コロナの情報発信に石破氏が苦言 – 石破茂

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 石破 茂 です。
 
 新型コロナの感染者の数が激増し、医療逼迫・医療崩壊が懸念されることから、入院者を制限する方針が打ち出されました。

 ウイルスが感染力を強めれば、強毒性は一般的には弱まるはずなのですが、この点についての分析はほとんど行われず、相変らず感染者の増加だけが大きく報じられていることに大きな違和感を覚えます。酷暑となって換気の頻度が低下し、体力や免疫力も低下しているのですから、感染・発症する人が増えるのも理由のあることなのでしょう。

 昨年の二月以来、「相手が新種のウイルスである以上、感染者が増えるのはやむを得ない」「限られた医療資源はいかにすれば重症化し、死に至ることを防ぐかに集中すべき」「その間に新型ウイルスへの対処法を進化させ、これを普遍化し、免疫力を低下させず、ワクチンの普及によって集団免疫を獲得するまでの時間を稼ぐことが重要」「これを機に、医療体制の機動性や弾力性を確保し、公的インフラに相応しい法体系の整備は急務」と訴え続けてきたことに今も全く変わりはありません。党の公約に位置づけられるかどうかはわかりませんが、次期総選挙においてはこの点を強く訴えて信任を得たいものと思っております。

 重症者、感染者の数と年代は報じられますが、基礎疾患との関連報道がほとんどないのは不思議なことです。当然ながら個人情報保護に抵触しない形で、ある程度の時間差があっても、新型コロナを正確に予防するための情報は、もっと適切に発信されるべきものです。

 情報の発信に際して細心の注意をすべきことは今回の件でも明らかですが、それがどのように報ぜられ、国民にどのように受け止められるか、もう一度よく考えてみる必要があります。政府の広報部門は大手広告代理店の知恵を取り入れているのかもしれませんが、本質的な部分が等閑視されているように思います。

 新型コロナやオリンピックの報道に食傷気味となったのかどうかはわかりませんが、テレビ局の方によれば、安全保障問題に関する世の中の関心が高まりつつあるのだそうです。この問題に流行り廃りがあっていいとは全く思いませんが、聴く耳を持って頂けるのは有り難いことです。

 ともすれば「米中が激突する台湾有事が起こればどうなるか」というわかりやすいテーマになりがちですが、そのような事態がいきなり起こる蓋然性は低いと考えるべきです。習近平中国国家主席は、2014年のロシアのクリミア侵攻に強い関心を持ち、徹底的にこれを研究していると言われますが、正規軍が正面から攻撃してくるような戦いよりも、明々白々な武力攻撃に至らない手法によるハイブリッド戦の展開など、あらゆるケースを想定しているのでしょうし、日本の法制・装備・運用の弱点も知悉し尽くしていると見なければなりません。

 いわゆる「グレーゾーン事態」こそ生起する可能性が高いにもかかわらず、政府は「不断の検討を行う」としたまま、新たな決定がない現状は極めて深刻ですし、平和安全法制の議論において、これを政府・与党内で説得しきれなかった自分の責任は重いことを痛感しています。

 尖閣諸島付近でのグレーゾーン事態と台湾有事は、時間差をおいて一体のものとして起こることを想定しておかねばなりません。この点に関し、岩田清文元陸上幕僚長、織田邦男元空将の一連の指摘には教えられる点が多くあります。

 自民党青年局から、次の総裁選挙は党員・党友がすべて参加するフルスペック(すべてを満たす)の形にすべきだとの提案が執行部に対してなされるそうで、至極当然で真っ当なことと思います。ただ、報道によれば「都議選をはじめ各級選挙で敗北し、国民目線に立った党運営を求める声が上がったため」だそうですが、そのような党運営を行うのはいつの時期でも当然のことで、「選挙で敗北したから」「このままでは次期の選挙が厳しいから」などという自民党本位の理由を挙げること自体、あまり釈然とは致しません。自民党はあくまで常に国民のために存在しているのであって、議員のためにあるのではありません。

 日本の人口が12年連続して減少していることが総務省から発表になりました。コロナ禍はいずれ収束(「終息」ではない)を見るものですが、このままでは人口は今後さらに加速度的に減少していくのであって、長期的に見ればこちらの方がより恐ろしいと言うべきです。この点、ハンガリーはありとあらゆる政策を総動員して少子化に歯止めがかかりつつあるようです。週末によく勉強してみたいと思います。

 本日の鳥取市は39・2度の日本最高気温となったようですが、先日用務で帰郷した際の列車の窓から見えた海水浴場には、人影が全くなくてとても寂しい思いが致しました。今の子供たちや若い人たちは、あの楽しい夏の海の思い出を作ることが出来ないのだなと思うと、とても気の毒に思うとともに、来年の夏こそコロナ禍の収束を達成しなくてはならないと痛感します。

 酷暑の日々、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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