奇妙な偶然。
“イギリスのビル・ゲイツ”の異名をとるエンタープライスソフトウェア企業Autonomy社の創業者マイク・リンチ(Myke Lynch)氏(59)ら22名を乗せた豪華スーパーヨットが19日未明、突然の暴風雨に見舞われてシチリア沖で転覆。調理師1名が死亡、氏を含む6名が行方不明となるなか、翌20日には同氏と一緒に金融詐欺罪で訴えられていた同社元財務担当VPまでもがジョギング中に車に轢かれて死亡したというニュースが入ってきました。翌21日にはリンチ氏の遺体が発見されています。
車に轢かれたのは17日ですし、場所は英ケンブリッジ。まったく無関係な2つの事故ではありますが、こんな偶然があるんですね…。
マイク・リンチ氏は渦中の人
マイク・リンチ氏は2011年、Autonomyを米ヒューレット・パッカード(HP)に115億ドル(約1兆6700億円)で売却して財を成し、歴代英国首相の財務顧問を務めるなど、欧州を代表するテック起業家。
しかし海を挟んだ米大陸では、買収後に「会社の売上を何十億円分も水増しして不当に高く売りつけていた」疑いが浮上し、米国の検察に詐欺・内部告発者脅迫などで2018年に刑事起訴され、延々十数年争っていた“シリコンバレー史上最大の金融詐欺疑惑”の渦中の人として知られています。
アメリカに強制送還されて自宅に未決拘禁となっていましたが、13年越しの法廷バトルにようやく決着がついて、2024年6月には無罪が確定。この日はたまたま身内と弁護団で地中海に帆を上げて、勝訴を祝っていたのだといいます。
転覆したヨット「Bayesian号」はリンチ夫人の弁護士事務所の所有物で、乗っていたのは乗務員10名、ゲスト12名。夫人は救助されましたが、リンチ氏と令嬢、金融アドバイザーを務めたモルガンスタンレー・インターナショナルのジョナサン・ブルーマー会長夫妻、弁護士夫妻は行方不明のまま数日が過ぎ、生存が絶望視されていました。
海は穏やかだったのですが、局地的竜巻のような現象が起こって「ものの2分で沈没した」と付近の船長さんは証言しています。まだショックが隠し切れない様子。
もうひとつの事故
一方、リンチ氏の金庫番として同じ罪に問われていたスティーヴン・チェンバレン氏(52)の自動車事故のほうも、発生したのは朝でした。土曜朝に轢かれて病院で生命維持装置での処置を施され、火曜、弁護士のほうから訃報がマスコミに公開されたという流れになります。
有罪になっていたら20年は刑務所だった二人。
13年ぶりに疑いが晴れて、互いに清々しい朝を迎えた矢先の出来事でした。
Sources: The Guardian