アメリカのエネルギー省および運輸省が推進する超党派インフラ投資法(BIL)をベースにゼロエミッション燃料供給や電気自動車用充電ステーションの配備を目指す合同事務所が、50マイル(約80km)ごとに電気自動車用の充電器を4つ設置するという計画を発表しました。
Four fast chargers every 50 miles—US unveils EV infrastructure plan | Ars Technica
https://arstechnica.com/cars/2022/02/four-fast-chargers-every-50-miles-us-unveils-ev-infrastructure-plan/
2022年から、アメリカ政府はBILをベースとして電気自動車用高速充電器の全国ネットワーク構築計画を進めるために、5年間で50億ドル(約5800億円)の助成金を各州に交付します。この計画は、州間の高速道路システムの構築に焦点を当てており、50マイルに1つの電気自動車用充電ステーションを建設するというもので、ここでいう「電気自動車用充電ステーション」は、150kWの急速充電器が少なくとも4つ配備されたものとなるそうです。
各州は州間高速道路用の充電ステーションの配備が完了した時点で、政府に対して助成金を申請することが可能になります。なお、エネルギー省と運輸省の合同事務所によると、近くに送電設備がないなどの場合は「50マイルごとに1つの充電ステーション」という要件を例外として扱うことが可能となるとのこと。
50億ドルの助成金のうち、6億1500万ドル(約710億円)が2022会計年度には充電ステーション配備用に割り当てられ、これとは別に合同事務所の設立にも3億ドル(約350億円)が割り当てられています。なお、1年分の助成金のうち10%は充電ネットワークのギャップを埋めるために利用されるとのこと。
また、50億ドルの助成金プログラムがスタートしたのち、農村部などのサービスの行き届いていない地域用の充電器を製造するために、プラスで25億ドル(約2900億円)の助成金が利用可能となる予定です。
ただし、各州が助成金を利用するには、連邦政府に提出する計画の一部として、充電ステーションの信頼性(ステーションあたり少なくとも1台の充電器が97%以上稼働すること)と、電力網への影響を抑制することを確認する必要があります。また、需要の増加や充電料金の値上げに応じ、充電ステーションを簡単に拡張・アップグレードできるように設計することも求められています。加えて、助成金プログラムでは旅行センターやコンビニエンスストア、ビジターセンター、レストランなどの近くに充電ステーションを設置することが推奨されています。
なお、BILベースの充電ステーション助成金を請求するには、コンバインド充電システム(CCS)ベースの充電器を設置する必要があるとのこと。日産のリーフを除き、アメリカで販売されている電気自動車のほとんどがCCSベースの充電器に対応しています。テスラは独自の充電規格に対応していますが、CCSの充電器を使用できるようにするアダプターの開発を計画していると報じられています。
この他、充電ステーション助成金は国産の充電器を優先しており、これにより一部のメーカーがアメリカで事業を開始することを迫られています。電気自動車向けのインフラストラクチャー企業であるChargePointに急速充電器を供給するオーストラリアのTritiumは、アメリカのテネシー州に年間3万個の急速充電器を製造できる工場を建設する計画を発表しています。また、ドイツの電子機器メーカーのシーメンスも、アメリカでの充電器製造キャパシティを向上させる計画を発表しました。
充電ステーション助成金の抱える課題のひとつは、「電気自動車ユーザーが料金支払いのためにスマートフォンにさまざまなアプリを入れなければいけない状況に陥っている」という点です。各充電ステーションにクレジットカードリーダーを設置することが解決策のように思えますが、一部のネットワークはすでにプラグアンドチャージとして知られる「ISO15118」規格をサポートしています。ISO15118規格と互換性のある車両を使用するユーザーは、プラグを差し込むだけで充電器が車両の認識と支払いを処理できるようになります。
なお、充電ステーション助成金プログラムは2030年までにアメリカ全土で50万台の充電ステーションネットワークを構築するというジョー・バイデン大統領の公約を実現するためのものであり、実現すれば自動車による炭素排出量を削減し、電気自動車への移行を後押しすることになることは明らかです。
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