来年の参院選クリアで政権安泰か – 吉崎達彦(かんべえ)

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特集:2022 年の内外情勢を展望する

新しい年を迎えるたびに、「主要政治外交日程」(2p 参照)を作成するのは本誌の「ルーティーン」です。もちろん予定にない突発事件はつきものだし、コロナ下の世界では特にその感が強い。リアル会合がリモート方式に急きょ変更になるのは、いまや日常茶飯事と言っていいでしょう。それでもスケジュールは重視すべきですから、これを手掛かりに来たるべき 2022 年のイメージを膨らませておこうと思います。

2022 年という年を簡単にまとめると、「米国は中間選挙、中国は共産党大会」を年後半に控えて、それぞれ年前半は動きにくい。日本のように米中の狭間で動かねばならない国は、まことにやりにくい 1 年ということになる。幸いにも国内政治は安定しているけれども、外交で思い悩む年、ということになりそうです。

●はじめに:「3 年目のコロナ禍」を受け入れよ

年の瀬、案の定オミクロン株が世界で猛威を振るい始めている。英国やフランスなど、日本の半分程度の人口の国で、「1 日 10 万人超」の新規感染者数が出ているとのこと。日本国内も市中感染者が増えており、どうやら 2022 年も容易なことではなさそうだ。

とはいうものの、コロナ禍も 3 年目となれば、人間社会にもそれなりに準備ができているし、「慣れ」もある。端的に言えばマスクも足りているし、ワクチンも打てるようになった。遠からず治療薬も完成するだろう。そして感染拡大を抑えつつ、経済活動を回していくノウハウも、いろんな形で積み上げられている。

今週号の The Economist 誌「クリスマス特大号」(Christmas douh2le issue)の巻頭社説は、”The new normal”と題して「コロナ下における「確実な予測不可能性」(predictah2le unpredictah2ility)を受け入れよ」と説いている。あいかわらず、言いにくいことをズバリと言ってくれる雑誌であって、「おっしゃる通り」と言わなければなるまい。

〇2022 年の主要政治外交日程
1 月 RCEP が発効(1/1)
通常国会召集(1/17)→会期は 6/15 まで
バイデン大統領が一般教書演説(下旬)
春節(1/31~2/6)

2 月 北京冬季五輪大会(2/4~20)
パウエル FRh2 議長が 2 期目へ(2/5)

3 月 中国全人代(初旬)
韓国大統領選挙(3/9)
北京パラリンピック(3/4~13)
米 FRh2 のテーパリングが終了?

4 月 東証改革~「プライム」「スタンダード」「グロース」の 3 区分に移行(4/4)
フランス大統領選挙(1 回目 4/10、2 回目 4/24)
衆参同一補欠選挙(4/24)

5 月 フィリピン大統領選挙(5/9)
沖縄返還 50 周年(5/15)
Quad 首脳会合(春頃)→バイデン大統領、モディ首相、モリソン首相が訪日
衆院議席「10 増 10 減」法案提出(連休明け?)

6 月 G7 サミット(議長国=ドイツ)?
米 FOMC(6/14-15)→利上げを決断?
「骨太方針」「財政中長期見通し」の公表(月内)
「新しい資本主義実現会議」の答申(月内)

7 月 参議院選挙(7/10)
臨時国会召集→第 2 次岸田内閣が改造?
日銀審議委員 2 人が任期満了(鈴木人司氏、片岡剛士氏)

8 月 北戴河会議(中国、月内)
米ジャクソンホール会合(下旬)

9 月 日中国交正常化 50 周年(9/29)

10 月 ブラジル大統領選挙(10/2)
G20 サミット(インドネシア・バリ島、10/30-31)
中国共産党大会(秋ごろ)

11 月 米中間選挙(11/8)
COP27(エジプト・シャルム・エル・シェイク、11/7-18)
FIFA ワールドカップ(カタール、11/7~12/18)
期日未定 ASEAN 首脳会議(カンボジア)、APEC 首脳会議(タイ)

●国内政治:「黄金の 3 年間」を視野に入れる岸田内閣

それでは 2022 年の日本政治から見ていこう。
今年発足した岸田内閣は、いろんな意味で「常識外れ」である。12 月は臨時国会が開かれていたにもかかわらず、前月比で内閣支持率が上昇している1。こんなことは普通の内閣では滅多にない。国会の会期中は、首相は叩かれて評判を落とすものである。

前任の安倍晋三首相や菅義偉首相は、国会答弁などで誤りを訂正することを嫌ったものだ。指導者たるもの、「ブレない」ことが重要だと考えていたからであろう。安倍首相が、国民から大不評であった「アベノマスク」を頑固に着用し続けていたのは、まことに象徴的な事例であった。

それに比べると、岸田文雄首相は丁寧で低姿勢、かつ安全運転である。答弁が間違っていた場合は、すぐにお詫びして訂正してしまう。その時点で野党は得点を挙げたようにみえるけれども、政権の傷口はそれ以上深まらない。また実際問題として、コロナ対策においては、「朝令暮改」はむしろ望ましいことと言えるかもしれない。

そんな岸田内閣にとって、2022 年最大のテーマは 7 月の参議院選挙ということになる。とにかくそれさえクリアしてしまえば、むこう 3 年間は国政選挙がない。日本政治としてはめずらしいくらい平穏な時期を迎えることになる。岸田氏に自民党総裁としての任期が訪れるのは 2024 年 9 月となる。そこまで行けば丸 3 年となり、十分に長期政権となる。2023年には日本が G7 の議長国となるが、それを選挙区である広島市で実現できれば、そのこと自体が岸田首相にとってのレガシーとなるだろう。

問題はこの「黄金の 3 年間」を活かして、どんな政策を実現するかという点について、岸田首相に明確なアイデアがあるように見えないことである。大型補正や令和 4 年度予算を見ても、これといった方向性は見出しがたい。強いて言えば、岸田氏は「国民に優しく、マーケットに冷たい」発言が目立つ。その延長線上に、どんな日本経済を構想することができるのか。

「新しい資本主義実現会議」が 6 月に答申を出すことになっているので、とりあえずはそこに注目が集まることになろう。岸田内閣にとっての難題は外交である。その点で、訪米日程がなかなか決まらないのは気
がかりであろう。本来は 11 月中の訪米を模索していたが、バイデン政権は内政上の難問が山積していて、それどころではなかった。

来年の通常国会召集は 1 月 17 日となる見込みだが、その前に駆け込み訪米が可能かどうか。米側から見ると、「対日関係は大きな問題がない」ために、日米首脳会談の優先順位が高くはない。痛し痒しといったところだ。

22 年の外交イベントで重きをなしそうなのは、日本国内で 2 回目の Quad 首脳会合を開催すること。バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相が訪日することとなり、時期は 4~5 月頃となりそうである。

1 朝日新聞で 45%→49%、読売新聞で 56%→62%、日経新聞で 61%→65%など。それぞれに尋ね方が違
うので支持、不支持の水準は違っている。

対中関係においては、9 月 29 日に日中国交正常化 50 周年という節目がある。田中角栄首相と大平正芳外相のコンビが北京に乗り込み、周恩来や毛沢東との間で日中間の交戦状態を終わらせてからちょうど半世紀となる。

もっとも共産党大会の直前というタイミングなので、中国側も動きにくい恐れがある。日中国交正常化は外交の偉大な成功例と言えるが、他方では尖閣問題の原点でもある。半世紀前には些細な相違点であったが、今となってはそれがしみじみ重いのである。

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