スシロー 持ち帰り専門店の意図 – PRESIDENT Online

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2021年中に15店舗以上の出店をめざす

回転ずし大手「スシロー」がテイクアウト専門店の出店を加速させている。

「スシロー To Go」我孫子店テイクアウト専門「スシロー To Go」の1号店となった我孫子店 – 写真提供=あきんどスシロー

2020年9月、スシローは、期間限定でテイクアウト専門の実験店を兵庫県のJR芦屋駅の改札横に開設した。この店舗での試行的な販売の後に同社は、2021年2月に「スシロー To Go」の名称によるテイクアウト専門の1号店を、千葉県のJR我孫子駅にオープン。以降同社は、スシロー To Goの新規出店を首都圏、中部圏、近畿圏の各地で次々に行い、2021年内に15店舗以上の出店をめざしている。

以前よりスシローの既存店舗でも、テイクアウトは行われていた。どこが新しいのか。

スシロー To Goはテイクアウト専門店であり、店内での調理は行わず、近隣の回転すしスシローの店舗で調理したすしを運び込む。スシロー To Goの店舗は、駅改札付近にある小型店舗ほどの大きさで、駅や商店街などの小さなスペースに出店できる。調理は近隣のスシローの既存店舗で設備の空き時間を使って行うので、開店のための投資は低く抑えることができる。

スシロー To Goは、従来のスシローの回転ずし店ではカバーできていなかったエリアに小回りを利かせて出店していくことができる。利用者には日常の買い物や通勤などの生活動線上でふらりと立ち寄り、スシローのすしを気楽に手にしてもらうことが可能になる。これまでとは異なるすしへの需要にこたえられるとの手応えを、スシローは強めている。

コロナ禍以前から浮上していた根本的課題

スシローの既存店舗はコロナ禍以前から、1店舗当たりの売り上げが頭打ちになるという課題に直面していた。多くの店舗では食事時に来店客の行列ができる。テイクアウトについても受注が多く、繁忙期には早々と予約の枠が埋まる。店内飲食も、持ち帰りも、ピーク時になると供給の上限に近い水準での操業が続いており、そのために売り上げをこれ以上成長させることが難しくなりはじめていた。

「時間差販売」というアイデアはあったが

「ぜいたくな悩み」と聞こえるかもしれない。しかし、店舗がフル稼働となっていたのはピーク時の話である。問題は夜の23時から翌朝の11時までの「裏側」の時間帯だった。

各種の飲食店チェーンのなかには、24時間営業に踏み切っている業態もある。しかし、スシローが企業理念として掲げる「うまいすしを、腹一杯」というニーズが、24時間常にあるとはいいがたい。回転ずし店が深夜・早朝の時間帯に千客万来となることは考えにくく、あり得るとしても、それは巨大都市の中心部などの特殊なエリアでしかない。

そこで、既存店舗の設備の空き時間帯に持ち帰り用のすしを調理し、時間差で販売してみてはどうかというアイデアが浮上した。しかし、作ったすしをどこでどのように販売すればよいのか。考えてはみたが、新たな事業の開始にはいたっていなかった。

スーパー視察で得たヒント

2020年4月、コロナ禍による緊急事態宣言の発出を受け、飲食店の営業休止や営業時間短縮などが相次いだ。激変する市場環境のなか、あきんどスシローの堀江陽社長は大阪府下のスーパーを視察した。すると、街中の飲食店の利用に制限がかかるなか、入り口付近にある持ち帰りずしの専門店が活況を呈していた。スーパーでも持ち帰りのすしは販売されていたが、お客が集まっているのは専門店の方だった。

堀江氏の胸中にコロナ禍以前からの課題がよぎった。スシローの既存店舗で空き時間に調理したすしを、駅前や商店街などにスペースを確保して運び込めば、新しい生活様式の下での旺盛なすしへの需要をとらえるとともに、既存店舗の成長問題への解を手にすることができるのではないか。

程なくして、コロナ禍による各種の店舗の撤退などから、各所の商業スペースに空きが広がっていく。そのなかでJR芦屋駅の改札横に空いたスペースに、期間限定で出店しないかとのオファーがスシローに舞い込んだ。

たまたまスシローでは、芦屋エリアの2つの既存店舗を、契約年限の満了にともない閉店していた。改札横にテイクアウト専門店を出店すれば、同エリアのスシロー・ファンの渇望感にもこたえることにもなる。実験店の開設を、堀江氏は決断した。

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