「タブレット探してるの? ならiPad Airでいいんじゃない?」とつい言っちゃいそう。
新しいiPad Airは、MacBook Air、MacBook Pro、iPad Proと同じApple M1が入って処理性能が格段に向上しました。新色のブルーや5G対応のオプションも加わったのに、価格は599ドルの据え置きで(日本は前機種より5,000円高い7万4800円)、数あるiPadファミリー、他社製品のなかでも競争力の高い製品となっています。
iPad Air(2022年モデル)
”ベストなミッドレンジタブレット”の位置を不動にしたAppleの新製品。処理性能はデスクトップ並み。5G対応のオプションが加わって、カメラも良くなったと好評です。
これは何?:Appleの中価格帯タブレット
長所:パワフルな処理性能/モダンなデザイン/上質なディスプレイとスピーカー/長いバッテリー持ち/5G対応
短所:最安で買えるのが64GBモデルで、128GBモデルがないこと/生体認証がFace IDじゃなくてTouch IDなこと/周辺機器が割高/ヘッドホンジャックがない
価格:64GBで599ドル (日本は7万4800円)から
128GBモデルがない
第5世代iPad AirはAシリーズからM1にプロセッサが入れ替わってます。なのに価格はほぼ横ばいで、iPad ProやSamsung(サムスン)のハイエンド製品よりずっと求めやすいのが特長です。
モデル | 価格 |
---|---|
64GB Wi-Fi | 7万4800円 |
64GB Wi-Fi+セルラー | 9万2800円 |
256GB Wi-Fi | 9万2800円 |
256GB Wi-Fi+セルラー | 11万800円 |
もっとも虫眼鏡でよく見ると、最安64GBの次は256GBモデルで、中間の128GBがなかったりしますけど、1万8000円上乗せして256GBモデルを選んでも、まだiPad Proより1万円ちょっと安い感じです(Proは256GB Wi-Fiモデルが10万6800円、256GB Wi-Fi+セルラーモデルが12万4800円)。
11インチiPad Proは逆に128GBモデル(9万4800円)のオプションもありますので、256GBも要らない人はそれを選べば、iPad Air 256GBモデルに2,000円足すだけでProが買える勘定。
一方サムスンと比べると、iPad Airの価格は標準のGalaxy Tab S8並みですけど、Galaxyはストレージは2倍あるので、比べるときには注意が必要です。ちなみにGalaxy Tab S8+は128GBモデルで899ドル(約10万円)からとなってます。
ブルー好きにうれしい新色
自分は青が好きなので、ゴージャスなメタリックブルーの新色はかなり好き。光の加減で、これまで見たことのないニュアンスが出るんですよね。自分はこれ一択だけど、好みじゃない人はピンク、パープル、スターライト(メタリッククリーム)、スペースグレイから選べます。
サイドに磁石がついて、Apple Pencil第2世代(別売)がカチッとくっついて充電できたり、Touch IDの指紋センサが電源ボタンに内蔵されてたりとうれしい機能も。iPad ProみたいなFace IDにしてくれたほうがハンズフリーで素早くログインできるのに…と残念に思わないこともないけど。
大画面のiPad Pro 12.9インチモデルやサムスン最新Galaxy Tab S8は重くて手がくたびれるけど、iPad Airは腕に負担がかかりません。厚さ6.1mm、重さ461gで、11インチiPad Proとおんなじサイズ感です。
Surface Pro 8はキーボード抜きで889g、キーボード込みで1,180g。それに比べたらだいぶ軽いです。
ディスプレイは必要十分レベル
気になる画面は10.9インチ、2360×1640ピクセル。11インチiPad Proより気持ち小さめで、12.9インチiPad ProやGalaxy Tab S8/S8 Ultraと並べるとずっと小さく感じます。最近は右も左も大画面タブレットですが、まあ、小さすぎると感じるほどではありませんね。
