メディア業界にとっては残念なことだが、ミレニアル世代をターゲットに10年近く磨きをかけてきたオーディエンス戦略は、Z世代には通用しない。そして、多くのパブリッシャー、マーケターはすでにそのことを知っている。
Z世代は10年以上にわたってインターネットの重要な部分を占め、勢力を拡大していたにもかかわらず、多くのメディア企業、ブランドにとってはいまだに「謎の存在」だ。この世代の影響力は強いが、誤解されることもある。2021年に入ってからも、Z世代がTikTokで組織化し、ゲームストップ(GameStop)の株価を1週間で8000%上昇させるという大規模なクーデターを成功させている。
現在、Z世代がビジネス戦略のターゲットになっているかどうかにかかわらず、この世代と前向きな関係を持ち、ブランドアフィニティの構築を今から始めておくことは、ブランドや出版物を10年後、20年後まで存続させるために重要なことだ。
Advertisement
このガイドでは、新旧のパブリッシャー、マーケター、ストラテジスト、Z世代のTikTokクリエイターへのインタビューをもとに、Z世代のメディア消費習慣を包括的に見ていきたい。この世代に関する調査結果やデータに加え、DIGIDAYの記事へのリンクもガイド全体にちりばめている。
- 目次
- 01 Z世代:「驚くほど意識が高く」、「はるかに批判的な」世代
- 02 Z世代とは?
- 03 Z世代についてパブリッシャーが知っておくべきこと
- 04 Z世代についてマーケターが知っておくべきこと
- ソーシャルメディアでの自身の役割を知る
- 05 Z世代の心の内
- ──ニュースを読みに行くプラットフォームは?
- ──ほかのソーシャルメディアはどのように利用する?
- ──特に気に入っているメディアサイトはあるか?
- ──広告については? 自分にとって最善だと思う広告やマーケティング戦略のタイプは?
- ──インフルエンサーがもっともインパクトを与えられるプラットフォームは?
- ──インフルエンサーとして、またソーシャルメディアでブランドを構築している人としての自身の役割は? 自分でTikTokに投稿するようになってから学んだことは?
- ──TikTokクリエイターファンド(Creator Fund)を利用しているか、あるいは自身のチャンネルで収益をあげているか?
目次
01 Z世代:「驚くほど意識が高く」、「はるかに批判的な」世代
Z世代は9~24歳と定義されており、興味の対象は非常に幅広い。既存のメディアブランドは若いオーディエンスと彼らより上の世代の両方に有効なコンテンツや成長戦略を見つけようとしているが、利用するメディアから関わるプラットフォーム、好むコンテンツの種類まで、両者のメディア消費習慣は大きく異なっている。
また、伝統的な広告枠(印刷物のキャンペーン、スーパーボウルのCMなど)や旧来のデジタルキャンペーン(バナー広告、プレロール動画など)に頼ってきた消費者向けブランドは、広告に囲まれて育ち、鋭い感覚で本物を見極めるZ世代にリーチするための最善の方法を考える必要がある。
その理由のひとつとして、この世代は自分が何を信じているかをオンラインで率直に語り、ブランドとパブリッシャーの両方に対し、適切なプラットフォームを利用するだけでなく、急速に変化し次々とトレンドが生まれるインターネット文化の一部になるよう求めることが挙げられる。老舗企業にとっては、これは必ずしも実行しやすい戦略ではない。特に、TikTokのような新興プラットフォームでソーシャルメディアプレゼンスを構築し始めたばかりの老舗企業にとってはだ。
オムニコム(Omnicom)傘下のテクノロジー主導型カルチャーコンサルティング企業スパークス&ハニー(sparks & honey)でジュニアカルチャーストラテジストを務めるクリスチャン・ケノリー氏は「デジタルネイティブであるZ世代の特徴は、驚くほど意識が高く、しかもほかの世代よりはるかに批判的なことだ。彼らは最大限に楽しむことのできるコンテンツを期待している」と話す。ダンスのトレンドをつくることがTikTok戦略のすべてであるブランドは、このオーディエンスに名指しされて笑いの種になるとケノリー氏は断言する。「ブランドの失敗だけでなく、特定の業界や組織が完全に切り離されて的外れなことをしている状況をテーマにしたミーム文化が存在する」。
