[再]自慢をたのしく言いたいし聞きたい

デイリーポータルZ

思う存分自慢するには。

「自慢」を日々言えずにいる。

喋っていて「いまこの話題で自慢したい」と思っても「引かれたらいやだ」が余裕で勝ってしまうのだ。

気を使わず自慢を発散できたらどんなにいいだろう。でも聞く人に引かれるのもいやだ。

何か言う方にも、聞く方にもやさしい方法はないのか?実験してみました。

「自慢」のいやなところを洗い出す

たのしく自慢するにはどうしらいいか考えていく。まずは自慢のいやなところを洗い出すことにした。

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友人のひにしあいさんと郡司さんに協力してもらう。「忙しくて寝てない日とか言いたい」「わかる!けど言われるとウザいんですよね〜」と2人もなかなか言えないらしい。

「でもいやじゃない自慢もあるかも?」という話から、つらい自慢と別にいやじゃない自慢をくらべた。

そこで見つけた「つらい自慢」の共通点は

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という3つでまとまった。急にへんな言い方で自慢され、こっちの話は聞いてもらえなかった時に我々はイライラしてしまうらしい。 
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「たしかに違う人が話してたのに、急に年収の話してきた人いて変な空気になったことある」
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「そういえば自慢話って急に言われるな?心の準備さえできてればいいのか?」「誰かが一方的にずっとしゃべってるといやなのか」「平等だ、平等にしたらいい」と改善案がでた。

ルールにそって自慢するとどうなるか

この「いやな部分」を消しつつ会話できれば、もしかして自慢も楽しいのではないか。ルールを決めて喋ってみることにした。

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ルールはこれだけだ。とにかく「自慢の平等」をおもんじ、聞く側の心の準備ができるルール設定にした。言い方は各々調整してもらう。

  1周目:「知り合いがすごい」自慢

いよいよ自慢の会、スタートである。

ジャンルは「知り合いがすごい」自慢にした。すでに恥ずかしくて言いたくない。

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「平等」がテーマなので順番もじゃんけんで決める。まずは郡司さんだ。
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郡司「あの…本当に自分の話でもないのに恐縮なんですけど、いとこが……」めちゃくちゃ恐縮している。聞いてるこっちも恥ずかしい。なんだ。
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郡司「あのいとこが……フリスビーのアルティメット?っていう競技の日本代表なんです。夫妻で」
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「ええええめちゃくちゃすごいじゃん!!」2人して驚き、めちゃくちゃ質問ぜめにする。へぇへぇいいながら聞いた。
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「え!!これやっぱすごいですよね!!うれしい!!」と喜ぶ郡司さん。いとこを誇らしく思っているが、自分の話ではないし、言うタイミングがないしで誰にも言っていなかったらしい。発散の瞬間である。

ふつうなら「へぇ〜」と言われる可能性もある話だ。ただこのあと自分も自慢をすることが決まっている。

ならば気合いを入れて聞かなきゃという気持ちになり、その関心が自慢していてすごく気分がよいらしい。

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次はひにしさん。「あの〜自分の話じゃなくて悪いんだけど、いとこが…」またいとこの話だ。そして恐縮している。
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「いとこが高校時代、野球部のピッチャーとキャッチャーで。甲子園の山梨大会の決勝までいって『いとこでバッテリーなんてドラマみたいだ』って地元の新聞にたくさん…のりました……」
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「あっすごいけど甲子園出場ではないんだ」絶妙な自慢に笑いが止まらない。「そう!でも当時は親族も地元も大喜びで、すごい騒ぎだった」
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「でも大人になって言うほどではないと胸にしまってきた」と気分よくいとこ自慢ができた喜びを噛みしめている。

聞く話がほぼ新情報なので、もはや聞いている方もすごくおもしろい。

「もっと自慢を聞きたい……」という初めての感情まで出てきた。

2巡目:「エンタメや好きなものに関する自慢」

おもしろいのでどんどんやる。次は日常でかなり諦めてきた「エンタメに関する自慢」である。

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順番は私からだ。「あのこれは本当に本当にダサくて、でもここ2年ぐらいずっと言いたかったんですけど、King Gnuってバンドがいるじゃないですか」「もう保険がすごい」
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「私、あのバンドが”売れる前”に、ライブを”2回も”見に行きまし…………た!」
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「ヒィーーーーーーーー」あまりのエグみに2人とも倒れ込んでしまった。「いやすごい、売れる前から知ってるのはすごいけど本当にどうでもいい」
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「これあれかKing Gnuの話が出るたびに悩んで言えなかったのか」「そう!!2年!!いまめっちゃスッキリした!!」「そう思うと余計だせえ〜〜〜〜〜」

誉められるはずが罵倒されたが、我慢していた自慢をいうことはこんなにスッとするのか!というぐらい気分がいい。言えた〜!

