多くの人々にとって、メタバースはインターネットの一角を占める、よくわからない不可解な存在かもしれない。ゲーマーや、非代替性トークン(NFT)のコレクター、テック企業のCEOといった人々の専売特許のように思えるかもしれない。
しかし、メタバースが進化を遂げるにつれて、そこにはオンラインの世界全体を予想だにしないやり方でつくり変えてしまうポテンシャルがあることが明らかになっている。そのひとつが、ユニバーサルIDに対するソリューションとしてのポテンシャルだ。これが実現すれば、散り散りになった従業員たちをつないだり、若年層の消費者へのリーチを望むブランドや小売企業にeコマースの新戦略を提供したりといったことが、もっとうまく行えるようになる。
米DIGIDAYのeスポーツおよびゲーム担当レポーターのアレキサンダー・リー(写真左)は、米DIGIDAYポッドキャストの最新エピソードで次のように語っている。「メタバースという言葉が使われるときにもっとも重要なのは、それがインターネットのバージョンのひとつとして語られているという点だ。そこでは、ユーザーがレディット(Reddit)へ行こうが、Facebookへ行こうが、インスタグラムへ行こうが、そのユーザーは同一人物だ。プロフィールやアイデンティティがプラットフォームごとに異なるようなことはない。ユーザーはバーチャルスペースを動き回る自分自身なのだから」。
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しかし、そこに到達するためには、開発し、実行しなければならないことが、まだまだいくつもある。それなくして、メタバースの素晴らしい真の姿は実現できないと、リーは語る。彼は番組内で、インターネットの世界で急成長を遂げているメタバースについて詳しく解説している。そしてこのメタバースが、2022年の大きな話題のひとつになることは間違いないといっていいだろう。
リーによるメタバース関連の記事:
この春、リーはDIGIDAYリスナーに向けて、メタバースの世界をさらに深掘りするミニシリーズを開始することになっている。配信開始日などの詳細については、続報を待ってほしい。
以下は、今回リーが出演した米DIGIDAYポッドキャストの最新エピソード「深堀:メタバースはどう位置付けられるか(In Depth: Mapping the Metaverse)」のハイライトをお届けする。なお、読みやすさを考慮し、若干の編集を加えている。
メタバースの現在と未来
「いまのところはまだ、メタバースの定義は固まっておらず、さまざまな定義がぶつかり合っている。メタ(Meta)やロブロックス(Roblox)、フォートナイト(Fortnite)といったプラットフォームの関係者にその定義を聞けば、全員が少しずつ違う答えを口にするだろう。メタバースの現代的解釈の決め手になるのは、没入感と持続感が強化されたインターネットの後継者というコンセプトだ。それが意味するのは、ユーザーのアイデンティティがプラットフォーム間で変わることのない、現代版インターネットのバージョンのひとつだ。またそこでは、そこで起こる出来事やユーザーの行動も変わることがない。たとえば、あるユーザーがバーチャルスペースに変化を加え、そこを離れる。そして20日後に戻ってきても、加えられた変化はまだそこにあるのだ。メタバースの概念は、実生活と同じように、そこでの行動が自分について回るネット社会だ。ユーザーがそこで築く自身のアイデンティティは、自身のすべてのイメージ、会話を交わすすべてのほかのユーザーに対して一貫している」。
カギを握るのは相互運用性とプラットフォームコラボレーション
「本物のメタバースを実現するためにもっとも重要なのは、相互運用性(interoperability)だと、本当に思う。相互運用性のコンセプトの基本にあるは、アイデンティティやバーチャルアセットをプラットフォームからプラットフォームへ移せるということだ。したがって、その相互運用性が本物なら、フォートナイト内で獲得した通貨やアイテムを、まったく別のゲーム、プラットフォームであるロブロックスで使うことができるはずだ」。
「もちろん、そんなものは実現できないかもしれないが、未来を楽観視できる材料がひとつある。我々が利用している現在のインターネットが、いくつかのやり方で相互運用性を実装しはじめているということだ。どこかのサイトに行くと、FacebookやGoogleのアカウントを使ったログインを求められることがある。これが相互運用性だ。Facebookのプロフィールをウーバー(Uber)のプロフィールにすることでもきる。これもまた相互運用性だ。こうしたことがこれらのプラットフォームで行われているのは、そこに明らかな経済的なインセンティブがあるからだ。したがって、フォートナイトとロブロックス間の通貨やアイテムの共有に関しても、経済的インセンティブさえあれば、相互運用性を実現することは可能なのだ」。
ブランドや小売企業がメタバースコマースから得る金銭的メリット
「少なくともメタバースに関わるブランドの観点からみて、もっとも刺激的なのは、なんらかの価値を実際に持つバーチャルグッズを販売できるeコマースの機会があることだろう。NFTの話になると、多くの人が困惑の表情を浮かべるが、それも無理のないことだ。ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)のプロフィール写真ぐらいしかNFTのことを知らない人が、NFTを毛嫌いする気持ちは理解できる。だが、それらが実際に価値を持つのは、アイテムが文字どおり使えるバーチャルワールドだ。ここにきて突然、グッチ(Gucci)やヴァンズ(Vans)などのファッションブランドが、実際に着用できる自社製品のデジタルバージョンに投資し、開発に着手するのを目にするようになってきている。しかも彼らは本腰を入れている。バーチャルコマースは、それ以外では自社製品を買えない消費者にリーチしようと考えているブランドには、うってつけの販売手法だと考えられる。とりわけ、可処分所得は少ないが、これらのプラットフォームを生活の拠点としている若年層へのリーチを望んでいるブランドにとってはそうだろう」。
[原文:In depth: How Digiday reporters are mapping the metaverse]
produced by KAYLEIGH BARBER hosted by ALEXANDER LEE(翻訳:ガリレオ、編集:小玉明依)