Z世代向けのデジタルパブリッシャーや若い消費者をターゲットにしたブランドはソーシャルメディアをコンテンツ、配信戦略の中心に据えている。グループ・ナイン(Group Nine)、Yahooのイン・ザ・ノウ(In the Know)、オーバータイム(Overtime)といったパブリッシャーはソーシャルメディアでのブランド構築を優先し、その後、あるいは同時進行で、自前のプラットフォームを構築している。ワシントン・ポスト(The Washington Post)をはじめとする既存の新聞社は未来の購読者でファネルを埋めるため、新興プラットフォームを抜け目なく取り入れている。
一方、マーケターは広告やインフルエンサーマーケティングに関して言えば、Z世代は何より信頼性と透明性を重視していると見ている。高級ファッション誌の広告や映像が加工されたCMは、この世代が大切にしている精神とは合わない。
Z世代はオンラインだけで生きているわけではなく、ほかのメディアに繰り出すこともあるが、文化的な会話に参加せず、何らかの運動や倫理的なビジネスへの支持を表明しないパブリッシャー、マーケター、ブランドはこの層とブランドアフィニティを築くことができず、最悪の場合、利用をキャンセルされてしまうリスクがある。
02 Z世代とは?
年齢:9~24歳。ピュー研究所(Pew Research Center)によれば、1997~2012年生まれ。
ジレニアル世代:ミレニアル世代とZ世代を分ける年についてはかなり意見が割れているため、1990年代前半に生まれたミレニアル世代の層や後半に生まれたZ世代の層とは違う1994~1996年生まれの20代を表す第3のカテゴリー「ジレニアル」がつくられた。
- 41%:米国に暮らす18~29歳の成人(若いミレニアル世代と2002年以前に生まれたZ世代)のうち、政治関連のニュースを主にソーシャルメディアから得ていると回答した人の割合。ピュー研究所が1万2000人以上を対象に2019年11月から2020年12月にかけて順次実施した調査より。
- 30%:米国に暮らす18~29歳の成人のうち、政治、選挙関連のニュースをニュースサイト、アプリから得ている人の割合。ピュー研究所の調査より。
- 57%:朝起きてまずニュースに接するのはメッセージングアプリを含むソーシャルメディアプラットフォームだと回答したZ世代の割合。Z世代のニュース消費をテーマにしたロイター・ジャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism)の2019年の調査より。
- 2倍:Z世代は45歳以上の世代の2倍もスマートフォンに依存しているが、その時間の大部分はごく少数のアプリに使われている。ロイター・ジャーナリズム研究所の調査より。
- トップ5:Z世代がよく使う数少ないアプリは、トップがインスタグラム、2位以下はWhatsApp(ワッツアップ)、Snapchat、YouTube、TikTok。トップ25にニュースアプリは含まれていない。ロイター・ジャーナリズム研究所の調査より。
03 Z世代についてパブリッシャーが知っておくべきこと
Z世代が主なオーディエンスであるパブリッシャーとZ世代と年上の読者がいるパブリッシャーは、Z世代にまずブランドを紹介するには動画が不可欠だと気付いている。
ストリーミングとソーシャルの情報を提供するコンビバ(Conviva)の戦略担当バイスプレジデント、ニック・シセロ氏は「Z世代のユニークな点は、ミレニアル世代がソーシャルメディアで育ったのに対し、Z世代は動画に重点を置いたソーシャルメディアで育ったことだ」と話す。しかし、Z世代のメディア出版物に対する認識やプロパティとのつながりを築く方法は「ブランドのロゴからブランドを構成する人々へとシフト」している。
全米規模のニュースパブリッシャーであるワシントン・ポストのマネージングエディター、キャット・ダウンズ・マルダー氏によれば、デジタルオーディエンスの約4分の1が、同社が現在強化中の19~35歳の年齢層だという。
