「役に立たない機械」早慶戦

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「役に立たない機械」という、早稲田建築の名物課題がある。学生が全力で役に立たない機械を作るのだ。実は慶応にも同じ課題が出される授業があり、今年、初の早慶戦が行われた。

「役に立たない機械」の早慶戦が開催された

「役に立たない機械」とは、早稲田大学の建築学科の一年生に対する名物課題で、役に立たない機械を作りなさい、というものだ。当サイトでは 2008年の記事 で最初に取材させていただき、その後も毎年紹介している。このところタモリ倶楽部などのテレビ番組でも定期的に取り上げられている。

実は慶應大学にも「役に立たない機械」というお題が使われている授業がある。早稲田で授業を担当していた先生の一人である石川初先生が慶應大学で中西泰人先生と一緒にやっているものだ。

そして今年、初めての「役に立たない機械」早慶戦が行われるにいたった。コロナ禍で学生を励まそうと、早稲田の中谷礼仁先生が中心となって企画したそうだ。

昨今の状況に鑑み、オンラインでの早慶戦である。

「貯金箱」 今成歩(2014年)

これは役に立たない機械の例。貯金箱とはいうものの前後はがら空きで、これで貯金できているとみなすかどうかはほぼ自分の気持ち次第である。

早慶戦のルール:交互に作品を発表し、7回裏まで

ルールはこんなふうだ。まずは早稲田から作品を発表し、次に慶応が発表という順序で、交互に14人が発表する。最後に、参加した先生と生徒のみなさんの一人ずつが審査員となり、よかったもの3つに点を入れて合計点を競う。

野球に例えると(早慶戦なので)、早稲田を先攻として7回裏までを戦うという感じだ。

役に立たない機械という課題の趣旨

作品の紹介の前に、それぞれの大学の先生から、課題の趣旨についての説明があった。

早稲田大学 中谷先生の資料より

早稲田では、1年生の課題になっている。役に立たない機械は「設計演習A」という講義のテーマの一つで、本格的に建築を学ぶ前にその周辺への視座を獲得してもらいたいというのが講義全体としての狙いとのこと。

役に立たない機械とは、目的なき合目的性なのだ

慶応では、3年生の課題になっている。プレゼンはうまいが手が動かないタイプの学生もいるので、とにかく何かを作ってもらおうという狙いがざっくりあるとのことだった。

慶應義塾大学 中西泰人先生の資料より

慶応の授業では、ものの名前を一回忘れて働きだけを考えて別のものに使い、何かを作るということをやっている。役に立たない機械はその一環だそうだ。

1回表:早稲田「二進法カレンダー」

最初に登場するのは田川和夏さんの「二進法カレンダー」だ。まずは作者がこの機械について2分間で説明する。

「ふだんカレンダーって10進法を使ってると思うんですけど、私はあえて二進法で作りました。たとえば今日は8月18日なので・・」

「こうなります。」と言いながら手でめくる。

8月(=1000)18日(=10010)で 100010010 ということだろう。慶応の先生が大受けで笑っている。

思いついたきっかけは、二進法で片手の指5本だけで表せる最大である31(=11111)と、1月の日数の最大である31が同じだったところから。なるほどー。

作者による説明の後は、先生方による講評が行われる。「これは日めくりみたいに手でめくるんですか?」「たとえば27日だとどうなりますか」と質問すると、作者の田川さんは「27・・」と呟きながらカレンダーをめくり、それを見てまた先生がよく笑う。

「31日が片手でちょうど表せるのは偶然とは思えない」「秋葉原とかで売れるんじゃないか」「二進法でキリのいい記念日がありそう」などの感想が出た。

個人的には、15日(=1111)を16日(=10000)にするときにたくさんめくるので気持ちよさそうだなーと思った。(逆にいうとグレイコードという仕組みを使えば毎日必ず一枚しかめくらなくていいようにできそう・・と思ったけどそれってふつうの日めくりカレンダーだ)

