バーゲンの名前観察 東京編(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

東京のデパートや駅ビル、地下街などのバーゲンの名前をあつめて分類しました

デパートなどの商業施設では毎年7月1日前後から夏のバーゲンが始まる。前日まで定価で売られていたものが、セールを皮切りにいきなり30%オフとか50%オフとか、ヘタしたら70%オフで売られだすのだからえらいことだ。

バーゲンシーズンが近づくと、特に電車の中吊りなどでバーゲンの期日がババーンとした文字で書かれた広告が目立つようになる。

毎年ながめては、値引率などを気にしつつ、各施設でバーゲンのことをそれぞれいろんなふうに呼んでいるのだなあと思っていた。

2011年7月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正のうえ再掲載しました。

東京のバーゲンの名前を味わう

いろんなふうに呼ばれているバーゲンの名前、と言ってもピンと来ないだろうか。

たとえば丸井だったら「マルイ スパークリングセール」というのがバーゲンの名前だ。パルコだったら「パルコ グランバザール」。

それぞれ違うのだ。名前が。

今日はこのバーゲンの呼ばれようをしみじみ味わってみようと、こういうわけであります。

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買い物するわけではなく、バーゲンの名前を求めて街へ

結論! けっこう同じ名前

結論から言うと、なんと、同じ名前を使っている施設が大変に多かった。えー、そうなの?!

もっと各施設が別の施設と同じ名前にならないように、でも突飛な名前にならないように、絶妙に回避しあって名づけていると思っていたのだが、同じでよかったのか。

ちなみに今回は有楽町、銀座、新宿、渋谷など35ヵ所の施設を回った上で、さらに聞き込みなどもあわせ全部で62か所の施設のバーゲンの名前を集めた(チェーン店で各店で名前が同じものは1とカウント)。

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有楽町のイトシアや
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銀座のマロニエゲートは調査のためにはじめて行ったよ!(でもバーゲンの名前だけ確認して中はみてない)

超人気「クリアランス」

一番多かった名前は「クリアランス」。

・松屋銀座「GINZAのクリアランス」
・伊勢丹「夏のクリアランスセール」
・小田急「小田急クリアランス」

などなど、百貨店はほとんどが「クリアランス」の文言を使っていた。

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銀座でクリアランス
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はためくクリアランス
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チラシもクリアランス
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もうどいつもこいつもクリアランス

その数、62か所中15か所。2割以上だ。

ちなみに「clearance」を辞書で調べたら、ドンピシャそのまま「在庫一掃」と出た。一方、“開墾”という意味もあるらしい。

有名百貨店の職員のみなさんが7月1日に山林に出向きいっせいに開墾しているさまを想像した。日差しが強い。暑そうだ。

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セールしてるから「セール」です

「クリアランス」との双璧、62か所中14か所あったのが「セール」を使った名前。

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「モザイクセール」って変わった名前だな、と思ったが、「モザイク」は施設の名前だった。銀座の数寄屋橋の阪急ですな
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新宿メトロピアも「SALE」。メトロピアってどこだろう? と思ったら、東口から西口に抜ける地下通路の商店街のことだった。むかしここ全部小さな箱に入った旅行代理店だったよな

・三越アルコット「サマーセール」
・六本木ヒルズ「サマーセール2011」
・丸ビル「丸の内セール」

などなど、セールなのだから、名前は「セール」。以上。

そうなのだ、そもそも、景気良く物を安く売っていることさえ伝えられれば、ほかに何も言う必要はないのだ。

同様に「バーゲン」も

「セール」をうたう施設が多いのだから、同じように「バーゲン」を掲げるところも多い。

・プランタン銀座「ザ・バーゲン」
・ヴィーナスフォート「ヴィーナスフォート バーゲン」
・青山ベルコモンズ「サマーバーゲン」

などなど、62か所中10か所あった。

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ビルの裏路地にまで張ってあった。スタート当日の朝並ぶからかな
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新宿ミロードは6月下旬から「サマーバーゲン」をスタートさせ、7/6の取材時には「ラストチャンスセール」になっていた。このように、出世魚式に名前を変える施設もある

さもなければ「バザール」

クリアランス、セール、バーゲンときて、続いて何が来るか。「バザール」だ。

・銀座コア「バザール」
・日比谷シャンテ「シャンテバザール」
・永山グリナード「夏のバザール」

などなど62か所中3か所あった。

ペルシア語に由来し、辞書で調べても「(特にインド・中東の)市場」と記されているバザール。神秘的であるとともに、どこか豪快な感じも受ける。笛で言ったら角笛だ。

個人的にはNECに勤める親戚によく「バザールでゴザール」のキャラグッズをもらったなあ、ということを思い出した。

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一瞬店の名前みたいになってる
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ショーウィンドウもバザール

「市」もあった

そろそろ出尽くしたろうというところでしゃなりと出てきたのが「市」だ。

・西武「夏市」(西武と統合したそごうも同様)
・メルサ銀座「メルサ市」

たいして安くなくても「朝市」と言われると安く感じるように、「市」にはなにか物を売る力があるのだ。62か所中2か所あった。

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和風というより、フォントの感じは中世ヨーロッパ的な
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高校生くらいのころ、西武のこのクマのキャラクターに夢中になった覚えがある

ここからが本番です

以上が、全体的に同じような感じのバーゲンの名前でありました。ここまでで62か所中43か所をご紹介した。

7割弱がどこかよそと同じような名前のバーゲンの名前を使っているということになる。

そして、残りの19の施設が私が探していた、独自のバーゲンの名前を名乗っていたのだった。では、見て行きましょう!