ワシントン・ポストはTikTokでパーソナリティ主導のアプローチをとり、パンデミックの初期にこのオーディエンスをいくらか獲得した。2019年からTikTokのコンテンツを制作していた動画プロデューサーのデイブ・ヨルゲンソン氏が、パンデミック中に自宅から動画を投稿し、「かっこ悪い男(uncool guy)」から親しみの湧くニュース、政治コンテンツの疑似インフルエンサーへと変身を遂げた。1分間の動画はTikTokのためだけに制作されたもので、情報提供とコメディの両方に重点を置いている。TikTokページのフォロワー数は100万人に近づいており、すべての動画を合わせて4000万の「いいね」が付いている。
ヨルゲンソン氏が動画のなかでトライアル期間の割引料金を繰り返すなど、ワシントン・ポストはTikTokでサブスクリプション製品の宣伝を行っているが、ワシントン・ポストのソーシャルコンテンツを見つけたすべてのZ世代を購読者にするつもりはないとマルダー氏は述べている。
「ファネル下部の読者売上を重視する我々にとって、ロイヤルティは極めて重要だ。しかし、ロイヤルティにまで到達するには、まずファネル上部の関係構築から始めなければならない」とマルダー氏は話す。「我々が行っていることの多くは、人々にワシントン・ポストを知ってもらい、親近感を抱かせ、最終的に我々のブランドを信頼してもらうことだ」。マルダー氏はTikTok経由で獲得した購読者の数を明らかにしていない。
デジタルパブリッシャーのグループ・ナインはこの10年間に構築、買収したスリリスト(Thrillist)、ドードー(Dodo)、ナウディス(NowThis)、シーカー(Seeker)、ポップシュガー(PopSugar)という5つのブランドを有しており、中心的な成長戦略としてソーシャルメディアに重点を置いている。成長担当エグゼクティブバイスプレジデントのノア・キール氏によれば、同社にとってZ世代は決して唯一のオーディエンスではないが、若いインターネットユーザーの心のなかには、それぞれのプラットフォームにそれぞれの目的があるということを認識する戦略が、Z世代のオーディエンスを強化する助けになっているという。
TikTokとSnapchatは、グループ・ナインがZ世代にリーチするために力を入れているプラットフォームだ。グループ・ナインはこの2つのプラットフォームと協力し、短時間で視聴できる「ひとくちサイズ」の動画フォーマットのオリジナルコンテンツや番組を制作しており、Z世代にアピールできているとキール氏は説明する。
バラエティ(Variety)によれば、2020年には4億人以上がSnapchatで番組を視聴しており、そのなかには米国のZ世代の90%以上が含まれているという。その結果、有名人やコンテンツ制作者、パブリッシャーとのオリジナルコンテンツ契約が増加した。
ロイター・ジャーナリズム研究所の上席研究員であるニック・ニューマン氏は「『すべてを動画にすれば若者が集まる』というのは単純すぎるが、動画はZ世代にとって極めて重要な娯楽メディアだ」と話す。ただし、ニュース速報や重要な情報に関しては、スピードとコントロールを理由にテキストが好まれるため、あるテーマのキュレートされた情報を素早く伝える場合、Twitterのようなプラットフォームが活用されているとニューマン氏は補足する。
イン・ザ・ノウは若いオーディエンス向けのエバーグリーンな動画コンテンツをヤフーのサイトやチャンネルで配信するためにつくられたパブリッシャーで、2017年の立ち上げ以来、Z世代から絶大な支持を得ている。その結果、2020年2月に独自サイト「InTheKnow.com」を開設することになり、コムスコア(Comscore)によれば、3月には月間ユニークビジター数2500万人を達成した。旧ベライゾン・メディア(Verizon Media)で全世界のコマースを統括するアンドレア・ワッサーマン氏は、モバイルプラットフォーム経由で獲得したオーディエンスが4分の3以上を占めており、前年比900%の成長率を記録していると話す。ただし、正確な数字は不明だ。
