具体策がない岸田内閣の経済政策 – 舛添要一

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  岸田首相の政策の3本柱は、(1)新型コロナ対応、(2)新しい資本主義の実現、(3)国民を守り抜く外交安全保障政策である。

  コロナ対策については、基本的には安倍・菅政権の政策の継続である。しかし、これまでの対応がなぜ失敗してきたのかについての検証と反省が欠けている。特に問題なのは、コロナ担当3大臣制を維持していることである。また、感染症の専門家からなる分科会が間違った提言を行ってきたが、そのことへの対応もない。

  さらに、コロナによって影響を受ける事業者や個人に対する経済的支援についても、迅速性をどう実現させるかのか。

  ワクチンについては3回目の接種を急ぐべきだ。

  治療については、経口治療薬の開発が進んでいることは明るい材料であり、アメリカの製薬大手メルクは、「モルヌピラビル」の治験を進めており、年内にも承認申請をする予定である。岸田首相は「年内実用化を目指します」と明言したが、その約束を堅持してほしい。

  経済政策では、アベノミクスからの転換を図るべく、「成長と分配の好循環」を掲げ、「新しい資本主義」を実現すると述べた。これもそのための具体策が提示されていない点が問題である。

  アベノミクスが金融緩和によって成長を図ろうとする政策であり、一定の成果は収めたが、既得権益や省庁の縄張り争いなどで十分な効果が生まれていない。

  そこで、これらにメスを入れる抜本的な改革が必要なのであるが、岸田首相は「改革」という言葉を一度も発しなかった。

  財務省の矢野事務次官が月刊『文藝春秋』に、「このままでは国家財政は破綻する」として「バラマキ政策」を批判する論文を寄稿した。財政出動のコスト・パフォーマンスの悪さを批判するならよいが、長期債務残高の増加のみを問題にするのは意味がない。

「分配なくして次の成長なし」というが、分配だけで成長が可能なわけではない。やはり企業の生産性を上げる方法を明示しなければなるまい。それが「改革」である。

  外交政策については、基本的に安倍・菅政権の連続である。日米安保を基軸とし、民主主義陣営の価値観を守るのは当然である。ただ、その同盟の前に立ち塞がっているのが中国である。習近平は台湾を統一することを明言し、台湾海峡では緊張が高まっている。経済的には中国との関係は緊密であり、強硬策一本槍では成功しないであろう。

  また、安倍・菅政権が積み残した課題も山積している。文在寅政権の韓国との関係、北朝鮮の拉致問題、ロシアとの北方領土返還交渉などだ。

  アフガニスタンからの米軍撤退の後、中東は混迷の度を深めている。

  外務大臣経験者として大きな成果を上げることが期待されているが、いずれも困難な課題である。

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