人間の遺体は埋葬からどれほど経過すれば骨になるのか?

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人間が死ぬと体組織にさまざまな変化が生じて腐敗が進み、やがて自然に返りますが、そのプロセスにおいてはさまざまな要因が働いています。「人間の遺体は埋葬からどれほど経過すれば骨になるのか?」という疑問について、科学系メディアのLive Scienceがまとめています。

How long does it take for a body to decompose? | Live Science
https://www.livescience.com/how-long-bodies-take-to-decompose

人間が死亡すると体内における血液循環が止まり、細胞への酸素供給がなくなることで細胞が死に始めます。その後、リソソームに含まれる分解酵素などが細胞から放出され、タンパク質や脂質が分解されることで組織や細胞が軟化する自己融解と呼ばれるプロセスが進行します。

さらに、嫌気性細菌真菌、その他の生物などの働きで腐敗が進行し、死後約18時間で皮膚の一部が緑色に変色し始めるとのこと。また、同時に腸内細菌が急速に増殖してガスが生成され、腹部の膨張や不快な臭いも生じます。こうした死後の変化は暑い場所でより早く進行するため、埋葬まで時間がある場合は遺体を冷蔵庫に保管したり、ドライアイスなどで冷やしたりするというわけです。

腐敗の段階では皮膚の表面に腐敗性の水泡が生じたり、血液が重力に従って沈下してあざのように見える死斑が確認できるようになったりします。また、死後約24~48時間で緑がかった黒い血管が皮膚を透かして見えるようになりますが、やがて腹部の膨張は収まって臓器の軟化が進み、昆虫や微生物などによって組織が分解され骨だけが残るとのこと。骨格のみになると分解速度が大幅に遅くなり、骨が崩壊するまでに数年~数十年ほどかかります。


しかし、イスラム教徒やキリスト教徒の多い国や地域では現代でも土葬が一般的であり、遺体の腐敗を遅らせるために防腐処理(エンバーミング)を施すことがあります。基本的なエンバーミングは、体から血液などの体液を排出すると共に防腐処理液を注入し、体を分解する細菌の活動を停止させるというものです。テキサス州立大学法医学・人類学センター所長であるダニエル・ウェスコット氏は、「遺体に防腐処理が施されれば腐敗の進行はまったく変わります」と述べています。

ウェスコット氏は、1963年に殺された公民権運動家であるメドガー・エヴァースの殺人事件の裁判が1991年に行われた際、証拠のためにエヴァースの遺体が掘り起こされたケースを指摘。エヴァースの遺体はエンバーミングが行われていたため非常によく保存されており、発掘担当者らはエヴァースの息子を遺体と対面させることができました。

エンバーミングが行われた遺体を棺桶(かんおけ)に入れて埋葬した場合、分解プロセスはかなり遅くなるため、骨格だけになるまでに5年~10年かそれ以上かかります。しかし、ウェスコット氏が立ち会った15年前に埋葬された遺体の発掘調査では、棺桶の一部が壊れていたため部分的に白骨化していたそうです。棺桶が埋められた土壌が酸性だった場合、棺桶は通常より早く侵食されるため、分解プロセスを促進する昆虫が侵入しやすくなるとのこと。


また、遺体そのものの状態も分解速度に影響を及ぼします。たとえば、肥満の遺体を屋外に置いた場合、分解の初期段階はやせた遺体よりも速く進行するものの、ウジが脂肪よりも筋肉組織を好むため、分解プロセスの後半はやせた遺体より遅くなるそうです。また、死ぬ前に闘病していた遺体では、化学療法や抗生物質の使用によって分解プロセスに関与する細菌の一部が死んでいるため、腐敗の進行速度が遅くなることがあります。

さらにウェスコット氏は、棺桶の裏地も遺体の腐敗速度に影響すると指摘しています。例えば、棺桶の材料が乾燥している場合は、遺体から水分が吸い出されてより早く乾燥するため、ミイラ化が進行しやすくなります。一方、材料が水分を保持している場合は遺体が自身からにじみ出た水分に浸され、より早く分解される可能性があるとのことでした。


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2023年01月28日 20時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1h_ik

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