「人間が2つの目で見ているのだから車もカメラ2つで機能するべきだ」とレーダー排除を推し進めたイーロン・マスクの考えとは?

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by Daniel Oberhaus

イーロン・マスク氏が率いるテスラは完全自動運転に向けて技術開発を進めていますが、その技術が事故を招いた事例が報告されているなど、いまだ実現は遠い道のりです。海外紙のニューヨーク・タイムズがテスラの自動運転技術開発者19人に匿名を条件にインタビューを行い、自動運転技術の実情を報告しています。

Inside Tesla: How Elon Musk Pushed His Vision for Autopilot – The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/12/06/technology/tesla-autopilot-elon-musk.html

マスク氏は何度も「完全自動運転は間近に迫っている」と自社技術を喧伝していますが、ドライバーが何もせずとも車が目的地まで移動するような技術はいまだ開発途中の段階です。また、マスク氏は「センサーに頼らずともカメラだけで自動運転を実現できる」と主張していますが、ニューヨーク・タイムズがインタビューした人々はこれに疑問を抱き、「顧客に誤解させている」と語っています。

特にマスク氏は開発側の反対を押し切り「人間が2つの目だけで運転できるのだから、車も2つのカメラだけで運転できるべきだ」と繰り返し、自動車へレーダーを搭載することを拒否したとのこと。これを専門家は「カメラは目でも何でもない」と指摘しています。

また、マスク氏は2014年に開発されたモデルSの試作車を見て、前方に空いていたレーダー用の穴が気に入らず、穴をゴム製シールでふさぐよう指示。技術者は雪や氷でシステム不良が起きる可能性を指摘しましたが、設計は冬季のテストを経ずに進められました。最終的にこの問題は、冬季にレーダーが機能しないという顧客からの指摘を受けた後に解決されました。


安価なカメラに対し、レーダー技術は高額なものを他社から買い取らなければならないなどの理由もあって「自動運転はカメラだけで実現可能だ」と主張するマスク氏に対し、「カメラだけでは不十分だ」と反対する技術者がいた一方、「レーダーは必ずしも正確ではなく、カメラとレーダーの情報を照合することは困難である」などという理由で、マスク氏に賛同する技術者もいたと伝えられています。

2016年にはカメラとレーダーを積んだテスラ・モデルSによる初の死亡事故が発生し、マスク氏がレーダーを自社開発する動きをみせたものの、計画は後に頓挫。レーダーへの取り組みは積極的な生産を目的としたものではなく、単に研究事業として続けられていくようになりました。結局、当初カメラ・レーダー・音波センサーの3つの技術で開発を進めていたチームは、マスク氏の意向を受けてカメラ技術にさらに重点を置くようになったとのこと。後にテスラは完全にレーダーを使わないソフトウェアアップデートを施し、2021年5月中旬以降の出荷分から物理的にレーダーを排除するに至っています。

マスク氏の言う「完全自動運転(Full Self Driving)」に対しては、内部から「自動という言葉を使うべきではない」という指摘も飛んでおり、同氏の宣伝手法に疑問を抱く内部関係者もいます。また、関係者は、テスラが2016年に自動運転技術のAutopilot 2.0を宣伝するにあたって作成した動画は、事前に非商用の3Dマッピングソフトで走行ルートが定められており、真に当時の自動運転技術を紹介したものではないと指摘。おまけに、事前にルートが定められていたにもかかわらず、車が道路脇の障害物にぶつかってしまったとこともあったと伝えています。問題の動画はテスラのホームページに依然として掲載されています
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テスラに技術を供給していたMobileyeのアムノン・シャシュアCEOは「自動運転システムでカメラのみを使うというアイデアは最終的には機能するかもしれませんが、短期的に見れば他のレーダー類はまだ必要とされるでしょう。テスラの最終目標は必ずしも真実というわけではなく、ビジネスを構築することそのものにあります。マスク氏の発言はあまり真剣に受け止められるべきではありません」と述べました。

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2021年12月10日 21時00分00秒 in 乗り物, Posted by log1p_kr

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