平坂さんは生き物を捕まえるために離島や海外に行ってます。
記事ではいきなり海外から始まりますが、そこまでどうやって行っているのか、なにを持っていっているのか、普段はなにを食べているのかなど記事には書いてない部分を聞きました。
短期集中連載の第4回目です。
アメリカの釣りはライセンスが必要
林:
海外にも禁漁期間や地区ってありますか?
平坂:
結構うるさいです。とくにアメリカはめちゃくちゃうるさいです。「この魚は何月何日から何月何日までの間に、この川のあの橋とこの橋の間でしか捕っちゃダメ」とかすっごく細かいです。
だからアメリカ、カナダに関してはぶっつけ本番で行くと痛い目にあうので、まず最初にアウトドア用品の店とかに行って、その時期のマップを買うんです。
あと、ライセンスも取らなきゃいけないんです。
淡水で魚を採る際のライセンスと、海で魚を採るためのライセンスと、鹿とか動物を捕まえるためのライセンスがあるので、それぞれ選んで。
林:
ライセンスがないけど、釣りをしてはいけない?
平坂:
国によりますけど、アメリカはそうですね。バリバリそうですね。
自分が捕りたい魚について、その冊子かパンフレットみたいなものをもらって、その店員さんにこれが捕りたいんだけど、そのこの辺の地域は今の時期だと問題ないか?という確認したりとか。下調べの日が1日必要ですね。
林:
地元に行って聞いたほうが確実ですね。
平坂:
確かにそうですね。ハンティングとかを仕切っている省庁があって、そこのページに行くと、大体のこと書いてあるんですよ。でもどローカルの話になってくると詳細はわからないんですよ。だから現地に行ってから、って感じですね。
林:
やりとりは全部英語でやってるんですね。
平坂:
そうですね。って言っても僕、別に英語が得意ではないので「なんとかフィッシュOK?」「ヒア?」「ノー?」と単語をひたすら言うというごり押しでどうにかしてますね。
むこうもわざわざ外国から来た人を邪険にはしないです。案外。
逆に僕らが日本にいて、アメリカからわざわざすごいマイナーな魚を探しに来たんだけどっていう人きたら、できるだけ手伝いたくなるじゃないですか。
そういう感じなんじゃないかな。
東南アジアとかにいくと漁業権みたいなものへの意識は薄かったりしますすけど。ダイナマイトで漁とかしてるぐらいだから。
ただ私有地ばっかりなんで、それはそれで勝手に釣りしてると鉄砲持ったおっさんがでてきたりします。
この辺大丈夫なの?って地元の方に聞いて、地主さんにちょっと釣りしたいんだけどってチップを渡して、とか。
林:
釣りそのものより、その前後で緊張するシーン多いですね
平坂:
多いですね。だから僕海外いってもわざわざどぶ川で釣りしたりしてますけど、あれは。
トラブルが少ないっていう良さもあるんですよ。
釣りして良いかどうかおまわりさんに聞けばすぐわかるし。人通りが多いからあんまり悪さもされないというか。
林:
すごい知恵だ。
捕れるまで帰れない、はやめた
林:
帰る日は決めてるんですか?
平坂:
決めてますね。以前には決めてなかった時期、捕れるまで帰らない!とかやってた時期もあったんですけど。何回もそれやってるうちに結局、早く帰りたくなる(笑)
とれなくても、仕切り直せばいいじゃんって思うようになって。たぶん心が年をとったんだと思います。
10日頑張ってダメだったら、帰ろうよって。
むしろ最初に何日かを決めて、その日から精いっぱい頑張った方が良いよって心が叫び始めてきたんです最近。
ここ5年ぐらいは。そっちのほうが安くあがったりしますし。
林:
1回の日程で何日ぐらい頑張るんですか
平坂:
1週間ぐらいで心が疲れてくるのでフルで活動できる日を1週間とるというのが基準。2週間以上滞在する場合もありますけど。
あと締切があるじゃないですか。仕事の。向こうで締切に追われ始めると、結局何もできないので。
たいてい1週間ごとになにかしらの締め切りが来るので、1週間を基準にしてますよ。
たとえば10日いたところで、締め切りラッシュがくるからラストの2日間は動けない。宿で原稿書いてるわけなので。それだったら1週間滞在とあまり変わらないじゃないですか。
仕事との兼ね合いを考えながら、1週間から10日が基準ですね。
林:
飛行機の中で原稿書いたりしてるんですか?