ワッサーマン氏によれば、イン・ザ・ノウがつくられた理由のひとつは、Z世代に受け入れられるコマースコンテンツを検証することだったという。イン・ザ・ノウは2019年、アフィリエイトリンクを導入し、強化。編集スタッフによるデモ、試用、商品レビューを含むショッパブル動画を制作し、視聴中に購入できるようにした。総流通額(GMV)は過去1年間に125%増加したとワッサーマン氏は述べている。
ソーシャルメディアでの成長については、ソーシャル動画がコンテンツ配信戦略の重要な要素となっているため、インスタグラム、Snapchat、さらにはFacebookなどのプラットフォームが多くの視聴者を引き寄せているとワッサーマン氏は説明する。ワッサーマン氏によれば、Snapchatの1つの動画で13~24歳のユーザーから100万超のユニークビューを集めることが可能だという。
オーディエンスの成長に関して言えば、オーバータイムの「主な収入源」は2016年の立ち上げから変わらず、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームにまたがる配信コンテンツ戦略だとCROのリッチ・カラッチ氏は話す。「率直に言って、それはこれからも変わらないと思う。今後も我々の成長と発展に不可欠な要素であり続けるだろう。その大きな理由は、Z世代とミレニアル世代に関連することだからだ」。
デジタル動画スポーツパブリッシャーのオーバータイムは2019年3月にTikTokに参入。メインアカウントのフォロワー数は1660万人に達しており、これまでに投稿した2000以上の動画は合わせて10億超の「いいね」を獲得している。インスタグラムのフォロワー数は500万人だ。Snapchatでは、12シーズン目を迎えた番組オーバータイム・ナウ(Overtime Now)に300万人近くが登録している。
「我々の成功はある程度、Snapchatの成長あるいはGoogleの成功のおかげでもある。しかし同時に、TikTokでは自力でチャンスを生み出すことができている」。カラッチ氏によれば、オーバータイムはTikTokでスポーツブランド最大級のフォロワーをオーガニックに増やすことができているという。それでも、広告主からの収入を多様化するため、オーバータイムは2020年、コンテンツ重視のO&O(owned & operated)プロパティであるアプリを開発した。カラッチ氏は筋金入りのファンのためのアプリだと説明したが、ユーザー数には言及しなかった。
Z世代の「消費行動が彼らをこれらのプラットフォームに向かわせ、デジタルな日課をつくり出している。そのデジタルな日課こそが、我々が存在したいと思っている場所だ」とカラッチ氏は話す。すでにいくつものプラットフォームでオーバータイムをフォローしている熱心なファンにとって、アプリはより直接的にブランドとつながることができる最高の場所であり、熱心なファンがスマートフォンで定期的に訪れる場所になってほしいという期待が込められている。
もし3~4年前にアプリをリリースしていたら、これほどの成功はなかっただろうとカラッチ氏は述べている。日課につながるような関係は、多くのプロフィールやブランドが存在するプラットフォームで紹介されたばかりのときは、構築するのにもっと時間がかかる。しかし、立ち上げから4年が経過し、オーバータイムはソーシャルメディアでオーディエンスを見つけ出し、それをアプリのフォロワーに変えることができている。
Read more:
04 Z世代についてマーケターが知っておくべきこと
Z世代がソーシャルメディア、特にTikTok、インスタグラム、Snapchat、Twitterで多くの時間を費やしていることは、もはや驚くべきことではない。だからこそ、ソーシャルキャンペーンとインフルエンサーマーケティングは、この世代に商品やブランド、サービスを売り込むためのもっとも強力な方法のうちのふたつと言える。
