「清く正しく美しく」をモットーとする宝塚歌劇では異色な作品の舞台化が続いている。雪組「CITY HUNTER」と星組「柳生忍法帖」だ。
お色気をネタにしたギャグなど、ともに原作では宝塚の「美意識」にそぐわない要素もあるものの、意欲的な舞台化で既存ファン層以外にもアピールしている。
冴羽獠の「もっこり」を「ハッスル」に
東京宝塚劇場では2021年10月2日から、雪組公演「CITY HUNTER~盗まれたXYZ~」を上演中(11月14日まで)。1980年代に大ヒットした同名マンガの舞台化作品だ。トップスターの彩風咲奈さんが主人公・冴羽獠を演じ、他にもメインからサブまで原作コミックに登場するキャラクターが多数登場、「週刊少年ジャンプ」連載当時の空気感を伝えるハードボイルド・コメディに仕上がった。
とはいえ冴羽獠といえば大の女好き、美人には即座に「もっこり」してしまうという性格。美女に「もっこり」して相棒の槇村香(演:朝月希和さん)にお仕置きを食らうギャグがマンガでは定番だ。
これが宝塚の品格にそぐわない要素を舞台に上げない不文律「スミレコード」に抵触しないかと、演目発表時に宝塚ファン側から心配されていた。
原作を象徴するセリフの「もっこり」を「ハッスル」と言い換えながらも、お約束の槇村香による「100tハンマー」も舞台に登場、アニメ版初代エンディングとオープニングの楽曲である「Get Wild」「City Hunter〜愛よ消えないで〜」を劇中で流し、原作エピソードと宝塚版オリジナルのエピソードを織り交ぜた作品となった。
従来の宝塚ファンのみならずマンガ・アニメファン層の間でも話題となった本作、アニメ版冴羽獠役の声優・神谷明さんも観劇したことをツイッター上で報告、「各キャラが際立っていて演技も素晴らしかったです」と感想を伝えている。
記者が東京宝塚劇場で観劇した際には、幕間に男子トイレに行列ができていたのを目撃。これは10年以上の観劇歴の中で初めての光景で、男性客の興味を引いていることをうかがわせた。