平坂:
めちゃめちゃしますね。飛行機のなかがいちばん原稿はかどるんですよ。新幹線のなかとか。
だいたい海外行くぞってなると、準備とかでいろいろいそがしくなるじゃないですか。
それで原稿が押すんです。それを羽田から向かう国際線の中だけでがーって書いて、目的地へ到着するまでにフリーな状態になって。取材1週間でまたどんどん溜まって帰路便でがーっと書くという。
トランジット長いと助かるというのはそれもあるんですよ。国際空港ってwifi飛んでるから入稿できるし。
グーグルマップで魚がいる場所がわかる
林:
ガイドは頼むんでしょうか。
平坂:
場合によってはつけますね。大きい魚を捕ってると読者の方々から「すごい!」って言われるんですけど、実はあれ全然すごくなくて。大きい魚って世界中の釣り人が釣りたいわけですよ。つまり、大きい魚は金になるのでどれもこれもフィッシングガイドが存在するんです。
実際タイで大きいエイを釣る記事とかは現地でガイドを雇っています。
平坂:
そうするのが、ぶっちゃけコスパはいいです。確実に捕れるし、ガイドさんが現場に連れて行ってくれるんで。。ただそれって、本当にただの観光で終わっちゃうので。
お金払って大きい魚捕らせてもらいました、で終わっちゃって、取材にならないというか、勉強にならないので、なるべく雇わないですね。
林:
ガイドって地元で依頼するんですか。
平坂:
日本にいながら手配できますね。最近はインターネットに窓口があるので、そこでから連絡するとガイド本人じゃなくて英語が堪能な方がいらっしゃって、その人に相談すると1日いくらですよとか、宿まだ取ってないから、こっちの近くのいい宿を手配したりとかいろいろやってくれたりもするんですよ。
で、現地に行くと、その窓口の人とは別のゴリゴリのローカルの漁師さんがいたりする。
もちろん、魚がいる場所はその方がよく知っている。
金で釣果を変えるので楽チンではあるんですが、なるべく最初は使いたくないですね。まずは自力で挑みたい。自力で行って玉砕することも多いですけど。
とりあえず行ってみて。なんとなくグーグルマップを見てこのへんに魚いるんじゃないかなみたいなところに行ってみて。
林:
ちょっ、グーグルマップで魚いる場所わかるんですか?
平坂:
わかります。地形で。ミシシッピ川に住んでるとか、なんとか州にいるとか、なんとか島にいるとかまではおおよそわかれば。
具体的なポイントとなると、分かりやすい例だと滝の下とか。
滝って落下してきた水で掻き回されて酸素濃度が高くなるので小さい魚があつまる。で、それを食いに大きい魚があつまる。
あと人工的に作られたダムの下とかもそうだし。川の途中が行き止まりになってると、魚がみんなそこにたまっちゃう。
あと海だったら岬の先端。潮の流れがいいので、魚があつまるんですよ。
ただ、「ここだ!」ってグーグルマップを見て行くと、どう頑張っても水面に近づけないとか。行ったら私有地で、立ち入ったら殺すみたいな看板が立ってるとか。
あるいはグーグルマップ上では完璧だった。でもなぜか釣れない。
なんでだろうって現地の人に聞いたら、「ここはしょっちゅうダイナマイトで魚とってるから、もう大きい魚いない」とか。
それぐらい打ちのめされて、もうどうしても自分の力じゃ無理だってなったらガイドを雇う。それが理想。
林:
ダイナマイトの漁って一般的なんですか?
平坂:
開発途上国だとよくありますね。ダイナマイト使っちゃうと本当に根こそぎ獲っちゃうことになるので。市場を覗いてみても、あまりに品揃えが貧相だと「ここダイナマイトやってんだろな」って分かります。
林:
わかる?
平坂:
はい、雑魚しか並んでないんですよ。
こんなのまで食べる?っていうような、日本だったらまず漁師さんが海に戻すような魚まですっごいキレイな海の前に並んでたりすると。「あ、やってんなー!」って。
本来ならこんなに貧しい海ではないはずなのに、こんな小魚をね、たくさんザルに集めて売ってたりすると…。「コレはなんか不自然なことやってるな」っていうのを感じますね。