生まれて初めて映画『AKIRA』を見た結果、痛烈に後悔した

ロケットニュース24

映画『AKIRA』を見たことはあるだろうか。30年以上前のアニメ映画ながら国内外に熱烈なファンが多く、よく「クールジャパン」の筆頭みたいに挙げられて、凄いのなんのと言われている作品だ。筆者はひねくれ者なため、そうして騒がれれば騒がれるほど、勝手に見る気を失っていた。

ところが昨年6月に『AKIRA』ファンから「今ならIMAXで見られるから見てみて!」なんて熱烈にオススメされ、まあ1回ぐらい見ておくか……と渋々映画館へと足を運んだ。そして、痛烈に後悔してしまった……。その深い後悔について、ほぼネタバレ無しでお話したい。

・もっと早く見ておけば

筆者の中で映画『AKIRA』のイメージは、何かやたら凄い凄い言われてるアニメ映画、という感じだった。ファッションビルとコラボしていたり雑貨店でやたらグッズを見かけるため、失礼ながら「絵が綺麗でウケてるだけのオシャレ系アニメ映画なのかな?」とも思っていた。

やたらと色んな方から「絶対見た方がいい」と言われるため、一応買い切りの動画は購入していた。しかしイマイチ見ようという気が起こらず、放置していたのだ。そんなとき、『AKIRA』ファンから「1回目は是非IMAXで見て! 今やってるから!」と熱烈なプレゼンを受けたのだった。

不良もので超能力バトルもの、そして主人公の名前は「アキラ」ではない、事前情報はそのぐらいだった。まあ1回ぐらいは見ておくか、と軽い気持ちで劇場へ足を運んだのだが──正直に言おう、めっちゃくちゃ面白かった。124分間ずっと『AKIRA』の舞台、ネオ東京に没入してしまった。

結論から言うと、全く「絵がウケてるだけのオシャレ系アニメ映画」じゃなかった。そして、やたら凄いと言われている理由も分かった。背景などが緻密で綺麗、メカデザインや音楽が格好いいだけでなく、登場人物たちが話す時の口の開き方にいたるまで、「動き」がとにかく細かくて滑らかなのだ。

登場人物たちはアニメ特有のコミカルな動きもするが、その動き方がとても滑らか。それはまるで、絵で描かれているにも関わらず、実写映画を見ている感覚に陥るほどだった。映画『AKIRA』を見るまで、アニメ作品でこのような体験をしたことがない。これは本当に「凄い」体験だと思った。

しかし映画『AKIRA』にそこまで没入できたのは、なにも背景の緻密さや動きの細かさだけのせいではない。この物語で描かれている登場人物たちの感情などが、とにかくリアルなのだ。特にW主人公である金田や鉄雄は、「こんな奴いる」「そういうことある」と思わせるリアルさがあった。

物語の大枠は日本(ネオ東京)の危機や超能力、世界や宇宙そのものの仕組みや力に関することなど、とても壮大なもの。にも関わらず、そんな物語が動く根底には、W主人公である金田や鉄雄が抱える友人との軋轢や劣等感などがある。それらは彼らと同じ15〜6歳頃の少年はもちろん、小中学生でも「わかる」と思えそうなほど妙にリアルなのだ。

SFかつテーマが壮大だと置いてけぼりになってしまうこともあるが、映画『AKIRA』はこの妙にリアルな感情や人間関係の描かれ方によって、壮大な物語を身近に感じることが出来た気がする。人によっては金田に自分を見たり、鉄雄に共感することもあるだろう。

ただし身近に感じたからといって、決して物語のスケールが小さく感じられるということではない。超能力や人の業、登場人物たちの行き着く先など、見終わった後しばらく映画『AKIRA』の世界について考えても考えても止まらないほど、考える余地のある作品だった。というか、終盤が怒涛の展開すぎて理解が追いついておらず、考えずにはいられなかった。

そして映画『AKIRA』の世界について考えれば考えるほど、ある後悔が大きくなってきた。もっと早く、具体的には2019年までに見ておけば良かった……! という後悔だ。一時期「予言」などといって話題になっていたように、『AKIRA』の舞台は翌年に東京オリンピックを控えた、2019年の東京(ネオ東京)が舞台なのだが……

124分間夢中になって見終えた後ずっと作中世界について考えられるような作品なのだから、もし2019年までに見ることが出来ていたら「2019年の東京」への没入感が凄まじかったことと思う。そしてその感覚は映画『AKIRA』への没入感をも、さらに増してくれたと思う。映画『AKIRA』を見た上で迎える2019年を過ごしたかった……!

・100回は見た

結局はじめて映画『AKIRA』を見てからというもの、その物語や世界について考えることがやめられず、事あるごとに映画『AKIRA』を見る生活を送るようになってしまった。一時期ほぼ毎日見たり、なんなら1日2回見たりもしていたため、誇張なく100回以上は見ただろう。

見る前の忌避感が嘘のようにドハマりしてしまった映画『AKIRA』。その世界観などについて考えるのが楽しくて、いまだに物語の細部が異なるという漫画『AKIRA』を、買ったまま読めていないほどだ。

もしかしたらかつての筆者と同じように、知ってはいるが映画『AKIRA』を見たことがない、という方は結構いるかもしれない。Netflixなどのサブスクでも配信されているため、もし良ければこの記事を読み終えた後にでも、是非見てほしい。きっと、見たことに後悔はしないだろう。

参考リンク:『AKIRA』4Kリマスター公式HP
執筆:伊達彩香
Photo:RocketNews24.

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