ストリーミングもYouTubeもAirで十分楽しめます。鮮やかで忠実なカラー、くっきり読みやすい文字。測色計では500ニトの基準よりだいぶ低い最高427ニトと出ましたが、春の日差しのなかでも暗く沈んで見えることはなかったです。
ディスプレイは液晶です。Galaxy Tab S8+やUltraみたいな有機ELでもないし、 12.9インチiPad ProみたいなミニLED でもないので、発色や黒の暗さで物足りなさもありますね。
2台並べて4K動画を見たら、すぐ目が吸い寄せられたのはGalaxy Tab S8+のほうでした。ベゼルが小さくて、色もちょっとだけ生き生きしてるんですよ。 これだけビューワー向きなのに画面がイマイチというのは、なんだかもったいない気もしますよね、iPad Air。もちろんTab S8+より300ドル安いので、比べるのは酷ですけど(日本はTab S8+が価格不詳ですが、一般為替レートのドル換算で米価格と比べると2万5000円くらいの差です)。
最先端じゃないところといえば、リフレッシュレートもiPad Airは60Hzと遅めです。だいたいの人は気づかないレベルだけど、120Hzのサクサク画面に慣れてからiPad Airの画面を見ると「あれっ」と思うかも。iPad Proとかは120Hzの可変リフレッシュレート(Apple語でProMotionという)のヌルヌルなので、ProからAirに乗り換えると、そこはダウングレードになる部分ですね。
小さな進化がいっぱい
とはいえ、iPad Airはそれを補って余りある工夫が随所に見られます。スピーカーは2基しか入ってないけど、両端に別れているのでステレオっぽく響きます。足りないところも多いけど音は上質で、ひとりで聴く分には重厚感たっぷりだし、小さな空間をクリスプサウンドで満たしてくれます。グラス・アニマルズの「Domestic Bliss」を聴いてるときもボーカルがクリアに耳に届きましたし、ボリュームを11まで上げても音の歪みは出ませんでした。
底部にあるUSB-C充電ポートにも目に見えない工夫が施されています。iPad ProみたいなThunderbolt 4じゃないけど、少なくとも新型Airは転送速度が旧型の倍の10GBpsなので、ファイル転送がとにかくスピーディーで6Kモニター最大1台との接続も可能です。まあ、ポートの改善点はそれぐらいで、プライベート視聴ではドングルかBluetooth端末が相変わらず必要だったりしますが…。カメラは背面が12MPで、フロントカメラは12MP超広角レンズにアップグレード。これまでの7MP以上に細かい自撮りが楽しめます。 タブレットはセルフィーカメラの出番が多いので、これはアップルに感謝ですね。ズタボロに叩かれたApple Studio Displayのようなことにはなっていないので、その点もホッとしました。画質はiPhoneのフロントカメラに近い印象で、光量十分の環境であればディテールと肌のトーンもしっかり捉えてくれます。
Center Stage機能もAirデビュー。おかげでビデオ通話中に動いても画面から飛び出る心配なしです。MacBook、Studio Displayと来てiPad Airでも使いまくりですよ~。まあ、Airの場合、カメラがおかしな場所にあるのが難点でして、Center Stageで動きを追跡して真ん中に来るように調整してくれるのはいいんですが、レンズの角度調整ができないので、画面をまっすぐ見て話をしてるつもりでも、なんかあらぬ方向を見て話してるように見えちゃう、それが悩みかな。
アクセサリは使いやすいけどお値段高め
このサイズ感ならWeb、アプリ、動画・写真・音楽を楽しむ用の標準タブレットに最適なんですが、これだけのチップが入っているなら、もっとほかにも使いたくなりますよね。ノートの代用とか仕事用PCの予備にと考えているなら、純正のキーボードとApple Pencilの購入を検討するのもアリでしょう。
ただ、お値段は張ります。 Apple Pencil 2は1本129ドル(日本では1万5950円)もする! アーティストやデザイナー、線描でスタイラスが手放せない人は価値ある先行投資と思うほかないですね。
