地球が誕生したのが46億年前。恐竜は、地球の南半球に今から2億年以上前に出現、その後北へと広がって6600万年ほど前まで地球に暮らしていたというのが定説でした。
しかし、今回新たな研究によりこの定説は劇的に変わるかもしれません。
定説より前から恐竜は北半球にいた?
2025年1月8日、オックスフォード大学出版局が発行する動物学雑誌「Zoological Journal of the Linnean Society」にある研究結果が掲載されました。
ウィスコンシン大学マディソン校(UW-Madison)の古生物研究チームは、長年の研究によって恐竜がこれまで考えられていたよりも数百万年も前から地球の北半球にいたのでは?と定説に疑問を投げます。
我々はこれまで、その定説を補うかのように断片的な証拠によって裏付けてきましたが、(今回の発見は)長い間抱いてきたこの考えが必ずしも正しくなかったことを示しています。
考えていたよりもずっと前に、恐竜が北半球にいたことを示す証拠を手に入れました。
と、ウィスコンシン大学地質学博物館の研究科学者であり研究の共同リーダーのDave Lovelace氏は、ウィスコンシン大学マディソン校の声明で述べています。
ニワトリみたいな竜脚類の新種を発見
2013年、Lovelace氏率いる研究チームは、現在のワイオミング州にあたる地域である化石を発見しました。この地域は2億年以上前、超大陸パンゲアの北半分であるローラシア大陸の赤道近くだったとされています。
発見された化石は断片的だったため、研究は年月を要しましたが、古生物学者たちは化石を新種の恐竜のものと特定し、初期の竜脚類である可能性が高いことを突き止めました。そして、この竜脚形類新種に「Ahvaytum bahndooiveche」と名付けました。竜脚類と聞くと、首の長い大きな草食動物を想像しますが、それとはかなり違っていたと考えられています。
Ahvaytum bahndooivecheの成体の標本は、高さが30.5cm強、体長は91.4cmほど。「(Ahvaytumは)基本的にニワトリくらいの大きさで、尾がとても長かったと考えられます。恐竜はいずれも巨大だと思われがちですが、最初から大きかったわけではありません」と、Lovelace氏は述べています。
恐竜が初めて出現した時期と同じ可能性
そして最も衝撃的なのは、この化石が見つかった岩層の年代でした。
研究チームは、放射性同位元素による年代測定(放射性崩壊を測定して物質の年代を決定する方法)を実施。Ahvaytumの化石が見つかった岩層が約2億3000万年前のものであることを突き止めました。
定説では、恐竜は古代大陸の南部で生まれ、数百万年後に北に広がったとされています。が、Ahvaytumの化石の年代はパンゲア大陸の南半分であるゴンドワナ大陸で恐竜が初めて出現したとされる年代とほぼ一致してるのです。
「Ahvaytumの化石は、赤道付近・北米で発見された最古の恐竜です」と付け加えるLovelace氏。今回の新発見は、初期の恐竜が地球に広がった方法と時期についての定説を根底から覆すものとなりました。
ちなみに、このAhvaytum bahndooivecheが発見された地域は、先住民イースタン・ショショーニ族が古くから住む土地でもあります。命名には部族の長老や中学生も参加し、ショショーニ族の言葉で「昔の恐竜」という意味のAhvaytum bahndooivecheが選ばれました。
さらにこの地域では、古い岩層に初期の恐竜のものと思われる足跡も発見しています。これはローラシア大陸にAhvaytumが登場する前から、恐竜や恐竜に似た生物の生息地であったことを示しています。
また、古生物学者たちは新たに両生類の化石も発見。この両生類もイースタン・ショショーニ族の言葉で命名されました。