そしてこの話は聞く方にとっては割とどうでもいいので「言う人や場面をかなり選ぶ自慢」ということがまじで体でわかった。

今まで控えていてよかった。この会は話題のオーディションとしての側面もあるのだ。

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エンタメ部門、次はひにしさん。急に手をあげ始め「実はいいとも!の素人コーナーの出演面接を受けたことがあって」
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「耳を中に入れられて、好きなタイミングでピョコっと出せる…ってやつで……受からなかったけど…」
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あまりにも急な情報量にしばらく全員笑って喋れなくなってしまった。しかも「いいともオーディション経験」と「耳の得意技」というダブルの自慢が入っている。「それはダブルマウントだ」として注意勧告をうける。

単純に「すごい自慢」でも驚けるが、謎の自慢を聞いて「ヒィーー」という。この感情も異様におもしろい。

怖がりたくてホラー映画をみるアレと同じで、もっと心をザラつかせたいから、自慢話を聞きたい!という謎のハイにずっと包まれる。

3巡目:「小学校や中学校の頃の自慢」

言う方も聞く方もかなり慣れてきた。最後は昔の栄光の話で終わろう。

これも大人になればなるほど言えなくなる自慢だ。最初はひにしさん。すぐ思いついたという。

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「えー、こう見えて私はピアノが弾けるんですけど。なので、私は、合唱コンクールで””歌ったことがない””です」
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「ヒィィィうるせえええ〜〜〜〜」まじで体がすくむ。ただもうこの感覚が欲しくて話を聞いているのだ。
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「あと今の言い方めちゃくちゃうるさかった」と自慢する方も要点がわかってきている。たしかに抑揚が上手すぎて、落語のオチのような雰囲気すらあった。

この話も、飲み会で急に言うと「うるさ!」となるだろう。

しかし「自慢の平等」の下話せば、シンプルだし、でも言い方がうるさくて面白いという芸術点の高い最高の話になるのだ。

ただうるさいだけなのに「私ももっとうざく自慢したい」という謎のリスペクトまで生まれた。

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自慢の会、最後は郡司さんだ。「あのー…実は……小学校二年生の時はモテてて、えーと一年で三人に告白されました」
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「小学校二年生」ぐらいで我々は沈没してしまった。3人に告白、たしかにほとんどの人が経験したことがないすごい話だ。しかし出だしがあまりにも昔だった。おもしろすぎる。
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なつかしい感じと、よくわからない感情で泣けてくる。ちなみにひにしさんと郡司さんは今日初対面であった。「なんで初めて会うのにこんなに泣けておもしろいのか」関係性がなくても楽しめることがわかった。

ルールを守ればたのしい「自慢」

自慢をいう人はスッキリし、聞く方は単純に驚いたり、悲鳴をあげたりできる。

自慢は条件さえ整えばおもしろい。「人の自慢が楽しみ」という新しい感覚であった。

ただ、言う前に「全員その自慢をしたいか」とジャンルを決めることや、本当に傷ついたりしない話題で進める、という注意は必要だ。

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「今年経験したあらゆる会合の中でもダントツで面白かった」「声が枯れた」と余韻がすごい。

ほんとうは日常、人を気にせずどんどん好きなことをしゃべりたい。とはいえ「自慢をすぐ言えるほどのギアを持ってないぞ」という方はぜひこの会で「自慢慣れ」してみてください。自慢はすぐ慣れるしおもしろかったです。

いろんな人の些細な自慢を聞きたい

2人は長い友達だが、それでも全部しらないエピソードだった。これ会社とかでやったらどうなるのか?家族でも知らないことがあるかもしれない。とか、そういう話のとっかかりとしても面白い会でした。

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後半は本当にこういう写真ばかり残っていた。謎のおもしろ体験でした。

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