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うどんの画像でも見て1回休憩しますかね

「バーゲン」活用形

さきほど、「サマーバーゲン」だったり「ザ・バーゲン」だったりと、「バーゲン」のつく名前はすでにご紹介したが、そこをほんのちょっぴりひねって独自の名前がこのジャンル。

・サブナード「ビッグバーゲン」
・ルミネ「チェックザバーゲン」
・東武ホープセンター「ホープフルバーゲン」
・アクアシティ「お台場ベイサイドバーゲン」

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ただのバーゲンではなく、「ビッグ」をつけてきた
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ルミネは「チェック ザ バーゲン」なんだか分からないけど語感はひどく良い

・109「7デイズバーゲン」
・イオンモールむさし村山ミュー「スマイルバーゲン」
・サンストリート「バーゲンスタジアム」

どうだろうか。さきほどまでと比べると、ぐっとバーゲンの名前が多様になった。「読み応え」のようなものが出てきたと思うのだ。

特に気になるのは亀戸にあるサンストリートの「バーゲンスタジアム」だろうか。勢い的にはなにかうなずかされるものがあるが、冷静になると、スタジアムって? と味わい深い。

調べてみると、バーゲン期間中に舞の海秀平さんのトークショーもあったらしいです(すでに終了)。スタジアム!(エクセレント! みたいな意味で)

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渋谷の109は「7デイズ バーゲン」。そのままと言えばそのままか
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「セール」にひとひねり

「バーゲン」に続き「セール」も展開型の名前があった。

・丸井「スパークリングセール」
・オペーク「GO!GO!!SALE!!!」
・アルタ「GO!GO!SALE」
・自由が丘デパート「お客さま感謝デー サマーセール」

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丸井の「スパークリングセール」はセールの独自の名前としての代名詞だと個人的に思う
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偶然にもアルタとオペークはびっくりマークの数が違うだけでどっちも「行け行け」セール

そもそも、セールの名前って施設ごとに独自だよなあと思うきっかけになったのが丸井のスパークリングセールだったのだ。

なんかもう、ばーっとはじけて活気があって、確かにセールはスパークリングなイメージだよなと、今日またしみじみ思った。

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お客様に感謝する気持ちがあふれて名前が長くなっちゃった例も「お客さま感謝デー サマーセール」
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自由が丘のほこるノスタルジースポット自由が丘デパートで発見しました

「バザール」にもひねりタイプが

「バーゲン」、「セール」に続いて「バザール」をひねるタイプもある。

・Wing「レッドタグバザール」
・パルコ「グランバザール」
・ラフォーレ「グランバザール」
・自由が丘メルサ「ボン バザール」
・せいせき専門店街「オフ バザール」

「グランバザール」はパルコとラフォーレが採用。

ラフォーレのバーゲンというと、他の施設よりも遅め(今年は7/20から)に始まる。初日は朝9時開店で、お客はもっと早い時間から並ぶことでちょっと有名だ。

有名なだけにもっと突飛な名前がついているような気がしていたが、パルコと同じだったとは。

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「レッド タグ」って聴いたとき、一瞬で頭が「赤札」と変換した
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メルサは銀座では「メルサ市」だったのが、自由が丘では「ボン バザール」とフランスチックに

一方でメルサが銀座の「メルサ市」に続いて自由が丘でも気をはいていた。フランス語の「ボン」だと「良い」という意味だろうか。ボンジュールとか、ボンボヤージュの延長としての、ボンバザール。

意味はさておき、「ボン!」は語感として景気がいい。やっぱりバーゲンは景気が良くないといけないからな、と一人うなずいております。

バーゲンというより、祭り

残りの名前は3つ。ここから先は今までに紹介したどれにも属さない名前だ。

バーゲンを祭りと言いかえたパターンがこちら。

・アトレ「サマーカーニバル」
・銀座インズ「サマーフェスタ」

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JR東日本グループの会社がやってる駅ビル、アトレは「カーニバル」
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銀座インズはバーゲンやりながら福引なんかもやってた。祭りだ。

個人的にアトレは通りがかることも多く、以前から「サマーカーニバル」はちょっと浮かれてるなあと思っていたのだ。数あるバーゲンの名前の中でもかなり浮かれ上位であることがわかって誇らしい。

今回のMVPは!

東京のバーゲンの名前は、独自な名前はありつつも全体ではぼんやりと同じようだということが分かった今回だったが、そんな中で静かに際立っていたこちらを、MVPとして終わりにしたい。

銀座マロニエゲートだ。

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最初見たときは「SOLDES」かな? と思った。まあ、普通かな
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良く見たら「ふたりのSOLDES」。ふたりの……!

歌謡系という新ジャンル

「ふたりのSOLDES」である。

読めば読むほど味わい深い。「ふたりの~」といえばやはり筆頭は「ふたりの愛ランド」であろう。燃えて夏泥棒。どうなっても歌謡曲のイメージだ。「ふたりのSOLDES」はどんな曲かと想像がふくらむ。

銀座にあるこのマロニエゲートは2007年オープン。銀座の新勢力だ。バーゲンの名前界にも突如吹いた風といってもいいのかもしれない。

気がすみつつも、気になる東京以外

ずっと気になっていたことを一気に調べて気分はすっきり、気が済んだ。思った以上に独自性は見られなかったが、それが分かっただけでも爽快だ。

けれど調べている最中、埼玉は大宮のアルシェというファッションビルのバーゲンの名前が「CRAZY SALE」であるという情報をつかんでしまった。オー! クレイジー!

まだまだバーゲンの名前に読みしろはあるのかもしれない。来年の1月のバーゲンの頃は、東京以外でも気にしていこう。

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調査中、バーゲン疲れ勢がデパ地下のアイス屋にむらがっていたので私も食べました

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