手に持った感じはいいです。素早く落書きしても、ちゃんとペン先がついてくる。磁石でピッとタブレットに戻せばそのまま充電できるので、物をすぐ失くしちゃう人でも大丈夫ですよ。
PCの代用といえばキーボードも外せません。Magic Keyboardを買えばフローティングカンチレバーで角度調整もできるし、かなりイメージに近くなります。ただ完璧には程遠い印象です。重くて、お値段もずっしり重い299ドル(日本では3万4980円)だし、タブレットモードに戻るには、キーボードを取り外さなきゃダメだったりもします。
そういう問題を一部解消した180ドル(日本では2万1800円)のSmart Keyboard Folioでもいいんですが、Folioを選ぶと打鍵感がイマイチなので、そこが悩みどころですね。
処理性能はデスクトップPC並み
フロントカメラの改善、USB-C専用ポートの高速化、カラバリ増加も本年モデルの進化ですが、やっぱり最注目の進化はM1と5Gです。従来のA14に代わって実装されたM1は、MacBook Air、MacBook Pro 13、iPad Proに入ってるのと同じPCグレードのチップで、 4つの高性能コアと4つの高効率コアで成る8コアCPU。最新のiPhone 13のA15に比べても2コアの差をつけています。
iPad Airのベンチマークスコアを見てみると、Geekbench 5による総合処理性能テストのスコアが7,252で、iPad Proの7,292とほぼ同じという結果でした。M1を得たことでAirは、A15 BionicのiPad mini(4,525)はもちろんのこと、Qualcomm Snapdragon Gen 1 SoCのGalaxy Tab S8+(3,230)を凌ぐ処理性能になってます。
使ってみると、アプリの読み込みもブラウザのタブ切り替えも一瞬で、映画のストリーミングもサクサクです。まあ、これは昔からそうかな。M1で出る違いは、負荷のかかるタスクやグラフィックスを多用したゲームをやらないと気づかないレベルですよね。
これまでできなかったことが急にできるようになるということはないにしても(自分はまだない)、最新版では同じ作業をもっと長く、もっと高速にできるってことですね。今後数年は世の中の変化についていけないということもなさそうです。
処理性能が上がると気になるのはバッテリー駆動時間ですが、良く悪くもたいして影響は出ていません。編集部のテストでは、画面の明るさを200ニトにして動画を再生してみたんですが、iPad Airは10時間2分もちました。旧モデルの10時間30分よりはやや短くなりましたが、充電なしで丸1日使えます。こうして見てくると、割と最近のモデルがもう1台ある人は、えーなんか考えていたより中途半端!M1ひとつでiPad Air買い替える気になれない!と思ってしまうかも。
あとひとつの大進化は5G対応ですが、こちらはオプションなので、必要に応じて各自で判断、ですね。150ドル余分に払えば、サブ6の5Gに対応させて、4G LTEより高速な通信環境を手にできます。ミリ波の超高速5Gには非対応ですが、ミリ波はいろいろ悩ましいところもあるので、特記するほどの違いではありません。
iPad Air 2022年モデルは買い?
ひとことで言うと、iPad Airは多くの人が喜ぶベストタブレット、です。
モダンなデザイン、ポータブルな筐体、M1の爆速性能で、11インチiPad Proよりコスパが上とくれば、もう文句はありません。シンプルが一番という人には、329ドルのiPadをこれからもおすすめしますが。
iPad AirをノートPCの代わりに使うとなると、いろいろ粗も出てきます。簡単なタスクはこなせますが、マルチタスクするとなると10.9インチでは狭く感じるし、タブレットとノートの2in1を求める人には、 12.9インチiPad ProかGalaxy Tab S8 Ultraのほうがいいだろうし(1台2役はどうかな…という個人的な思いはさておき)、タブレット新しいの買いたいだけなのだ!という人にはiPad Airでしょうね。
割と最近買ったタブレットがある人に買い替えを勧めるほどの変化じゃないけど、競合にリードを広げたことは確かだし、800ドル未満の価格帯では無難なチョイスです。