1990年代初頭、南米・ペルーで約1000年前の墓が発掘され、中から黄金のマスクをつけた頭蓋骨が発見されました。この黄金のマスクは赤く塗られており、長らく原料が不明のままだったのですが、最新の分析により、原料に人間の血液が含まれていることが判明しました。
Human Blood and Bird Egg Proteins Identified in Red Paint Covering a 1000-Year-Old Gold Mask from Peru | Journal of Proteome Research
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jproteome.1c00472
Red paint on 1,000-year-old gold mask from Peru contains human blood proteins — ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2021/10/211027121956.htm
インカ帝国以前の750年~1350年頃に、ペルー北部沿岸ではシカン文化が栄えたといわれています。1990年代の初頭、考古学者の島田泉氏ら調査チームが、社会的地位が高いとみられる男性の墓を発掘。墓の中央にある人骨は赤い塗料で塗られ、上下さかさまの状態で埋められていたとのこと。このとき、男性の頭蓋骨は体から切り離された状態で、赤く塗られた黄金のマスクを装着していました。また男性の骨の近くには、妊婦と助産婦のポーズをとった若い女性2人の骨と、子ども2人の骨が配置されていたそうです。
以下が発見された黄金のマスク。
当時、マスクに使われている塗料が辰砂であることまでは判明していましたが、塗料に含まれる有機体が何なのかまでは長らく不明のままでした。しかし、この有機体により塗料がマスクに定着し、1000年以上にわたって色が残り続けたことから、考古学者のLuciana de Costa Carvalho氏やJames McCullagh氏は有機体の正体を明かすべく、新たに分析を試みました。
研究者らが少量の塗料をフーリエ変換赤外分光光度計で分析したところ、まず塗料にはたんぱく質が含まれることが判明。その後、タンデム質量分析法を用いてプロテオーム解析したところ、研究者は人間の血液に含まれる血清・アルブミン・免疫グロブリンGといった6つのたんぱく質を同定しました。また、塗料には卵白由来のたんぱく質も含まれていたことも明らかになっています。たんぱく質の劣化が激しくどの鳥の卵かまでは特定できなかったものの、おそらくノバリケンだと研究者は推測しています。
辰砂をベースとした塗料は、社会的地位の高い人物がつけたり、儀式に関連した重要なアイテムに使われたりといった使用法が確認されています。このことから、当時は辰砂が生命力を表していたと考えられており、人間の血液が塗料として使われていたという事実はこの文脈に沿うものだと研究者は記しました。
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