思ったより時間が経っている…とか、逆にあまり時間が経っていない…という経験は誰しもあるはず。あれを自由に、かつ手軽にコントロールできないものか。
1984年生まれ岡山のど田舎在住。技術的な事を探求するのが趣味。お皿を作って売っていたりもする。思い付いた事はやってみないと気がすまない性格。(動画インタビュー)
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時間の感じ方は不思議だ
時間の進み方は一定なはずなのに、すごく早く感じることもあれば、遅々として進まないこともある。
そんな時間の感じ方をコントロールできないだろうか?
スイッチを切りかえるように手軽に。そんな都合の良い話が欲しい。
色で時間が変わるらしい
そんな掴みどころのない話からスタートしたが、ヒントになりそうな話がある。
すごく昔にテレビか何かでみた話で、色によって時間の感じ方が変わるということだった。
赤やオレンジといった暖色系の空間では時間が長く感じ(=1時間を2時間に感じる等)、逆に青っぽい寒色系の空間では時間が短く感じる(=2時間を1時間に感じる等)らしい。
そうなの?気のせいじゃないのか。と思ったが、そういう実験結果は多数あるようだ。
ためしに「居酒屋」と「待合室」で画像検索してみると、居酒屋は暖色系が多く、待合室は寒色系が多い。
飲食店の店内が暖色系だと時間が長く感じる(=1時間を2時間に感じる等)ため、お客さんはより長く滞在したと思い込み、入れ替わりが早くなる。
飲食店としては入れ替わりが早い方が儲かるし、暖色系の色には食欲増進効果もあるらしく一石二鳥というわけだ。
いっぽう、待合室では寒色系にすることにより時間が短く感じる(=2時間を1時間に感じる等)ため、お客さんは待ち時間のストレスが少なくなるそうだ。
視界を暖色系にして感覚的な時間を長く
それならば視界を全てもっとすごく赤くすれば感覚的な時間は長く(=1時間を2時間に感じる等)なるのではないか。手軽に時間をあやつれるかもしれない。
そこで用意したのがこの暗記用の下敷きである。この下敷きを通して見ればすべてが赤というわけだ。
そのままだと使い勝手が悪いので、コロナ対策として家にあったフェイスシールドに赤い下敷きをつけ視界を覆えるようにした。
こうして全てが赤く見える装置が完成した。
これで他の人より時間を有効に活用したい。
なおこの状態でゴミを出しに行くと近所の人に姿を見られてしまい、少し恥ずかしかった。
どうやって検証するか
ここから体感時間の変化を検証していくが、問題なのはその方法だ。
時計を見て時間が分かってしまうと体感時間とのズレがリセットされてしまうので、時計は伏せて隠す。
そしてスマホやパソコンなどの時計も隠す。
こうして改めて見ると時計はありとあらゆる場所にあるので、見ずに過ごすのはとても難しい。
この状態で「○時○分くらいかな」と予想しながら時計を見て、実際の時間とのズレを確認、通常の視界と赤い視界で交互に何度か試す。
ちなみに時間の感覚はすごく主観的な事だ。同じ食べ物でも「うまい」と感じる人もいれば「まずい」と感じる人がいるのと同じように、食べ物レビューみたいなものだと思って読んでください。なお、できるかぎり同じ体験をしてもらえるように後で動画も用意している。
果たして、視界が赤いと時間は長くなるのか
ということで実験を開始する。
赤いフェイスシールドをつけていることと時計を見ないこと以外は普段通りに過ごす。
この写真でさえ目がチカチカするが、実際にはもっと光の刺激を強く感じる。
なお、この状態では赤い文字は読めなくなり、黒と青、黒と緑の違いも分からない。
しばらくすると赤い光の刺激に目が疲れてきて、クラクラするような感覚と、胃のあたりがむかむかしてくる。車酔いみたいな状態だ。この赤い視界には耐えられる限界がある。
不調はフェイスシールドを取りはずすとスッキリ治るが、なんだかこの実験は目や体に悪い気がする。
加えて、はずしても視界はしばらく赤の補色の緑色がかって見える。
しかしこの赤い視界ではやはり時間の進み方は遅いと思う。朝9時からスタートして10時20分ごろだと思って時間を見るとまだ10時前だったこともある。
赤フィルター
平均すると実際の1時間を1時間10分くらいに感じる
純粋に赤色によるものか、赤い文字が読めないことなど細かい不便さ、赤い視界による新鮮な気持ちや、体調不良が原因という可能性も排除できない。
ただの気のせいではないかと言われるとそんな気もする。
視界を寒色系にすれば時間が早く進むのか?
