「ワークスタイルの未来」に投資する企業たち:「インクルーシブな企業文化を創造するテクノロジーを」

DIGIDAY

仕事の未来の具現化に努める姿勢は、コロナ禍発生以来、ビジネス思考に不可欠となっている。IT専門調査会社、IDC(=International Data Corp./インターナショナル・データ・コーポレーション)の予測によれば、FoW(=Future of Workstyle/働き方の未来)への投資は今年、6560億ドル(約72兆1600億円)近くに達する見込みであり、これは昨年比で17%増となる。

新たな仕事の形と労働者の進化を促進するべく、企業は現在、幅広いテクノロジーおよびサービスに投資している。IDCの予想では、今年度最大の投資分野はハードウェアだ。これにはエンタープライズハードウェアやサービスとしてのネットワークインフラ、イァース(IaaS=Infrastructure as a service)、そしてロボット工学やドローンなどが含まれる。

データインテリジェンス企業、ザ・モーニング・コンサルト(The Morning Consult)がニューヨーク・タイムズ(The New York Times)および人材ソリューション企業のトライネット(TriNet)と共同実施した調査によれば、コロナ禍によってあらゆる業界の小企業がデジタルトランスフォーメーションを進めており、仕事場に対する考え方を改め、87%がコロナ禍発生以来、ひとつ以上のデジタルテクノロジーを入手またはアップグレードしている。

同報告書によれば、リモートワークが急増するなか、もっとも多く購入またはアップグレードされたのが、人と人との繋がりをサポートするテクノロジーであり、一番がビデオコミュニケーションテクノロジー(58%)、次がインターナルコミュニケーションプラットフォーム(40%)、続いてカスタマーリレーションシップマネージメント(29%)だった。また、アンケートに答えた全企業の内、71%がオーディエンスとの新たなコミュニケーション手段を導入している。

「テクノロジーは企業がコロナ禍を乗り切るための鍵だった」と、トライネットのSVP兼チーフマーケティングおよびコミュニケーション部門トップ、マイケル・メンデルホール氏は語る。「ただし、もっとも大きな違いを生むのは、やはり人間だ」。

調査結果にみるDXの実情

バーチャル、ハイブリッドイベントプラットフォームのグリッサー(Glisser)による最近の調査では、ワークスタイルのハイブリッド化について、企業はコンセプトを現実にすることに苦慮していることが判明した。そして、その解決策はおそらくテクノロジーにあると、調査報告書はまとめている。「ワークスタイルのハイブリッドソリューションには、メッセージング、コラボレーション、作業場所の別に関わらない従業員の一体化、そしてエンゲージメントが求められている。エンゲージメントは、コンピューター画面だけを介する状況では、まず得られない」。

グローバルラーニングプラットフォーム、カフート(Kahoot)と、人材リサーチとアドバイザリー企業のワークプレイス・インテリジェンス(Workplace Intelligence)による別の調査では、リモートワーカーが適切な待遇を受けているとの回答が、クラス最高のコラボレーションテクノロジーを提供する企業では77%に上ったのに対し、「不満足なソリューション」を供する企業ではわずか32%だった。リモートワークがひとつの生活様式となるなか、回答者の84%が、コラボレーションおよびエンゲージメントテクノロジーは来年にかけてさらに増加すると予想した。

「ハイブリッドモデルで成功を望む企業には、こうした問題への対応が必須となる。さもないと、全社員の適切な待遇を最優先する企業に最高の人材を奪われかねない」。そう指摘するのは、ワークプレイス・インテリジェンスのマネージングパートナーで、同報告書の共同執筆者ダン・シャウベル氏だ。「テクノロジーは企業文化の問題への万能薬にはならないが、より全体的なアプローチとしては欠かせない要素になりうる」。

求められる「デジタルコンシェルジュ」

IDCの予想が明示しているとおり、ますます多くの企業がこの変化を念頭に置き、テクノロジー向上に注力している。たとえば、サンフランシスコが拠点のアイデンティティプラットフォーム、オクタ(Okta)は先ごろ、新たなワークプレイスエクスペリエンスアプリ、アトモスフィア(Atmosphere)を導入し、会社および従業員が取り組むFoW戦略の促進を図っている。この戦略は特に従業員同士の繋がりを支援する面において、ダイナミック・ワーク(Dynamic Work)と称されているという。

アトモスフィアは従業員にとってのいわば「デジタルコンシェルジュ」であり、どこで働いているかに関わらず、個々がチームとの結束を保ち、企業文化へのエンゲージメントを維持する手助けになっていると、オクタのダイナミック・ワークのトップ、サマンサ・フィッシャー氏は語る。同社の顧客にはフェデックス(FedEx)や日立(Hitachi)といった大企業も名を連ねる。同アプリは個々の従業員にカスタマイズされたエクスペリエンスを提供し、作業場所に関する決断を補助し、さらにイベントやワークサイトの情報、チームメイトのスケジュールについてリアルタイムで送信するという。

同社はまた、ダイナミック・ワークを機能させるべく、さまざまな他社ツールも利用している。コミュニケーションツールとしてSlack(スラック)やZoom(ズーム)を、モバイルバッジ(非接触型セキュリティパス/「バッジ[社員証]」のことで、携帯電話での建物への出入りを可能にする)としてオープン・パス(Open Path)を、バーチャルホワイトボードにはミロ(Miro)を、モバイルプリンティングにはキャノン(Canon)のユニフロー(uniFLOW)を、バーチャルオフィスツアーツールにはマターポート(Matterport)などを導入している。

リモートワークおよびハイブリッドモデルが今後ますます定着していくなか、より進化した技術ソリューションが登場するのは間違いなく、「この先、世の中からどんな問題を突きつけられようとも、動じない対応力」と柔軟性が鍵になると、シアトル拠点のデータストレージプラットフォーム、クムロ(Qumulo)のピープル部門VPであるジョナサン・マルトロス氏は指摘する。クムロは韓国の自動車大手ヒョンデ(Hyundai)やNFLチームのサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)などを顧客に持つ。

「柔軟で俊敏なワークモデルを成功させるには、インクルーシブな企業文化と環境を創造する必要がある。そうすれば、対面での物理的コラボレーションを行っていない人も同様に参加し、各々の職務においてもチームにおいても、求められる役割を果たすことができる」と、マルトロス氏は語る。

[原文:‘Embrace technology that creates an inclusive work culture’: More companies invest in comms tech to facilitate future of work

TONY CASE(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)

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