アメリカ宇宙軍の極秘実験機、ロケット噴射を使わずコースを変える新技術

宇宙軍の極秘実験…いよいよSFも現実味を帯びてきたぞ。

ボーイング社は、スペースプレーンの軌道を変えるための実験についての動画を公開。7回の試験飛行を経て、同社はこの機体についての情報を明らかにし始めました。

ボーイング社が投稿した動画

11月2日、ボーイング社はアメリカ軍のスペースプレーンX-37Bに関する動画をX.comに投稿。「初の試みとなる実証実験」として、X-37Bは大気の抵抗を利用して高度を下げ、楕円形の軌道から新たな軌道に移行した ということです。

X-37Bは、エアロブレーキングと呼ばれる技術で軌道を変えたといいます。

通常、スペースプレーンが軌道を変更する場合、推進剤(燃料)を消費してロケットエンジンを吹かす必要があります。しかし、エアロブレーキングを使う場合、大気の抵抗を利用して軌道を徐々に下げていき、目標の軌道に到達するというプロセスを経るようです。

ボーイングのエンジニア、ジョン・イーリー氏は、「エアロブレーキングを利用することで、大量の推進剤を節約できる」と説明しています。

今回のX-37Bのミッション

今回のX-37Bは2023年12月29日、スペースX社のロケット「ファルコン・へビー」に搭載されて打ち上げられました。ボーイング社によると、X-37Bは、もっとも大きな楕円形軌道での運行を終えており、エアロブレーキングを用いて新たな軌道に向かっています。

ボーイング社がこの動画を公開するまで、水面下で行われていたこのミッションに関する情報はほとんど公開されていませんでした。

アメリカ宇宙軍は、このスペースプレーンが新たな軌道で航行し、「宇宙環境把握技術」の実験を行なうことのみを明らかにしていますが、具体的にどんな実験が行なわれているのかは不明です。

X-37Bは2010年4月に初めて打ち上げられ、試験飛行においては224日の軌道滞在に成功。そこから大きな進展を遂げ、2020年5月、6回目のミッションとして、ロケット「アトラスV」で打ち上げられたX-37Bは908日間軌道に滞在、2022年11月にNASAケネディ宇宙センターに着陸しました。

スペースプレーンのメリット

スペースプレーンは、ロケットや宇宙ステーションのように宇宙空間での運用が可能でありながら、通常の飛行機のように着陸することもできるハイブリッドな機体です。

中国も独自のスペースプレーン「神龍(シェンロン)」の試験を進めており、最近でも268日の軌道滞在を経て3回目のミッションを完了。もちろん、中国もこのスペースプレーンについては、情報をオープンにはしていません。

アメリカ宇宙軍のX-37Bは、現在10ヶ月以上は軌道上に滞在しており、今回のミッションがいつ終了するのかは定かではありません。ただ、現在の軌道操作は地球に接近するコースのため、現在のミッションは前回よりも早く終了する可能性を示唆しています。

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