だったら、次に視界を寒色系の青色にしてみるとどうなるだろう。
青い下敷きがどこを探しても見つからなかったので、今度は青いビニールを使う事にした。
かなり雑な工作になってしまったが、工作記事ではないので完成度は関係ないのだ。
青色の視界にするなら青色のサングラスでもいいかとは思ったが、サングラスよりも視界全体を覆った方がより効果がある気がして同じくフェイスシールドにした。
ブルーライトカットならぬブルーライト以外カットだ。
目に悪そうなイメージとは裏腹に、目の痛さは赤色よりずいぶんマシだ。
赤色の時には赤い文字が読めなかったり、黒と緑や黒と青の区別がつかず苦労したが、青い視界では青い文字も読める。赤ほどは支障がない。
そういえば暗記用の下敷きも赤はあるけど青はない。
そして青色でも何度か繰り返して実験してみたが、時間の進み方は赤色と同じく遅いと思う。僕の住む地域ではスピーカーから18時にチャイムが鳴り響くのだが、まだ鳴らないのか、まだ鳴らないのかと繰り返し思うほどだった。
視界を青くしても時間を長く感じる(1時間を2時間に感じる等)。
青フィルター
平均すると実際の1時間を1時間5分くらいに感じる
しかし赤よりは効果が少ない気がした。だから赤より時間の感じ方が短いと言えなくもない。
同じ1分間で内容も同じ動画(神戸のポートライナーだ)に、一方は赤く、もう一方は青いフィルターをかけてみた。よかったら見て時間の感じ方を確かめてほしい。
赤いフィルターをかけた動画
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青いフィルターをかけた動画
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テンポの早い音楽を聴くと時間の感じ方は変わるかもしれない
色による効果はイマイチはっきりした物ではなかったが、他にももう1つのヒントがある。
飲食店でテンポの早い音楽をかけると、お客さんの入れ替わりが早くなるらしい。
つまりお客さんはテンポの早い音楽を聴くと感覚的な時間が長く(=1時間を2時間に感じる等)なり、逆に、テンポが遅い曲を聴けば感覚的な時間は短く(=2時間を1時間に感じる等)なるのではないか。
直感的には早いテンポの音楽の方が時間が早く過ぎそうだが、逆だとしたら面白い。
テンポの違う音楽を聴き分けたら時間があやつれるかもしれない。
というわけで、音楽を聞き続けるためにこの骨伝導イヤホンを使用することにした。
骨伝導イヤホンは骨に振動を伝えて音楽を聞くことができるイヤホンで、耳を塞がないので周りの音も聴くことができる。普段の生活への支障も少ない。
これで早いテンポの曲と遅いテンポの曲をリピート再生しながら、掃除をしたりテレビを見たり、ここでも普段通りに生活をする。色に比べると随分自然な行動だ。
同じ曲をずっと流していると段々飽きてくるが、その峠を過ぎると雑音として脳みそが遮断するのか、あまり気にならなくなる。
あれ?そういえば音楽は?と気付くと流れている感じだ。
テンポの違う音楽によって時間の感じ方は変わるのか
そして肝心な時間の感じ方だが、
例えば音楽を聞きながら掃除をすると、自然と動きが音楽に合ってしまって動きが早くなったり遅くなたりする。その結果、普段より掃除が早く終わったり時間がかかることはあると思う。
テレビは音楽でテレビの声が聞き取りにくくなるので楽しめずない。いつもより時間を長く感じる。
しかし純粋なテンポだけで時間の感じ方が変わるかというと効果は限定的かもしれない。実際、実験の日は昼ごはんを僕が作ると宣言していたので、そろそろ作ろうと時間を見ると、想像より少し遅かったものの、昼ごはんには間に合う程度だった。(繰り返し実験してもあまり差がでなかった。)
テンポの速い曲、遅い曲を聴いても時間の感じ方はあまり変わらない
テンポ早い音楽
平均すると実際の1時間を1時間くらいに感じる
テンポ遅い音楽
平均すると実際の1時間を55分くらいに感じる
色と音の両方合わせたら時間の感じ方は変わるか
では色と音、両方をあわせたら時間の感じ方はどうなるだろう。
さきほどの動画に加えてテンポが違う音楽を入れて、色と音楽の効果を体験していただけるようにしてみた。
個人の感想で終わらないように共有します。
赤いフィルターかつ早いテンポの音楽
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青いフィルターかつ遅いテンポの音楽
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時間の感じ方は小細工ではあまり変わらないかも
こうして視界を赤や青にしたり、音楽を聴くなどして意図的に時間を自由にあやつろうとしたが、想像していたほど簡単ではなかった。
視界の色や音楽よりも、楽しい事をしていたり集中したりという他の要因のほうが変化は大きい。
何とも残念な結果だが、冷静に考えてみるとなぜ時間を自由にあやつれると思ったのか、そもそもの前提の時点で何か無理があったように思えなくもない。
時間をつかさどる能力者になったらぜひリベンジしたい。
結局、最も時間の感じ方が変わったのはこの原稿の締め切りが迫っている時だ。
一日が一足飛びに過ぎていく。パソコンの壁紙を赤くしてテンポの早い曲を音楽を聞きながら作業している。