メモ
大手ECサイトを運営するAmazonは世界でも有数の大企業であり、アメリカでは労働者の169人に1人がAmazonの従業員です。そんな中、労働関連法を執行する独立行政機関のアメリカ労働関係委員会(NLRB)が、「Amazonは従業員による労働組合の設立を非合法な方法で妨害している」と発表しました。
Amazon Unlawfully Confiscated Union Literature, NLRB Finds
https://www.vice.com/en/article/bvz3kv/amazon-unlawfully-confiscated-union-literature-nlrb-finds
Amazonが労働者の団結を大きな懸念事項とみていることは以前から知られており、契約労働者のSNSを監視してストライキの兆候を調べたり、「反労働組合的なトレーニング動画」を従業員に送ったり、労働組合つぶしのためのスパイを現場に送ったりしていることが報じられてきました。
Amazonは労働者と労働組合を監視するために「組合つぶし業者」のスパイを現場に送っている – GIGAZINE
by Scott Lewis
また、アメリカ・アラバマ州ベッセマーの「BHM1」というAmazon倉庫では、2021年3月に労働者が小売業界の労働組合である小売・卸売・百貨店連合(RWDSU)に参加するかどうかを決める投票が行われました。この際にもAmazonは、組合参加に「反対」するよう促すリーフレットを労働者に配布したり、本来は「3月29日」である投票の締め切り日を「3月1日」と誤認させるテキストメッセージを送信したりと、あの手この手で妨害工作を行っていたとのこと。
結果的に、ベッセマーの倉庫で行われた投票は反対多数で労働組合結成には至りませんでした。アメリカのニュースメディア・CNBCによると、BHM1の従業員約5800人に対して投票者は3215人であり、そのうち賛成は738票、反対は1798票だったそうです。
Amazonの労働組合結成を問う投票が「Amazonの大勝」で決着、Amazon初の労組結成は失敗 – GIGAZINE
by Ben Mortimer
ところがRWDSUはこの結果を不服として、NLRBに異議を申し立てました。そして8月3日には、NLRBの関係者が「投票の公平性がAmazonによって損なわれた」として再投票を勧告したことが報じられています。
アマゾンのアラバマ倉庫の労組結成、当局者が再投票を勧告 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/amazon-com-unions-idJPKBN2F40DV
さらにNLRBは8月3日、ニューヨークのスタテンアイランドにあるフルフィルメントセンターで、「Amazonが非合法な方法で労働組合設立に向けた活動を妨害した」と報告しています。
Amazonの妨害を受けたのは、労働組合設立に携わるコナー・スペンス氏という25歳のAmazon従業員でした。NLRBの調査によると、スペンス氏は5月16日にフルフィルメントセンターの休憩室で、労働組合に関するリーフレットやAmazonによる労働組合設立の妨害活動を記した文書を配布していたとのこと。ところが、そこにAmazonの警備員が現れて、スペンス氏にはリーフレットなどを配布する権利がないと伝えたそうです。さらに警備員は、スペンス氏からリーフレットなどを没収し、そのまま返還しなかったと報じられています。
スペンス氏は海外メディアのMotherboardに対し、「Amazonは明らかに反組合です。労働者の団結を阻止しようとする時には、彼らは一線を越えます。残念ながらアメリカの労働法はそれほど強力ではありませんが、Amazonが自らのイメージや歴史に泥を塗っていることを気にかけてくれることを願っています」と述べました。
また、5月24日には同じフルフィルメントセンターの労働者らが、倉庫付近の歩道で組合設立を目指したバーベキューを行いました。この際にも警備員が近くの駐車場から現れて主催者の写真を撮影し、組合設立に向けた活動を監視しているとの印象を与えたとのこと。
アメリカの労働関連法では、雇用主が組合組織の監視または監視しているとの印象を与えることを含め、組合活動に関与する労働者に干渉することは違法とされています。そのため、スペンス氏のリーフレット配布を止めさせたことやバーベキューの監視は、いずれも労働関連法に違反しているとNLRBは指摘。スペンス氏の一件については今後、正式な訴訟を行う予定だそうです。
Amazonは、スタテンアイランドの倉庫における一連の行為について、Motherboardのコメント要請には応じませんでした。一方でベッセマーの倉庫における選挙については、「さまざまな声が国を挙げて議論されている時期において、当社の従業員は意見を述べる機会を得ました。そして最終的に、彼らは上司や会社との直接的なつながりを求める方に圧倒的な票を投じました。彼らの声は何よりも聞かれるべきであり、私たちは結果を保証するためにアピールするつもりです」と述べました。
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