日本最西端の有人島「与那国島」。有名ドラマのロケ地としても知られる与那国島への移動手段は、飛行機またはフェリーの2択しかない。すなわち「離島中の離島」になる。
先日、私(耕平)は初めて観光訪問。飛行機に比べて約半額で行けるフェリーを選択した……のだが、このフェリーは通称「ゲロ船」と呼ばれているらしく地獄のような思いをした。
・船内は設備充実
『フェリーよなくに』は石垣島から週2回、2便しか出航がない。乗り場は石垣島からさらに離島に渡るための玄関口「ユーグレナ石垣港離島ターミナル」より徒歩10分ほど離れたところにある。
出航時間は10時だったが、私が券売所に着いたのは9時40分。通常は30分前に乗船券の購入を済ます必要があったらしいが、この日はたまたま悪天候。出航が1時間後ろ倒しになったため、無事に乗船券を購入することができた。
助かった……そう胸を撫で下ろしてフェリーに乗り込んでみると……
船内はとにかく綺麗で、和室に洋室にベンチなど設備が充実している。そしておそらく揺れ対策なのだろう。ほとんどの場所に手すりが設けられていたり……
「ゲロ船」を象徴するエチケット袋があったり……
トイレには嘔吐専用の設備もあったりと「万全の嘔吐対策」が視界に入ってきたが、変な自信が私にはあった。
というのも、私は離島観光が趣味で幾度となく船に乗っているが、船酔いをしたことは1回もなくその他の乗り物にも一切酔った経験がなかったのだ。いくら「ゲロ船」と言えど、全然大丈夫だろうとタカをくくっていた。
与那国島までの移動時間は約4時間。ここで記事の一つでも書こうと思って椅子席を選んだ……が、この決断が地獄への入り口となるとは考えもしなかった。
・船内は地獄絵図
定刻より1時間遅れてフェリーが出航。
PCを取り出して、記事の執筆作業を始めること30分。最初は気にならなかった船の揺れが徐々に強くなっていく。そして出航して1時間経過する頃には、まともにキーボードが打てないほどの揺れになり、とても作業できる状態じゃなくなった。
歩くのが困難なほどの揺れで、座っていても遊園地の落下型のアトラクションで感じる “嫌な感じの重力” が断続的に続く感じだ。
さすがにこれほどの揺れは経験したことがなく、船酔いをしたことのない私でもだんだん気分が悪くなるのが あからさまにわかった。そして、額から次第に吹き出してくる汗……。
それから数分後、胃の上のあたりから「グッ」って音が鳴り、徐々に何かが喉の方に込み上げていく。
「ヤ、ヤバい……」
危険を察知した私は、強い揺れの中、手すりに捕まりながらトイレにダッシュする。ヨロヨロになりながら、間一髪で嘔吐専用台に到着すると……
オ、オエェェェェ
やってしまった……初めての船酔いだ。
そしてトイレを出ると、私以外の人が多数、青ざめた顔をしてトイレの前の席で待機している。これが「ゲロ船」と呼ばれる所以(ゆえん)か……まさに地獄絵図だ。それから少しは楽になったが、揺れは一向に収まらず時間が経つとまた気分が悪くなってきた。
・横になったら楽になった
「この状態が、あと3時間も続くのか……」そう考えると、もはや絶望しか残ってなく、与那国島に到着しても観光どころじゃない。というより、座っている姿勢がもはや限界に来ている。せめて横になろうと寝台がある洋室にフラフラになりながら向かった。
寝台は枕と毛布が完備されていて、テレビがついてないカプセルホテルのよう。ライトやコンセントもあって、とても快適そうだ。
瀕死の状態で横になること数分。
明らかに座っていた時よりも、体の中が楽になっていった。横になっていたから記憶は定かではないが、揺れは強いままだったと思う。それでも楽になったのは、おそらく揺れの感じ方。
座っている時は縦揺れに伴って体も上下に揺れるが、横になっていると体が前後に揺れる感じになるので内臓への負担が軽減するのではないか。実際に横になってから到着までの残り3時間はトイレに駆け込まずに済んだし、帰りの便は最初から横になっていたところ気分が悪くなることも嘔吐することもなかった。
── 以上になるが、もし与那国島に旅行する予定があり、フェリーでの渡航を考えている人はぜひ参考にしてもらいたい。きっと船酔いしてしまうほどの強い揺れを味わうことになると思うので。