錦糸町駅北口すぐそばにあるデザインアートの施された喫煙所
愛煙家が頭を悩ませる喫煙所問題。ただでさえ数が減っているなか、コロナ禍を機に閉鎖される喫煙所も増えたことで、路上喫煙をしてしまう不届き者も増えている。
どこかにゆっくりと紫煙をくゆらすことのできる場所はないものか…。
そんななか、錦糸町駅北口に一風変わった屋外喫煙所を発見した。透明な壁一面にはポップな絵が広がっている。
壁を端から端まで見ていくと、葛飾北斎の富嶽三十六景でもっとも有名な「波の絵(波間の富士)」のデザインアートの横に『みんな北斎プロジェクト』と書いてある。「じつは、アートを通じた障がい者福祉の企画で制作したものなんです」と語るのは、この喫煙所設置に携わった、JT(日本たばこ産業株式会社)の担当者だ。
「墨田区観光協会が主催するアートを通じた障がい者福祉『みんな北斎プロジェクト』にJT東京支社が参画し、プロジェクトの一環として実施しました。本喫煙所のデザインである『富嶽三十六景』は、墨田区を故郷とする葛飾北斎オリジナルのものに加え、漫画家しりあがり寿氏の作品、障がいを持つ方が描いた絵をもとに『すみだクリエイターズクラブ』が創作したデザイン『みんな北斎 浮世絵巻』を取り入れています」(前出・担当者)
公共の喫煙所が葛飾北斎のギャラリーを兼ねることで、墨田区が北斎のふるさとであることを広く世の中に発信できる。さらに、障がいを持つ方々と社会とを結び、さまざまな個性や多様性を理解するきっかけになれば、という狙いがあるのだそうだ。実際の利用者に話を聞くと、とても好評のようだ。
「喫煙所ってどこも殺風景なんで、何もないところよりは退屈しなくていいですね。いつもよりたばこがおいしく感じます。葛飾北斎ですか? 詳しくないですが、この絵は知ってます。職場が近いので、この喫煙所はたまに使うんで絵がポップで素敵ですよ」(28歳・女性)
「ここ最近、喫煙者ってけっこう白い目で見られるじゃないですか。だけど、この喫煙所はたんなる通行人にとっても富嶽三十六景だったり、かわいい絵が描かれていたりするので、白い目が緩和されるような気がしますね(笑)」(43歳・男性)
さらには、こんな意見も。
「壁の絵を見て、かわいいし、遊び心もあるので、どんな方が書いてるんだろう? という興味は持ちました。いまは多様性という言葉がもてはやされているけど、喫煙者って肩身が狭いですよね。でも本当は喫煙者も非喫煙者も調和を取るのが大切だと思うんですよ。こういう明るい絵のある喫煙所を通じて、お互いに歩み寄るというか、いろんな立場の人が認め合えるようになるといいなと思います」(36歳・男性)
今回、話を聞いた利用者誰もが喫煙者の肩身の狭さを嘆きつつも、デザインアートを施した喫煙所の取り組みには高評価。今後、こうした喫煙所が増えていけば、吸う人も吸わない人も、心が和む瞬間が増えるかも?