混とんとする政局

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注目の横浜市長選挙はあっけない幕切れとなりました。一部では大混戦の予想もありましたが、立憲民主党が推す山中竹春氏が午後8時の開票が始まって間もなく当確が出ました。私は土曜日のブログでこの選挙は小此木氏と山中氏が頭一つ出ているが、山中氏優勢と書かせていただきました。私と全く関係のない選挙区の話ですので言葉を選んで書いたのですが、頭の中ではもう少し明瞭な予想があったのは事実です。また、実際に選挙地区に入り、選挙活動をしている方の実感からすれば選挙戦時点でほぼ結果は出ていたのではないかと察しています。

この選挙はそもそも現職、林文子市長のIR(統合型リゾート)誘致に対する信認選挙とされていましたが、私からすればカジノを首都圏に誘致するという発想は4、50年前の着想であり、それを推した林氏自身が賞味期限切れでした。アメリカのカジノのスタートは西のラスベガスと東のアトランティックシティですが、主要都市からはそれなりの距離があります。北米の近年のカジノ開発は多くが先住民居住区などで先住民の雇用確保など特殊配慮を背景としているのに対して日本の誘致は税収確保というあまりにも短絡的な発想が背景にありました。

よって今回の争点は当初からIR是非を問う選挙ではなく、林氏の信任であったはずです。ところが次々と有力者が立候補したため、構図がすっかり見えなくなりいつの間にか閣僚を辞めた小此木氏を現政権の写し絵とし、秋の衆議院選を控え、菅政権の信認予備選挙になったとみています。

ではなぜ、小此木氏は山中氏に瞬殺されたのでしょうか?私は山中氏が医療安全の専門家であり、公衆衛生を研究してきた方ですので意図せずして劇場型選挙になったとみています。つまり、コロナ対策選挙です。そして市民は高い見識を持つと思われる人を選んだ、それが答えだったとみています。小此木氏が敗戦の弁でもう選挙には出ずに引退すると表明したのは氏にとって手ごたえのない最低の戦いだったという意味と理解しています。

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さて、政局です。選挙結果を受けて9月17日に見込まれる自民党総裁選告示までの動きはどうなるでしょうか?現在、総裁選に出馬意欲を見せているのは菅総理以外に下村博文氏、岸田文雄氏、高市早苗氏の名が上がります。もう数名、名前が出てくる可能性はありますが、安倍晋三氏の芽はないとみています。この顔ぶれなら切り口の新しさで高市早苗氏に否が応でも注目が集まると思います。

今回の総裁選は消去法でいったほうがわかりやすいかもしれません。「この人では勝てない」という人を一人ずつ除去していくと私見では高市氏しか残らないのです。下村氏は当選回数こそ多く、自民では重職でありますが、国民の顔役になりません。菅氏が顔にならなかった点を考えれば下村氏の線は私には考えられないのです。岸田さんは押しが足りなさすぎます。

一方、SDG’sが流行語になりそうな勢いの今年、女性のトップ就任はガラスの天井を破る点で新しい日本に期待感を寄せるものとなるでしょう。また難局打開という点からも切り口を変える手法は古い体質の自民党が変わるチャンスでもあります。

秋の衆議院選で第一党としての自民党が野党に負けることはないと思います。(過半数確保は困難とみています。)今、国民がそっぽを向いているのは現政権であって自民党そのものではありません。支持する政党では野党を大きく引き離し、引き続き圧倒しているわけで自民の体質改善を国民が広く求めているということかと思います。

世論調査では無党派が6割にも達しているとすればその取り込みが選挙における最大の戦略になります。誰ならとれるのか、党利党略からすれば私には自明だと思っています。

ただ高市氏が総理として戦略的に適任かといえばやや疑問符が付くところはありますし、手腕が分からないのは事実です。また、一度思い込んだら説得しにくいタイプのように見受けられます。つまり、周りはやりにくい気がします。政権に対する世論の圧力は極めて強いですので高市氏がそれに耐えうる論理性と説得力、胆力を備えうるか、ここがキーではないでしょうか?

しかし、高市氏にしろ小池百合子氏にしろ独身。国際舞台ではあまり格好はよくないけれど足かせなく、活躍するには独身となれば日本社会の特異性という点にもいずれ焦点が当たることになるでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年8月23日の記事より転載させていただきました。

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