三浦透子と丸山監督が語る東京 – 羽柴観子

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東京を舞台に、自らの存在意義や居場所、愛情を求めてさまよう13人の若者の姿をスタイリッシュな映像と共に描いた青春群像劇、『スパゲティコード・ラブ』が11月26日より劇場公開となる。
「スパゲティコード」とは、第三者から見て解読が困難なほど複雑化したプログラムコードのことを、皿に盛られて絡み合うスパゲティに例えた俗語。13人の登場人物は一見ばらばらで何の関連性もないように見えるが、物語が進むにつれそれぞれの行動が複雑に連鎖していく。

総務省の発表によると、2020年は新型コロナウイルスの影響下で東京都への転入超過が大幅に縮小。コロナ禍で生活様式も大きく変化し、もはや若者にとって「東京は夢を叶える場所」ではなくなりつつあるのだろうか。本作が長編初監督作品となる丸山健志監督と、桜庭心を演じた三浦透子さんが思う「東京」について語ってもらった。(撮影:Inowye Yuta)

―はじめに丸山監督に伺いたいのですが、東京を舞台とした青春群像劇、映画『スパゲティコード・ラブ』を撮るに至った経緯を教えてください。

丸山:今年で映像ディレクターになってから15年が経ちますが、もともとプロになったきっかけというのが2004年に監督・脚本を務めた自主映画『エスカルゴ』がぴあフィルムフェスティバルに入賞したことでした。ただ、プロになってからはミュージックビデオやCMなどといったコンテンツを手掛ける機会の方が多くて。そろそろ映画を撮りたいなと思ったのがきっかけですね。

―本作は「東京」が舞台の映画です。丸山監督は石川県金沢市出身、三浦さんは北海道札幌市出身ですが、それぞれが抱く「東京」のイメージはどんなものでしょうか。

丸山:東京といえば「人」ではないでしょうか。大好きな人も苦手な人もいて、様々なジャンルの人がいる、というイメージですね。

三浦:監督はおいくつのときに東京へ出てこられたんですか?

丸山:18とか19歳のときですね。

三浦:私は中学生のときに東京へ出てきたんですよ。だから、人生の年数でいえば「東京の人」でもあるんですが、育った場所という意識はあまりありません。東京に来て思ったのはやはり人が多いということ。
だからこそ逆に、一人になれる場所とか時間を見つけることがラクというか。それは良いところだと思います。出身が札幌市なのでそれほど田舎ではないのですが、住んでいる場所の周りはみんな知っている人ばかりで。距離感が東京と全然違うんですよね。そういう意味では、人が多い割には東京で感じられる自由というものがある気がします。

―かつて東京には何らかの夢を持って上京してくる地方出身者も多かったのではないかと思いますが、昔と比べて変化を感じますか?

丸山:当時、例えば15年前の方が東京じゃなければできないことがたくさんあった気がしますね。今よりももっと「夢を叶える場所」だったというか。しかし、今は東京以外の場所でも夢を叶えられるようになってきたように思います。

三浦:コロナ禍、オンラインでできる仕事が増えましたよね。それにより、東京じゃなければできないと思っていた仕事が実はそうではなかったということに人々が気づき始めているのではないでしょうか。そうなってくると、逆に東京で生活する意味や東京の良さについてもっと考えるようになるんじゃないのかなと思います。

丸山:今は転換点なのかもしれませんね。東京が今後どういう風になっていくのか楽しみです。

三浦:これまでは「東京に行かなければできないから」という思いの人が集まる場所だったけど、「地方でもできるけど東京に行く」という人が集まってくるようになるのかもしれません。そうなると、東京のあり方も変わりそうですよね。とても強い意志で上京する人が集まったら、新しい何かが生まれるんじゃないのかな。

―三浦さん演じる桜庭心は、シンガーソングライターになることを諦めてしまうというキャラクターです。現在、第一線で活躍されているお二人ですが、これまでの活動のなかで、壁にぶつかったとき、どうやって乗り越えてこられたのでしょうか。

三浦:私の場合、壁にぶつかったとしても「辞めるか、それとも続けるか」という選択肢を持たず、「続けることが前提」で一つ一つの問題を解決してきました。だからこそ、今こうして活動を続けられているのかもしれません。

丸山:全く同じ意見ですね。辞めようとか、続けていこうとかほとんど考えたことがないです。あまり目標というのを作らずに、とりあえず目の前のことを一生懸命やってきました。
ただ、僕が今まで東京で出会った友だちや仲間をみていると、みんな変わっていくんですよね。何か元々やろうとしていたことや目標がうまくいかなかったり、それ自体が変わったりしたから辞めてしまったり。それが普通なのかもしれないなとは思いますね。続けていくことの方が難しいのかもしれない。

三浦:目の前のことで悩んだり迷ったりしたときに、これだけ続けられていることには何か意味があるんだろうな、ということを気持ちの支えにしていました。

丸山:求められるって良いですよね。役にぴったりだってオファーがきて。

三浦:そうですね。でも、だからといって求められるようにばかりしていると、自分がどこにいるのか分からなくなる。こういう仕事だからこそ、ちゃんと自分の核となるようなものを意識して持っておかないといけないなと思います。

―『スパゲティコード・ラブ』には個性豊かで境遇もばらばらな13人のキャラクターが出てきます。そのなかで特に共感できるキャラクターはいますか?

丸山:群像劇であって、誰かにフォーカスする構成ではないので基本的には全てのキャラクターに対してフラットな感情を持っていました。

三浦:わたしは心ちゃんを演じているので、彼女の悩みや葛藤について考えていたし、一番シンパシーを感じていました。ただ、この作品を客観的に観ていると、13人それぞれのストーリーは違っていても、根底に持っている悩みは違わないというか。それぞれのストーリーがリンクしてきたときにそう感じました。

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