買ったサンドイッチの具が見た目より少なくて驚くことがあるが、あれは一部で「ハリボテサンドイッチ」と呼ばれていたりする。
落胆と脱力をうむハリボテサンドイッチ。しかし、もし具の見せかたが逆だったらどうだろう? 断面はショボいけど、中はボリューミー。
名づけて、”逆ハリボテサンドイッチ”。おもしろそうなので作ってみよう。
> 個人サイト 大うし展
まずは元ネタをたしかめてみる
“逆”のまえに、元ネタのハリボテサンドイッチを確かめておきたい。
当サイトでも、松本圭司さんが”悲惨ドイッチ”と称して「コンビニサンドイッチ解体新書」という記事にくわしく書いてくれている。参考にしつつ作っていこう。
用意した具材は、シンプルにハムとたまご。
こまかく切ったゆでたまごとマヨネーズをまぜ、ハムを細めに切ったら、それっぽさが出るように対角線上に置いていく……と。
自分で食べるのに、作っていて罪悪感を感じるほどのバランスの悪さ。後半なんて固形物ゼロだ。おりたたんでボリュームを出そうとしているハムがにくたらしい。
これをサンドし、ラップで包んで、半分に切ってみたのがこちら。
200円くらいで売れそうな、正統派のハリボテができてしまった。
ハムなんて本当は1枚分なのに、数枚は入っていそう。たまごたっぷりに見えて、奥はペンペン草もはえない不毛の「かさね食パン」地帯だ。
もし初めてのデートで彼女が「お弁当つくってきたよ♪」とこれを出してきたら、その夜は静かにYahoo!知恵袋で「初デート サンドイッチ 意図」と検索するだろう。
よしっ、めざすはこの逆。断面はショボくて中身は豪華なサンドイッチだ!
これが、逆ハリボテサンドイッチだ!
いきなりだが、まずは完成した逆ハリボテサンドイッチを見てほしい。
我ながら、なかなか心をザワつかせる断面がつくれた気がする。
左から、ハムたまごチーズ、サラダチキン&キャロットラペ、ハムカツ&キャベツという具材だが、裸眼では特定できない人も多いはず。
江戸のコンビニで大塩平八郎がこれを見たら、民衆とともに立ち上がるだろう。いわゆる「大塩平八郎のパン」だ(え?)。もし現代のコンビニにこれが置いてあっても、誰も買わないので逆に被害ゼロだと思われる。
こうやって作りました
それでは作りかたを説明していこう。逆ハリボテサンドイッチを作るにあたって、心がけたのは以下の3点。
①具が見える面積はなるべく小さく
②けど、全種類の具が見えるように
③パンの耳側からはなるべく具を見せない
じつは②が重要で、これをやることで「ちゃんとしてる風でダメなサンドイッチ」感がでる気がする。そんなわけで、このように具を配置してみた。
作っていて気づいたのだが、これものすごく楽しい。断面を考えながら具を配置していく作業がパズルゲーム的なのだ。
ハムカツは最初、それこそパズルのように細かく切って配置を考えていたが、ピーンとひらめいて今の二分割に落ち着いた。いい配置が思いうかんだ瞬間の気持ちよさはクセになりそうだ。
そして、逆ハリボテだとわかっていても、パンをめくって具がたっぷりだと嬉しくてつい笑ってしまう。人間は単純だ。
食いしん坊な友人に食べてもらった
こうなると誰かに食べてほしい。
そこで、友人に「ちょっとサンドイッチを食べてほしいんだけど」と連絡をしてみると「食べればいいの? ならいつでもOKに決まってるでしょ!」との返事。飲み込みが速いとはまさにこのこと。
翌日、サンドイッチを作りなおして友人宅に向かった。
「あれ? べつの記事に飛んだ?」と思ったかもしれないが、こちらがベネズエラ出身の友人・ホセくんだ。ただの大食いではなく、3ヶ国語をあやつり超大手企業につとめている。
彼とは前の会社で知り合い、すぐ意気投合して二人で飲みにいく仲になった。数年後には婚姻届の証人をたのまれるなど、ディープで遠慮のない付き合いをさせてもらっている。
今日みたいな変わったお願いごとにはうってつけだ。さっそくサンドイッチを半分に切り、渡してみる。
「え、めっちゃ少ないんだけど……」
断面を見るなり、この表情。一瞬でBGMがシリアスに変わった気がする。だがこちらは「まぁ食べてみてくださいよ」とあくまでクールをよそおう。
「場合によっては国と国の問題になるぞ?」と言いながらかぶりつくホセ。さぁ、どうなるか……?
隠れていた具の存在に気づき、やさしい瞳をとりもどしたベネズエラの大食漢。シティハンターなら『GET WILD』のイントロが流れ出すだろう。
ここで種あかし。
「そういうことか~! なるほど!」
ハリボテサンドイッチの存在は知っていたようで、それの逆を作ってみたんだよねと説明したら大笑いしてくれた。
彼いわく、コンビニのサンドイッチは耳がなくてボリュームが足りないから、けっきょく2パック食べたくなって良くないとのこと。知らんがな。
そもそもサンドイッチって楽しいかも
冗談みたいな「逆ハリボテサンドイッチ」だが、作ってみると想像以上に楽しめた。トマトなら? フルーツサンドなら? とすでに他の具が気になっている。
作ったなら、家族や友人に食べてもらうのがやっぱり良い。相手に切ってもらうのも仕掛け人としては楽しそうだ。