1回裏:慶応「オレオろし器」

つづいて慶應大学の秀島裕樹さんによる「オレオろし機」。作者が紹介する。

「オレオろし機とは、その名のとおりオレオをおろす機械です。オレオをセットし・・」

「上のレバーを押し込むと・・」

「三枚におろすことができます」

それによりクリームだけを味わうといったことができるとのこと。

部品は3Dプリンタで出力した。湿気や個体差による影響が大きく、スムーズに剥がすのには苦労したそうだ。その過程で、

・開封して時間が経ち、湿気たものが剥がれやすい
・開封直後のものは剥がれにくい

といった知見を得たとのこと。最初はクッキーを1枚剥がすだけだったが、次第に改良して3枚におろすようになった。注意したのは強度の面だそうだ。押し込むときに意外と力がかかる。

プレゼン資料もすごい

講評(や参加者の感想)は次のようだった。

・取っ手とかよく考えられている。トラスで補強したり。
・いくつも作って最適化しているのがいい。
・ネーミングもいい
・2枚で手を打たず、3枚に下ろすところがすごい

最後の点は本当にそう思う。この課題の提出期限は出題の3週間後だそうだ。並の学生(ぼくとか)なら、ぎりぎりに作り始めて最低限のものを出したりしそうなところ、ちゃんと作り終えてしかも改善する。えらい。

2回表:早稲田「あんたのストロー、折ったろか」

つぎは早稲田の関根敬介さんによる「あんたのストロー、折ったろか」。

「ストローを折る機械を作りました。機構は単純で、二つの機械を蝶番でつなげています」

写真のとおり、折れるストローの折れる部分を蝶番に合わせてあるので、蝶番の部分を曲げればストローも曲がる。ただ、それだけではない。

「これのいいところは、音が気持ちいいというところです。耳をすましてもらって・・」

画面の向こうで関根さんが蝶番部分を曲げると「コココココ・・」という高い澄んだ音がする。たしかに手で曲げてもその音はするが、機械に包まれている分だけ共鳴しやすいのかもしれない。

「これがめっちゃよくて・・」(先生、大ウケ)

曲げるとこんなふうになる

講評と感想は以下のとおり。

・久々に見た。ここまで役に立たないやつ。
・役に立たない機械は、その機械にかかったものがありがたく見えることがある。これはその最たるもの。
・織田信長が豊臣秀吉に足袋をあっためてもらった気持ちはこれだ。
・「上様、ストローを折っておきました」
・漆塗りで作るといい。螺鈿仕上げとか。
・折る直前に「みんな静かにしてー!」というパフォーマンスがあってもいい

先生がノリノリである。

2回裏:慶応「影傘」

続いて慶応の一ノ瀬雄太郎さんによる「影傘」

「私が作ったのは影傘(かげがさ)というものになります。主な機能として、スイッチを入れて上のライトが灯ることによって・・」

「夜道で自分が明るくなります。」(先生方ウケる)

夜には実は影が降ってきていて、それをこの傘で遮るということのようだ。

「ふつうの傘は生地がついていますが、この傘はライトがついていてその機能を果たします」

すごいコンセプトだ。影が降ってくるなんて考えたこともなかった。以下、講評。

・これはね、明らかにおかしいですよ
・夜道で反対側から(これをさした人が)歩いてきたらどうしようかと思う
・いやー面白い
・撮ってるのは誰が撮ってるの?
 → 「母です」(会場笑)

お母さん、いいなあ。ありがたい。

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3回表:早稲田「午後の綿棒」

早稲田の杉山美緒さんによる「午後の綿棒」。

「この機械では、今日使う綿棒どれにしよう、誰か代わりに選んでくれないかな、そんな悩みを解決します。」

つまり、この機械が綿棒を選んでくれるということらしい。使い方はこうだ。

上のつまみを掴んで・・ 

クルーッと回す。

止まったら全体を下に押すと、手前の一本が上に押し出される。ロシアンルーレット的。こうやって選ばれた一本が「特別感をまとって堂々と出てくる」という。

これに対する講評、感想はこんなふうだった。

・ハンドスピナー感がある
・スカートが舞っているみたい
・問いの立て方がばかばかしいところがいい
・ささやかにちょっとだけ役に立つ、ささやかさの手際がいい
・1日の最後に綿棒を選ぶという大変な作業を軽減します、みたいな虚構に引き込んだ言い方でもいい

先生が質問する。
「どうして綿棒を選ぶという問いを立てたの?」
「お風呂上がりに綿棒を選ぼうとして、誰かが選んでくれたらと」

「いや(ふつう)選ばないじゃない、綿棒。その飛躍がすごい。」

たとえば、ぎゅうぎゅうに詰まった爪楊枝から、どれにしようかなと一本選ぶということはふつうしない。しかし作者は綿棒を選びたいと思ったというのが面白い。先生からも「僕も綿棒選びますね」という声が上がった。なるほどそういうものなのか。

