福田達夫氏は有力ポストに就いたが…(時事通信フォト)
岸田文雄・新総裁のもと、自民党三役の顔ぶれが揃った。岸田氏の選対顧問を務めた甘利明氏が幹事長、総裁選3位と健闘した高市早苗氏が政調会長になったのは順当だが、54歳で当選わずか3回の福田達夫氏が総務会長に抜擢されたのはサプライズ人事だった。
福田氏は今回の総裁選で、派閥横断の若手議員約90人を集めて「党風一新の会」を結成し代表世話人についた。派閥に囚われない自主投票を訴え、河野太郎氏が出馬表明した9月10日の夜にオンラインで設立総会を開いたことから、当初は「河野支持でまとまる若手の中心になるのではないか」と見られていた。
ところが、フタを開けてみれば議員票では岸田氏が河野氏を圧倒。福田氏は総裁選後に「派閥の力ではなかったと理解している。個々の議員がそれぞれ支援する候補者のために働いた」と述べたうえで、自身は岸田氏に投票したと明かした。「一番初めに名乗りを上げ、改革を挙げた。支えがいがある」とその理由を語ったが、福田氏こそ岸田氏圧勝の流れをつくった功労者だと自民党関係者は見る。
「実は福田氏は、総裁選の数日前には『党風一新の会』メンバーや関係者に岸田氏を支持すると伝えていた。これにより、当初は河野氏支持に傾いていた若手議員が一気に岸田氏支持に雪崩を打った。福田氏がはじめからその展開を意識していたかどうかは分かりませんが、結果として福田氏は、河野氏がもっとも期待していた若手議員票を引き剥がすことに成功した。今回の総務会長人事はその論功行賞でしょう。人望と戦略性を兼ね備えた政治家だと、党内での評価も高まっています」
福田達夫氏は第67代首相の福田赳夫氏を祖父、第91代首相の福田康夫氏を父に持つ政界のサラブレッドだ。しかし自民党内では、同じく総理経験者である小泉純一郎氏を父に持つ進次郎氏に光が当たる一方、達夫氏は目立たない存在とみられてきた。
今回の総裁選を機に両者の関係は逆転したと、ベテラン政治ジャーナリストは言う。
「福田達夫氏は三菱商事を退社後、父・康夫氏の秘書となり、総理になった際には首相秘書官も務めた。2012年に康夫氏の政界引退に伴い衆院選に出馬し当選したので、14歳も年下の進次郎氏(2009年初当選)より政界では後輩に当たります。
2人はともに若手議員のリーダー的存在で、対談本を出すなど盟友関係にある。進次郎氏が早くから脚光を浴びたこともあり、福田氏自身もかつては周囲に『まずは進次郎を支えて自分はその後で考える』と言っていた。小泉政権で官房長官を務めた後、総理になった父親の姿に自分を重ねていたのでしょう。
しかし今回、進次郎氏は派手に河野氏支持をぶち上げて長老たちにケンカを売った結果、党内の反感を買った。見通しの甘さで若手の間でも求心力を失い、しばらくは冷や飯を食わされるでしょう。一方、同じように党改革や派閥横断を訴えながら、その実しっかり長老たちにも恩を売ることに成功した福田氏のほうが、政治家としてはしたたかだったということです」
3代続けての総理の椅子が近づいてきたのもしれない。
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