早く感染したかった」

典子さんは「今回の感染を経験し、私は行政にも見放されているんだと感じました」と嘆く。

新宿区は2020年の8月から今年3月末までの間、感染した区民に対し10万円の”見舞金”を支給した。典子さんが感染したのはその4ヶ月後。貧困に喘ぐ彼女のもとに区から給金はなかった。

「感染者が少ない時期だったら初日からホテル療養の選択肢もあり、ご飯の心配もなかった。本来、完全に自宅療養を選んでいたら救援物資が貰えるはずなのに、あの時期は行政が混乱していたのか確認の連絡すら来なかった。ただ私は同居人と険悪になり、6万円を失い、仕事先で”元陽性者”の烙印を押された。感染は辛いことしかありませんでした」

筆者に話しながら肩を落とす典子さん。「どうせかかるんだったら、もっと早く感染したかった」と苦笑いした。

写真はイメージ/Getty Images

自分を責める日々 風俗しか選択肢はなかった

現在、彼女は風俗店に出勤している。週に1回程度派遣の仕事をしているものの、稼ぎのメインは風俗勤務だ。

「派遣のシフトは随分と減らされてしまいました。他の仕事も探しましたが、働けなかった期間のマイナスを埋めるだけの貯蓄がなかったので、日払いの風俗をやるしかありませんでした」

生活費を少しでも安くしたいとコロナ禍で安易に友人と住むことに決めた自分。緊急時に備えるだけの貯蓄がまったくなかった自分。

コロナ感染を経験し、自分自身を責める日々が続いている。

「数字の上ではコロナ感染者の数は減り、緊急事態宣言は解除されました。でも、”コロナに感染すること”がどんな影響を及ぼすのか、感染したことで回復後も経済的な困難を抱えている人がいることも知ってほしい」

人の往来が激しくなることが予想される年末年始を前に典子さんは警鐘を鳴らす。

「オミクロン株の市中感染も報じられているなど、“コロナ禍”は終わっていません。私のように感染で苦しむ人を1人でも減らせるように油断しないでほしい」

Source

タイトルとURLをコピーしました