ケノリー氏によると、Z世代の広告の受け止め方で注目すべき点は、彼らがディスプレイ広告に目を向けないように生まれついているところだという。「これまで(の世代の人々)とは違って、あまりに多くの広告やPRにさらされており、ウェブページをスクロールしているときには広告の存在を認識していない」という。
グループ・ナインのキール氏は、「Z世代のオーディエンスはこれらのプラットフォームで育ってきたので、ここでマーケティングの対象者になることに慣れている。プロダクトプレイスメントがあることを理解しているし、インスタグラムで物を買ったり、「開封動画」やライブ動画を見て買うことにも慣れている。彼らはより自然にこの世界に適応している」と話す。
広告主やマーケターにとって自然な流れは、広告スポットをできるだけシームレスに日常生活に溶け込ませることだ、とケノリー氏は付け加え、そのためにはインフルエンサーが有力な手段であると指摘する。また、数年前はマーケティング予算をプログラマティック広告に投入していたが、今後はインフルエンサーマーケティングが新しいプログラマティック広告になる可能性が高い、と話す。
しかし、インフルエンサーマーケティングで重要なのは信憑性だ。というのも、Z世代の人々は、ウェブサイト上の広告をすぐに見分けることができるのと同様に、インスタグラムのストーリー内のプロダクトプレイスメントを見抜いたり、YouTubeやTikTokでのスポンサー付き投稿が台本通りであることを見抜いたりできるからだ。インフルエンサーやコンテンツ制作者らは、自身のパーソナリティや好きなこと、情熱に基づいて巨大なフォロワーを構築しており、彼らの典型的なコンテンツに合わないブランドとの契約は、不誠実な印象を与えてしまう。
ケノリー氏は、インフルエンサーと共同で広告を制作する際に不自然さを避けるためには、彼らに主導権を与え、製品やブランドについて好きなように語ってもらうのが一番だという。「ブランドは、代弁者としてではなく、ブランドとしてのインフルエンサーにアプローチすることを始めなければならない。インフルエンサー自身がブランドなのだ。そして、これはパートナーシップだ」と彼らは語っている。
ソーシャルメディアでの自身の役割を知る
Z世代は、それぞれのソーシャルメディアプラットフォームを違う目的で利用しており、マーケターもそれに倣うべきだ。
- TikTokは、一過性のコンテンツが集まった非永続的なプラットフォームだ。投稿は制作者のページには残るが、「For You(おすすめ)」には定期的に新しいコンテンツが補充されるため、アプリ上で高度に管理されたコンテンツのポートフォリオを構築する人はほとんどいない、とシセロ氏はいう。
- Snapchatもまた、Z世代が多くの時間を費やす非永続的なコミュニケーションアプリだ。メッセージを送るだけでなく、「ディスカバー(Discover)」ページで文章や動画のコンテンツを見ることもある。シセロ氏は、「YouTubeに行ってクールな動画を見たり、TikTokに移動するかわりに、Snapchat視聴者のためにプレミアムパブリッシャーから提供される本当に素晴らしいコンテンツがある」と話す。
- シセロ氏によると、インスタグラムにはまだ関連性があり、そこに投稿されるコンテンツは非常に意図的で、洗練されたものになる傾向がある。したがって、これは一過性のプラットフォームではない。
- Twitterは世界の動向を感じ取っている、とシセロ氏はいう。ここは、Z世代がニュース速報を見に行ったり、文化的に重要な出来事を知ったりする場所だ。このプラットフォームがほかと異なるのは、ビジュアルなプラットフォームではないため、動画編集のスキルを持たないクリエイターでも、自分の考えを伝え、Twitterでフォロワーを増やすことができる点だ。
- Facebookは通常、Z世代には利用されない。シセロ氏によると、いくらかけん引力がある唯一の領域はFacebookグループだという。
これらのなかで一番新しいプラットフォームであるTikTokに参加することについて、まだ様子見をしているブランドは、「まだTikTokを使っていないとしたら、すでに遅れている」とケノリー氏は語る。同時に、流行のダンスや人気の曲ばかりを投稿することには限界があり、「cheugy(浅はか、見栄っ張りという意味の侮蔑語)」とも思われかねない。