3回裏:慶応「少女時代を思い出す機械」

 つづいて慶応の関本嵐嵐さんの「少女時代を思い出す機械」。

「よく母に二つ結びをされたんですけど、すーっと入る細い櫛にいつも鳥肌が立っていて、それを再現した機械を作りたいなと思っていました。」

 「そこで、バナナのフックを使ってこういう機械を作りました」

「少女時代を思い出す機械」

「こうやって家族の身長を書き出して、使う人の背の高さに機械を合わせます」 

「わたしはこのあたりの身長なので、ここにセットして・・」

と、言いながら頭を機械の先端に当てつつ、膝を使って頭を下げる。

「上から下にスーッと櫛が入る感覚に似ていて、鳥肌が立つんですよ。女性だとよく分かるかもしれません」

「お父さんにも試してみました。以上です。」(会場笑)

この機械は最高だと思った。ほとんど泣きそうだった。頭の後ろに櫛が入る感覚で少女時代を思い出すって、もう詩じゃないか。妹・わたし・ママと書かれた目盛りも、参加してくれるお父さんも、ぜんぶ感動的だ。

参加者からの感想、講評はこんなだった。

・個人の身長に合わせて調節しなきゃいけないところが余計おかしい
・お父さんも使ってたけどほんとに鳥肌立ったの?
 →「ぞわっとするって言ってました」
・身長に正確に合わせるんだけど最後自分のひざ加減なのもいい

最初は、フックが帽子にくっついてるような形だったそうだが、壁に設置するように変更してから面白さが増したそうだ。機械としておおがかりになるほど、ばかばかしさが際立って面白くなると。なるほど。

4回表:早稲田「二重振り子式メトロノーム」

この早慶戦は7回裏までなので、この回でちょうど半分。つぎは早稲田の島田恵佑さんによる「二重振り子式メトロノーム」。

「メトロノームは、振り子の等時性と予測可能性があるから役に立つ機械なんだなと考えまして、じゃあ振り子をもう一個つなげてみようと。」

「二重振り子は乱雑で予測不可能なカオスな振る舞いをするので、役に立たないだろうと思いました。」

これについては動画を見てもらうのが一番いいと思う。今回の役に立たない機械を含む、早稲田建築の設計演習Aという課題の2021年の展覧会「だけど / だから展」が開催されていたので、そのときのようすを。

「タッタタッタッ タッタタッタッ」という感じで普通のメトロノームとは違うリズムが刻まれるのが分かる。

「せっかくなんでこれで一曲弾いてみようと思います。それではジョンレノンのイマジンです。」

といって、島田さんがピアノでこのメトロノームで無理やり演奏する。歪んだイマジンが聞こえてきて、教授は大ウケ。

講評、感想:
・イマジンがダメ押しだった。やられた。
・メトロノームの形をしてるのに不定なリズムが聞こえて不安になる
・物理的なジェネラティブアートだ
・アウトプットとして音以外にもジャンプできそうな面白さがある
・イマジンと合わさると見たことのない第二の平和のよう

しばらく聞いていると分かるが、そのうち二つの重りが同期して、普通のリズムを刻むモードになる。なるべく長くカオスな状態を維持するために、本来はテンポを調節するためにあるメトロノームの上部の重りをうまく使っているそうだ。

4回裏:慶応「アイスキャンドル」

慶応の生越結乙さんによる「ice candle」。

「ただ火を眺める心地よさを追求した氷のロウソクを作りました。」

「作り方です。普通のロウソクからロウ芯を取って、型に入れて氷のロウソク、アイスキャンドルを作ります。」

「火をつけます。氷が溶け、火が消えるのを見続けます。」

氷の中にはロウ芯だけが刺さっているので、芯に含まれるわずかなロウを燃やしながら氷に達すると火は消えてしまう。火を眺めることの心地よさと、ロウソクの儚さを表現したという。ちょうど1分、ハッピーバースデーを歌い終わったくらいで消えるそうだ。

