ある日のこと
ある日いつものようにジョギングをしていると、頭が痛くなってきた。熱中症の症状だ。これはまずいと思い街路樹が作る木陰に避難して座り込んだ。
木の下に入ると一気に涼しくなる。これは単に日光が遮られるからだけではなく、樹木の持つ蒸散作用により葉から大量の水分が噴出されているためだ。少し休んだら頭痛もよくなったのでまた走り出そうと大きく深呼吸をした。木から発せられるエネルギーを胸いっぱいに吸い込もうと思ったのだ。しかしそのとき視界に何かが映った。
豆がでかい
気のせいかと思った。それともところどころに咲いている赤い花が目に入ったのか。とにかく何もないようなので先を急ごうと思い立ち上がると、鼻先にでかい豆がぶら下がっていた。
でかい。
それは見えぬ振りしてやり過ごすことも記事にせぬことも許さないぞ、という勢いの、豆だった。
もう一度言おう、でかい。こんなでかいの持って帰るのは邪魔だったけど、どうしても欲しくなったので一本だけ収穫してきた。外では比較対照がなかったのでその大きさを客観的にお伝えすることが難しいのだが、室内で見てもらいたい。
どうだろうこのでかさ。一昔前のアイドルなら水着にしていただろう。こんな豆が道に生えているのだぞ、沖縄では。
ノーマルの枝豆と比較するとそのアブノーマルぶりがよくわかるだろう。いやべつに比較しなくても明らかなのだが一応比べてみたかったのだ。
食べられるのだろうか
豆といえばビールだが、並べてみると豆のつまみがビールだ。完全に食われている。
ん、食われている?
そういえば食えるのだろうか、この豆。
ナイフを突き立てるも皮が固くて全然切れない。緑なのは見せかけだけで、固さは樹皮みたいだ。それを根性ではがすように切断すると中からとても控えめな豆が出てきた。なんだか一見うまそうにも見える。
塩茹でして食べてみることにした。
鳳凰木といいます
豆はぬるぬるしていた。そして茹でても変わらず青臭く少し苦味もあるようだ。味わい的にはオクラにも似ているが、うまいかまずいかで言うと、怖い。未知のものを食べてきた先人に敬意を表したい、僕には無理だ。
この木、鳳凰木(ホウオウボク)という種類のマダガスカル島原産の木で、沖縄では街路樹としてよく見かける。春から夏にかけて真っ赤な花をつけ、その後にでかい豆が実るので見かけたら驚いてもらいたい。加えてでかいからってうまいわけではないので注意だ。