TikTokでインパクトを与えるためには、TikTokのさまざまな「側面」(サステナビリティ、ファッション、料理など、TikTokのオーディエンスのなかで形成される関心事やライフスタイルのコミュニティ)に向けてコンテンツを作るようにブランドにはアドバイスする、と彼らはいう。
「隅から隅まで、すべてをターゲットにしなければならない。多くのブランドは、『我々が口コミで広がらないのはなぜか? いいねや視聴が増えないのはなぜか?』と疑問に思う。我々が心に感じ取ろうとしているものは、そのような虚栄心を満たす指標ではないと思う」とケノリー氏は語る。
Read more:
05 Z世代の心の内
ブリエ・デリア氏(20歳)は、ニューヨーク市にあるファッション工科大学の学生で、男性向けスポーツウェア企業ウォラコ(Wolaco)でソーシャルメディアマーケティングのインターンをしている。大学や仕事以外に、デリア氏は、過去8カ月かけてTikTokでパーソナルブランドを構築し、12万人以上のフォロワーを集めた結果、ブランドと契約して少し稼げるようになってきた。
以下に紹介する対談でデリア氏は、好みの読書スタイルや、さまざまなソーシャルメディアで自分のオンラインでの存在を伝える目的の違いなど、自身の日常生活においてパブリケーションが果たす役割について話している。
対談には、読みやすさを考慮し若干の編集を加えてある。
──ニュースを読みに行くプラットフォームは?
たぶんTwitter。Twitterはあまり利用しないが、特定のトレンド情報を知りたいときは、ハッシュタグや口コミで流行っている情報を見ることができるので、いつもそこに行く。(情報を)早く手に入れたいとき、たとえば、TikToker対ユーチューバーのボクシングマッチでは、すぐにその情報が得られると思ってTwitterにアクセスした。TikTokの私の「For You」に有名人の面白いゴシップ動画が出てくる。どれもフォローはしていないが、最近そういうものを見かけるようになった。
──ほかのソーシャルメディアはどのように利用する?
インスタグラムは、ファッションのインスピレーションを得るために利用する。だから、服のアイデアや、より具体的な美的感覚を求めて人々をフォローする。インスタグラムの方が確実にキュレートされていると思う。私はインスタグラムとPinterest(ピンタレスト)をほぼ一緒に使っている。明確に、現実的で影響を受けやすいものではなく、ソーシャルメディアの美しい側面だ。インスタグラムはTikTokほど信憑性があるとは思えない。以前はインスタグラムもそうだったと思うが、TikTokがその領域を確実に引き継いでいる。あのアプリでは誰もが影響を受けやすい。インスタグラムではあのリアルさはもう見られない。仕事で広告を出したりするとき以外、私は文字通りFacebookは使わない。
──特に気に入っているメディアサイトはあるか?
メールボックスには毎日「ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)」の電子メールが届き、ファッション業界で何が起こっているのかを知ることができる。私が現在働いている業界であり、これから進む業界でもあるので、よく知っておきたいからだ。ほかの雑誌やメディアのプラットフォームはどれも同じようなもので、飽和状態になっているとも思う。ビジネス・オブ・ファッションはとてもわかりやすくて、専門性も高い感じがして好きだ。専門的ではないものを求めているときは、ヴォーグ(Vogue)やリファイナリー29(Refinery29)に行く前に、どこかのソーシャルメディアサイトに行く。
ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は毎日読む。アドウィーク(Adweek)も同じだ。ゾー・レポート(Zoe Report)とWWDも見る。朝、ノートPCを開くと、カレンダーの予定とGmail、それからこうしたニュースサイトをチェックする。
──広告については? 自分にとって最善だと思う広告やマーケティング戦略のタイプは?