講評:
・エモい
・ロウ芯しかないからすぐ消えると分かっていても、いつ消えてしまうのかと気になる
・結婚式とかでこれを使って歌でも歌って、しばらくしてふっと消えるといい感じになりそう
・映像としてきれい

5回表:早稲田「CO2削減機」

つづいて早稲田の西村丈太郎さんによる「CO2削減機」。

「作ったのはこういう、植物が生えてるやつです。」

矢印の先にあるものが機械

肝心の機械が不鮮明で見づらく申し訳ない。ペットボトルのキャップの裏側に植物が生えているところを想像してください。

「使い方としては、炭酸飲料を買ってきて、もともとついてるキャップを外して、好きな植物のCO2削減機をはめます。」

「すると中に植物が入ります。本来は地球上だと二酸化炭素を吸収するんですけど、ペットボトルの中だと炭酸を抜いてしまう。役立たずになってしまうという機械です。」

先生の講評が面白かったので、やや長いけど紹介したい。

・タイトルがでかいわりにやることがしょぼくていい
・炭酸水の瓶の中はCO2で満ちているということをよく発見した
・つまり地球上に植物が出現する前の地球の大気に似てるということ
・そこで植物が繁茂することで二酸化炭素が削減されて酸素が増え、もしかすると動物が発生するかもしれない。
・環境の研究では地球も閉じた環境だとみなす。原始の地球になぞらえるのは納得がいく。
・コーラの瓶の中がバイオスフィアだと言った奴はいない。驚いた。
・コーラという資本主義の象徴の中に逆さに木を植えるというのが訳の分からないおかしさがある

植物が地球上の二酸化炭素を吸収するのはある意味では役に立っているのだが、それは役に立とうと思っての結果ではない。そもそも役に立つとはどういうことかということについても考えてしまった。

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5回裏:慶応「裕福ゆすり機」

慶応の百瀬莞那さんによる「裕福ゆすり機」

足にはめている黒いのが機械

「これは、貧乏ゆすりをしているのにもかかわらず、なぜか満たされた気持ちになる機械です」

「機械の中に小銭が入ってます。このジャラジャラ感が、苛立つ自分をなぜかリッチな気分にさせてくれます。」

「こだわりとして、小銭の割合があります。一番幸福になれる割合をゴールデンジャラブレンドと呼んでいます。これをプラスチックの箱に小銭入れて、サポーターに入れて完成です」

プラスチックケースに入れた小銭がジャラジャラいうことでリッチな気分になるという機械。ゴールデンジャラブランドのところで思わず笑った。いい名前をつけることでおかしみが増す。

以下、講評。

・早稲田側の役に立たない機械だと途中でネームを変えることがある。「裕福ゆすり」ではないような気がするが、何かは分からない。
・百瀬さんはこういう意味のないものを作ることが難しかった学生だと思う。社会の役に立つことだけをやっていくタイプ。ブレイクスルーになってたらいいなと思う。
 → こんなに真面目じゃないことでプレゼンする経験がなかったのでとても緊張した。
・ゆすってたらお金が増えるといい

無意識に貧乏ゆすりをする人の膝につけたら、気づいてやめるきっかけになるかもしれない。そうでもないか。

6回表:早稲田「分離器」

早稲田の仲野潤平さんによる「分離器」。

「ひもの先端に釣り針がついていて、ティッシュを分離するという機械です。」

「側面からじょじょにひっぱっていくと・・」

「はい、こんな感じで分離します。」

「ティッシュ1枚につき1回しか裂けないこととか、パリパリッという音とかが、ティッシュの儚さを感じさせていいなと思いました」

・儚い感じのビジュアルがいい
・持ち手をもっと金属でゴテゴテにしたりすると、よく分からないけど俺もやってみたい、と思わせるかも
・全体がアルミの一体の削り出しとか、チタンの鈍い輝きだったり
・これが何なのかということをとても的確に説明していてよかった
・実際にやってみると、パリパリと裂ける感じが指先に来てとてもいい。

