Facebookがより高速で安定したインターネット接続環境を世界中に広めていくための新技術を発表しました。Facebookが発表したのは、光ファイバー設備用のロボット「Bombyx」や、無線で有線レベルの通信速度を実現する「Terragraph」などです。
Connectivity Technologies for the Next Billion People – About Facebook
https://about.fb.com/news/2021/10/connectivity-technologies-for-the-next-billion-people/
Facebook says its fiber-spinning robot will dramatically reduce costs | FierceTelecom
https://www.fiercetelecom.com/tech/facebook-says-its-fiber-spinning-robot-will-dramatically-reduce-costs
Facebook Connectivity unveils robot that can speed fiber deployment | VentureBeat
https://venturebeat.com/2021/10/07/facebook-connectivity-unveils-robot-that-can-speed-fiber-deployment/
インターネットは我々の生活や仕事を便利にするためのインフラストラクチャーです。新型コロナウイルスのパンデミックによりますますその利便性を示しているインターネットですが、1人当たりのデータ利用量は毎年20~30%も増加しており、国や地域により通信速度や利用率に大きな開きがあることは明らか。こういった課題を解決し、より多くの人々に高速で信頼性の高いインターネット接続環境を提供するには「新しい技術革新が必要」とFacebookは主張しています。
Facebookの中でインターネット接続に関する技術開発を進めるFacebook Connectivityは、2013年以来世界中の3億人以上により高速なインターネット接続環境を提供してきました。そんなFacebook Connectivityが、より多くの人々にさらに優れたインターネット接続環境を提供するための、新しいテクノロジーを発表しています。
Facebook Connectivityが発表した「より多くの人々に高速で信頼性の高いインターネット接続環境を提供するための新しい技術」は以下の3つ。
◆Facebookによる海底ケーブル敷設プロジェクト
大陸間をつなぐ海底ケーブルはグローバルインターネットの基礎として非常に重要なインフラストラクチャーです。Facebook初の大西洋横断海底ケーブルは、ヨーロッパとアメリカをつなぎ、2000年代に敷設された海底ケーブルの200倍のデータ通信容量を実現しました。Facebookは海底ケーブルに関するプロジェクトをさらに進めており、2020年にはアフリカとヨーロッパ・アジアを結ぶ世界最長の海底ケーブル「2Africa」の敷設計画を発表しています。
Facebookがアフリカ全体にインターネットを提供する世界最大規模の海底ケーブル敷設計画「2Africa」を発表 – GIGAZINE
新たに、Facebookは2Africaに「2Africa Pearls」と呼ばれる中東方面の延長部を追加することも発表。これにより、2Africaは合計4万5000km以上の長さを持つ海底ケーブルとなります。
◆電力線に沿って光ファイバーを敷設できるロボット「Bombyx」
さらに、Facebook Connectivityは光ファイバーインターネットをより広い地域に配備していくための新しい技術として、電力線に沿ってファイバーケーブルを敷設することが可能なロボット「Bombyx」を発表しました。Facebook ConnectivityはBombyxについて、「Bombyxはより軽く、より速く、より機敏に世界中の光ファイバー設備を敷設することができるため、世界中の光ファイバー設備に経済的に大きな貢献を果たす可能性があります」と記しています。
通常、送電線を覆う形で光ファイバーを敷設する際は、送電線を支える鉄塔にかかる負荷を調査し、場合によっては鉄塔を補強したり取り替えたりする必要もあります。それに対して、Facebookは送電線に光ファイバーケーブルを巻き付けるという「ヘリカルラップ方式」で、新しい光ファイバーケーブルを敷設するロボットとしてBombyxを開発しました。この方法で光ファイバーケーブルを敷設する場合、敷設のために新しい設備が不要であるため初期費用を格段に抑えることが可能です。
以下のムービーはBombyxが実際に動く様子を収めたもの。
Bombyxは追加の設備なしに既存の送電線に光ファイバーケーブルを巻き付けるヘリカルラップ方式を採用しています。追加の設備なしで光ファイバーケーブルを巻き付けるには既存の光ファイバーケーブル(左)よりも軽くて細いケーブルを開発する必要があったそうです。Bombyxで使用されている軽量化された光ファイバーケーブル(右)は、従来のものが1kmの長さで重量が250ポンド(約113kg)であるのに対して、1kmでわずか28ポンド(約12.7kg)と非常に軽くなっています。
Bombyxは光ファイバーの構築コストを削減するための広く適用可能なソリューションを目指して開発されたもの。Facebook Connectivityは光ファイバー設備のための「オープンアクセス可能で公正かつ公平なテクノロジー」としてBombyxを開発しており、これを導入することで「高速インターネットをより安価に提供できるようになることを期待している」としています。
なお、FacebookはBombyxの運用試験を2022年に行う予定で、すでに最初のパートナーとしてネットワークインフラのNetEquity Networksと提携しています。FacebookはBombyxの利用について、NetEquity Networksに非独占的なロイヤリティフリーライセンスを提供するとしており、「NetEquity Networksとは金銭的な利害関係を持っておらず、NetEquity Networksにより展開された光ファイバーネットワークを当社が所有・運用することもありません」と記しています。
◆無線で有線レベルの高速インターネットを実現する「Terragraph」
この他、Facebookは無線で光ファイバー通信レベルの通信速度を実現する「Terragraph」という技術を開発していることも明らかにしています。Terragraphはすでにアメリカのアラスカ州アンカレッジで展開されており、6500以上の家庭で試験運用されています。さらに、オーストラリアのパースでもTerragraphの展開が予定されているとのこと。
Terragraphは光ファイバー設備に法外なコストがかかる地域や、申請に時間がかかる市場向けに提供される、いわゆる「ラストワンマイル」を埋めるためのテクノロジー。Terragraphはミリ波を用いた無線機を備えており、わずかなコストで光ファイバーレベルの高速通信を提供することが可能。
データ転送速度はピーク時の速度が上り下り共に5.6Gbps、遅延は1ミリ秒未満。接続可能な最大距離は2kmを超えます。
Terragraphは道路上にある既存の構造物に取り付けることが可能であるため、光ファイバーなどの有線設備と比べて工事・開通までの時間を劇的に短縮することができます。さらに、マルチノードの復元力のあるメッシュネットワークを構成することができるため、通信キャリアが提供するレベルのネットワーク可用性を保証し、需要に応じて簡単に設備を拡張することも可能とのことです。
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