これが新時代の名刺交換?
Facebook(Meta)の顔タグ撤廃の動きに逆行するように、ハーバード大で新入生が顔タグSNSをリリース! 物議を醸しています。
Facebookの顔タグは完全撤廃
Facebookの顔認識システム導入は2010年。集合写真をシェアすると自動で顔タグがつくので、全員の連絡先をいちいち調べて送信する手間が省けて便利な反面、デモ参加者の身バレ拘束やソックリさんの誤認逮捕などのリスクもあって訴訟が絶えず、賠償金がバカにならないうえ政府にも睨まれて、Facebookにとっては厄介なお荷物となっていました。
「テクノロジーの正しいバランス」を追求した結果、もうやめる! と決定。撤廃は今月を予定しており、システムにたまった10億人以上の顔写真データが完全削除となります。
Clearview AIにも豪政府から削除要請
Facebookが顔タグ撤廃を発表した翌日の11月3日には、「世界最大の顔ネットワーク」を標榜する米国のベンチャー「Clearview AI」も豪政府から全国民の顔データを削除するよう命じられていますし(同社は異議申し立て中)、プライバシー重視で監視社会への警戒が強まる現代において顔タグはどんどん肩身が狭くなってきた感があります。
そんなのどこ吹く風で顔タグSNS爆誕
ところが、そんな社会の流れに抗うように、ハーバード大学ではピカピカの1年生のYuen Ler Chow君が寮で顔タグSNSを超速で開発しちゃってるんですね。登校2日目に仲間とおしゃべりしていたら、まだ相手の名前も知らないことに気づいて、「顔スキャンしたら名前が出るの、よくね?」と言ったら、それいいね! ということになり、その勢いでつくったんだそうですよ。
@yuenler If you’re a Harvard student, you can go to thefacetag.com
できたWebアプリは「FaceTag」と命名したかったんですが、ドメインが取得できなかったので「The FaceTag」にしました。ハーバード入学2年目の2004年にマーク・ザッカーバーグが立ち上げたのも「The Facebook」だったし、もしかして関連あるの? と思っちゃいますけど、Facebookとは関係ありません。
使い方はかんたんで、スマホで互いの顔をピピッとスキャンするだけ。これで連絡先やインスタのユーザーネームが交換できちゃうんです。プロフィールは非公開にして、公開する相手をその都度選ぶこともできます。そういう使い方をすれば、プライバシーとセキュリティの懸念には対処できるのではないかという算段です。
目下利用はハーバード大の学生限定で、登録はまだ100人そこそこですが、Chow君がTikTokに公開した機能紹介ムービーは再生回数100万回を超えていて、コメントが鳴り止まない状況。やっぱり「倫理的に問題アリ」という声が目立ちます。
これについてChow君は「動画が言葉足らずで誤解を呼んでしまった」「動画は狙って短くした。丸1分も長々と説明するより、短くまとまってるほうがバイラルになると思って。狙いどおり再生100万回を達成できたのはいいけど、ここまで嫌われると作戦成功と手放しで喜んでいいかも微妙(笑)」とBusiness Insiderにコメントしていますよ(今の子は1分でも長っ!となるのね…)。
「手入力だと名前入力するのに打ち間違い、やり直しとか含めて最低1分はかかる。こんなの顔スキャンで十分じゃんと思ったのがきっかけ」だと、学内新聞のThe Crimsonには話しています。着想から完成までかかった時間は約1週間で、ルームメイトからプログラミングのアイディアも少しもらったけど99%は自力とのこと。目標は「初対面の自己紹介のスタンダードになること」です。
Facebookの顔タグ廃止でいきなり逆風だし、コンピュータ・サイエンス学部倫理推進団体設立者の教授にも「スピードと効率だけ追求すればいいってもんでもない」と苦言を呈されていますけど、このスピード感は…!