8月29日にBSフジの「プレスク」という番組でこの機械が紹介されるそうだ。見られる方はぜひ。

6回裏:慶応「つっぱり棒時計」

慶応の眞鍋創人さんによる「つっぱり棒時計」。

「まずは音を聞いてください」

眞鍋さんが、伸ばしたつっばり棒を真上に向けると、「カラカラカラ・・」と回転しながら棒がゆっくり落ちてくる。

「こういうふうに、つっぱり棒って地面に垂直にすると伸びたり縮んだりするんですけど、その音とか見た目を楽しむ装置です。」

カラカラカラ
ストン

つっぱり棒が下まで落ちたら、装置のハンドルを回すと棒が反転してまた上にあがり、再び落ちてくるのを楽しむことができる。落ちてくるまで約11秒だそうだ。

・繊細な動きを注意深く作っている
・機構として美しい。
・ゆっくりと伸びたり縮んだりするさまがいい
・もはやつっぱり棒じゃなくなってる

さっきのティッシュのやつもそうなんだけど、機械にセットされることでふだんとは違う美しさのようなものが現れる。ティッシュの場合は儚さ、つっぱり棒の場合は優雅さとかだろうか。

7回表:早稲田「たまごまま」

早稲田最後の作品。ゴンジェヒョンさんの「たまごまま」だ。

「新宿にあるモード学園を見て、たまごを使おうと思いました」

写真は展示会で改めて撮影したもの

「たまごを入れると・・」

「たまごを産んでくれます」

「食事の大切さに気づいて感謝しながら食事をする気持ちを持つといいのではないかと思いました。」

最初は「消化不良」という題だったが、産む方が面白いとおもい「たまごまま」に変えたそうだ。

・一家に一台あるといい
・たまご買ってきてとりあえずここ通すだけでおいしくなりそう
・口があいてるから人をばかにしたみたいな表情でいい
・新宿コクーンタワーは繭だから卵でも当たらずとも遠からずだ
・ファミレスの子どもメニューでゆで卵をこれに通せたら喜びそう

これはいいなあ。かわいいし、感動的だ。

7回裏:慶応「血判子」

いよいよ最後、慶応の太田瑛人さんによる「血判子(けっぱんし)」。

まずは動画による紹介だ。

判子を持っている
裏のキャップを外すと針が出る(痛い場面はないので安心してください)
ペタリ

「自分の血で押せる判子です。これを押すことで自分の決意の固さを証明したり、逆に覚悟が足りないのを思い知ることができます。」

婚姻届けから宅急便の受領まで、判子を押す対象にはその重みに違いがあるにもかかわらず、押すという行為には違いがない。そこで、簡単に押せない血判子を使って、判子を押すという儀式の意味を思い出す、ということだそうだ。

以下講評。

・名前がいい。造形もシンプルでいい。
・印面はなくて、針があるだけの判子状のものでもいい。指紋で押す。
・実際に指を刺してみた?
 →痛すぎて無理でした
・相当腹を括らないと捺印できないということだ

試したものの痛くて上の例ではインクを使ったそうだ。それがいい。

投票で3位までを決める

これでぜんぶの紹介が終わった。参加した先生方や生徒のみなさんで、よかったものを上位3つまで決める。1位を5点、2位3点、3位1点として投票するのだ。

ご厚意によりぼくも投票することになったのだが、いざ選ぼうとすると3つだけというのは本当にきつかった。みなさんは何が好きだったでしょうか。

そしていよいよ結果発表。

3位は、慶応の秀島さんの「オレオろし機」
2位は、早稲田の西村さん「CO2削減機」
1位は、慶応の一ノ瀬さんの「影傘」

となった。

 影傘をさしながら遠のく

影傘は、影が降ってくるというアイデアが素晴らしかった。学生からの高評価が多く1位となった。おめでとうございます。

取材協力:
早稲田大学創造理工学部建築学科のみなさん
設計演習A「だけど / だから展」2021
https://www.dakedo-dakara2021.com/

慶應義塾大学SFCデザイン言語総合講座のみなさん
https://www.youtube.com/playlist?list=PLm5YCWWuYoWVoSeghqZk0SakY1ApUMc-k
(今回の7作品を含む動画が見られます)

まとめ

むちゃくちゃ長い記事になった。しかしどれかを省略するということはできなかった。

役に立たない機械を自分で考えてみるとその難しさが分かる。既存の機械を劣化させても役に立たなくなるが、それではつまらない。よく出来ていて正しく動作するが、なんの役に立たないものじゃないといけないのだ。その役に立たなさに、おかしさや愛おしさがある。

改めて、取材させていただいた慶応と早稲田のみなさん、ありがとうございました。

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