私にとってより大きなインパクトがあるのは、インフルエンサーが特定の製品を使ったり、特定のものを身につけたりしているのを見ることだ。有料広告でドレスがポップアップで出てくるのを見るよりいい。そういうものをクリックすることはあまりない。むしろ、フォローしている相手、私が信頼している誰かをクリックするし、彼女がそれについて話していたら、買ってしまうだろう。それは、より本物で現実に近いということにつながる。それが実在の人間で、「私はこれが好き。私のサイズはこれ。あなたもこれを買うといいわ」と言ってくれて、さらには割引コードがついていると、買い物をするためのより大きな動機付けになる。私が購入するのはそういった広告を見たときであって、インスタグラムのストーリーで「スワイプアップして買い物をする」というようなものではない。
──インフルエンサーがもっともインパクトを与えられるプラットフォームは?
間違いなくYouTube。ユーチューバーは、誰だかよく知っている人が多いので、長編のコンテンツが役立つと思う。フォローしているYouTubeのインフルエンサーについて話すと、彼らのことを知っているように感じる。彼らにとっては本当のことなので、私は間違いなく特定のユーチューバーに基づいて購入する。
──インフルエンサーとして、またソーシャルメディアでブランドを構築している人としての自身の役割は? 自分でTikTokに投稿するようになってから学んだことは?
投稿を開始したのは10月だったが、俗な言い方になるが、真剣に取り組んできた。 そのなかで、ブランドを構築しようとしていた。私には12万人以上(のフォロワー)がいる。初めのうちは毎日投稿していた。だから私は急激に成長できたのだと確信している。一貫性が鍵になるのだと思う。いまはインターンシップの最中だから、投稿は一日おきにしている。
私はとても幼い頃から自分で撮った動画をYouTubeに投稿していた。ただ気の向くままに取った動画だったが、人に見てもらうことが好きだったし、ファッションに関連したものや、面白いものについて話すのが大好きだった。でも、成長し、自分にもある程度のファンがいることがわかってくると、「自分でビジネスを始めて、ブランドを持ちたい」という気持ちが強くなってきた。人々に私の物を買ってもらったり、購読してもらったりしたいので、フォロワーを増やすことは役に立つ。私には顧客が必要だから。
──TikTokクリエイターファンド(Creator Fund)を利用しているか、あるいは自身のチャンネルで収益をあげているか?
クリエイターファンドは(3週間で)止めた。クリエイターファンドに参加すると、箱のなかに押し込められるが、ビューやコメントを集めているのはTikTokにプッシュされているからではない。TikTok以外にもお金を稼ぐことができる媒体はある。私はあるウェブサイトを運営していて、そこには特定のリンクが貼られていて、人々がそれをクリックすると、売上の何パーセントを得られる。Amazonも利用していて、誰かが私のAmazonページで買い物をすると、(取引額の)何パーセントかが得られる。さらにさまざまなブランドと契約し、そのブランドの製品について語るビデオを投稿すると企業が「一定の額」を支払ってくれたり、私に無料で商品を送ってくれたりするようなこともある。
現時点で、私は10ほど(のブランド)と契約しているが、それは自分で選択したいと思っている。毎日のようにメールボックスにオファーが届くが、そのなかから取捨選択する必要がある。自分が好きではないもの、意味のないもの、ブランドに合っていないもの、お金のためだけのものをフォロワーと共有したくはない。
[原文:Digiday Guide: Everything you need to know about Gen Z’s media consumption habits ]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:米井香織、藤原聡美/ガリレオ、編集:分島 翔平)