デンマークの無人販売所はキャッシュレス対応

デイリーポータルZ

野菜や果物を畑のそばで直売する無人販売所が好きだ。いろんな野菜が安く買えるし、それぞれの店の個性が出ていておもしろい。

デンマークの田舎にも無人販売所があるのだが、売っているのは食べ物ばかりではなく、石だったり、家のいらなくなったものだったり、フリーダムだ。しかも、現金がなければモバイル決済にも対応している。

そんな無人フリーマーケットみたいな不思議な無人販売所を見に行ってきた。

1986年東京生まれ。ベルリン在住のイラストレーター兼日英翻訳者。サウジアラビアに住んでいたことがある。好きなものは米と言語。

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自転車旅行にもってこいな、平らな国デンマーク

ドイツから陸続きの国境もあるデンマークは、私のようにドイツに住む人にとって人気の旅行先だ。そんなデンマークを、先日自転車で回ってきた。

ベルリンとコペンハーゲンを結ぶ630キロの公式自転車ルートもあるのだが、今回は時間がないのでベルリンから約400キロ北のプットガーテンという港まで電車で向かい、そこからフェリーでデンマークに渡った。

赤い線が今回デンマークで走ったルート(約400キロ)。

一部の長距離電車には、こんな立派な自転車専用スペースもある。事前に予約が必要だが、乗り降りもスタッフが手伝ってくれて快適だった。
プットガーテンのフェリー乗り場。自転車は車と一緒に並んでチケットを買う。
今回フェリーに直接自転車で乗る人は私たちだけだった。
所要時間は40分。あっという間にデンマークに着いた。

到着したのは、南デンマークのロラン島。バルト海の西端にある、最高標高25メートルの超平らな島で、全体的に平らなデンマークの中でも「パンケーキ島」と呼ばれるほど平らだそう。

のどかな風景が続くロラン島。平たいので自転車旅行にぴったりである。
北海道に住む両親に写真を送ったら「十勝平野みたいだね」と言われた。

今回はこのロラン島から、6日かけてコペンハーゲンへ向かった。

いたるところにある無人販売所

フェリーを降りて、その日の宿を目掛けて走っていると、道路の端に小屋のような物体が見えてきた。

何やら看板も立っている。
無人販売所だ!

デンマークの田舎で無人販売所を発見した。棚には野菜などの商品と料金箱が置いてあり、日本でも見かける無人販売所と同じようだ。

早速10クローネ(約170円)のトマトを買ってみることに。

袋入りのトマトを選ぶ。無人販売所ってなんでこんなに楽しいんだろう。
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野菜やはちみつ屋が多い

珍しいな〜と思っていたら、無人販売所がもう一つ、また一つと出てくるではないか。本格的な農家の野菜から庭で採れたものまで、いろんな規模のお店がところどころに出没する。

新じゃがを売るお店。台所がついている宿だったら買いたかった。
手押し車の無人販売所。じゃがいもやベリー、冷たい飲み物まで売っていた。
フェイスブックのサイトまである、本格的な無人販売所。
と思ったらお裾分けのようなかわいいお店。

はちみつやジャムを売る無人販売所も数多くあった。

はちみつはデンマーク語で「honning」。
ミツバチの巣箱みたいなのと、小さな戸棚がおしゃれ。
こちらはDIY感が出てて素朴でいい。
ビン入りのはちみつが35クローネ(約600円)で買えた。
ここは現金をビンに入れるスタイル。
ジャムやはちみつを売る、デコレーションが華やかなお店。
と思えば、段ボール箱だけのシンプルな無人販売所も。ちなみにどちらのお店もジャムは170円と破格の値段だった。

物価が高いデンマークだが、無人販売所だと色々割安で買えて嬉しい。結局お土産はすべて無人販売所で調達してしまった。

薪、石、窓も買える

6日間のうちに、食料以外のものを売るお店にも数多く出会った。

デンマークの田舎には暖炉のある家も多いからか、薪を売る無人販売所がいくつかあった。

焚き火用の焚きつけを売っているお店。
ここも薪を売るお店。薪の袋は再利用するので、できれば返してくださいとのこと。エコだ。

木を売るところもあれば、石を売るところもあった。

危うく通り過ぎそうになった、石の無人販売所。
うん、石だ。一つ170円ほどだが、高いのか安いのか分からない。
無人販売所とちょっと違うかもしれないが、窓も売ってた。どれでも500クローネ(約8,600円)だそう。こちらも相場がよく分からないが、かっこいい窓だ。
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無人フリーマーケット

そして何よりも楽しかったのが、フリマのような無人販売所だ。

一見普通の無人販売所でも……
フリマコーナーが!
しかも日本製のお箸まで売っている。どこで手に入れたんだろう。
こちらも魅力的な無人フリマ。物干しやら食器やら、いらなくなったと思われるものが並んでいる。
手作りの鳥の巣箱と、食器を売るお店。
ゴミ箱に隠れてたけど見つけたぞ!自転車じゃなかったら買いたかったものが沢山。
大きく「無料」と書いてある。土地を贅沢に使った「ご自由にお持ちください」コーナーだ。
そしてこれが今回見つけた中で一番ゴージャスな無人フリマ。
どこかの国のお土産らしきものやからボードゲームまで。商品の幅が広い。
田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たみたいで楽しい。
売り物に雨水が溜まっても気にしない。

しかも支払いがキャッシュレス

治安の良さがにじみ出る、ほのぼのとしたデンマークの無人販売所だが、一番驚いたのはキャッシュレスで買い物ができるお店がほとんどであったことだ。

田舎のど真ん中でキャッシュレス決済ができる、不思議の国デンマーク。

私が住むドイツは現金主義である。2017年のドイツ連邦銀行の調査によると、ドイツ国民は平均して107ユーロ(約1万3,000円)の現金を持ち歩いているそうだ。

そんなドイツでもコロナの影響でキャッシュレス決済に対応する店が増えたらしいが、それでも現金しか受け取ってくれないお店やレストランはいまだに多い。

「カード使用不可」と書いてあるベルリンのレストラン。今でも現金でしか支払いができないお店が沢山ある。

その点、デンマークはキャッシュレスが進んでいることで有名な国である。

デンマークの人に聞くと、どこのお店もカードやモバイル決済に対応しているので、現金を持ち歩く必要がほとんどないのだそう。

特に個人と個人の間の支払いで広く使われているのが、MobilePay(モバイルペイ)だ。

MobilePayは、デンマーク最大の銀行ダンスケ銀行によって2013年に導入されたモバイル決済サービスである。

友達に見せてもらったMobilePayのアプリ。

PayPayなどのサービスと同じように、アプリで相手の電話番号を検索して、指定した額を送金できる仕組みになっている。

現在デンマーク国内のスマホの90%にアプリがダウンロードされているそうだ。普及率が超高いので、何年も前から無人販売所などでも広く使われるようになったのだと思う。

無人販売所では送金用の電話番号が書かれている。看板はアナログだけど、支払いはデジタル。
ここも「現金またはMobilePayで」とある。
電話番号を書いちゃうことには抵抗がない様子だ。

デンマークの買い物は無人販売所でするべし

今回ですっかりデンマークの無人販売所のとりこになってしまった。お土産どころか、生活用品もすべて無人販売所で揃いそうな勢いだった。

観光客なのでモバイルでの支払いはできなかったが、デンマークの無人販売所は最高に楽しかった。

日本の無人販売所でもキャッシュレスが主流になる日も近いのかもしれない。

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