枝野氏の辞任を受け、立憲民主党の代表選挙に向けた動きが本格化する。
小川衆院議員は、立候補に必要な20人の推薦人確保に向けた活動を本格化させる考えだ。一方、出馬を模索している泉政調会長や大串役員室長、西村議員はそれぞれ「仲間と相談する」と述べるに留め、構図が固まるのは来週以降となる。
代表選挙は30日に投開票が行われるが、立憲民主党はこの先どうなっていくのか。テレビ朝日政治部の今野忍記者が伝える。
Q.立憲民主党にとって枝野氏はどういう存在だった?
枝野さん一強と言われていたが、功罪あると思う。「功」の部分というのは、4年前に民進党(旧民主党)がばらばらになって、希望の党に合流するという騒動があった。そこで希望の党にいく人たちと、小池(百合子)さんがリベラル派を“排除”するということで、その排除された彼らを集めるかたちで枝野さんがある意味1人で立ち上げたのが立憲民主党。
ただ、選挙をしてみると、希望の党が失速して、立憲民主党が戦後最小の野党第1党になった。その後、希望の党は国民民主党になるなど野党が乱立して、安倍一強政治を許すかたちが長く続いた。その中で、枝野さんが一生懸命、玉木(雄一郎)さんに働きかけたり、社民党に働きかけたりして、バラバラになった野党を4年かけて、特にここ2年で政権交代する前の民主党の規模まで戻した。これは枝野さん最大の功績だ。
一方で「罪」というのは、立憲民主党は枝野さんが1人で立ち上げたベンチャー企業のようなかたちで、みんなが入って大きくなっていく過程で、枝野さんに文句を言いづらい環境があった。ベテラン議員の岡田(克也)さんとか、総理経験者の菅(直人)さんや野田(佳彦)さんが戻ったりしたが、“枝野さんあっての立憲民主党”ということで、オーナー社長に逆らえない企業のようになった。去年9月、立憲民主党に国民民主党が合流した時に、1つの大きな政党の制度になればよかったが、個人商店を引きずったまま選挙戦に突入してしまった。
選挙が終わった後、東大などの政治を研究する先生方とシンポジウムで話す機会があった。今回、「共産党と組んだことで負けた」とよく言われているが、世論調査を研究しているある先生は「それは違う」と。立憲民主党は去年110議席に戻ったが、政党支持率はほとんど戻らなかった。100議席を超えているのにずっと一桁台で、「そのまま選挙に突っ込めば100議席を割るのは、統計学的には当然だ」と説明されて、そのとおりだと思った。枝野さんは会見で政党支持率の低さについて聞かれた時、「選挙結果を見てほしい」とドヤ顔で言い返していたが、自民党は支持率が下がるや否や総理を変えて選挙に臨んだ。小選挙区で1万票差以内が31あったという意味では、自民党の方が上手だった。
Q.代表選の争点は?
2つしかなく、世代交代と共産党との野党共闘だ。実際に選挙を戦った人の話を聞くと、みんなの党から維新の党、今は立憲民主党で代表代行をやっている江田憲司さん。横浜の青葉区が選挙区で、自民党の支持層からけっこう票をとっている。立憲民主党と共産党が共闘することについて、「立憲共産党」と自民党や日本維新の会から散々言われて、枝野さんは「閣外から強力するだけで、連立ではない」と言うが、説明するよりも「立憲共産党」というフレーズが強かった。江田さんは「自分にこれまで入れてくれた方に電話をすると、『共産党と組む立憲民主党だから、江田さんに入れたいけど入れられない』という人がかなりいた」と言っていた。一本化したことで共産党の票が入る分、逃げていく票もあった。
Q.代表選に出馬する顔ぶれはどうなっている? 一新は期待できる?
立憲民主党の両院議員総会後、ぶら下がり取材をしたのが4人で、泉健太さん、小川淳也さん、西村ちなみさん、大串博志さん。ただ、この4人の名前を聞いて、「あの4人ね」という方はほとんどいないだろう。
泉さんは、旧国民民主党から立憲民主党に移ってきて、今は政調会長をやっている。立憲民主党も去年に代表選をやっているが、その時に枝野さんの対抗馬で出たのが泉さんだ。今回も、正式には表明していないが出ると言われている。47歳だが当選は8回で、自民党なら大臣経験者というけっこうなベテランになる。
小川さんは、元総務官僚で50歳。この方も当選6回で、旧希望の党から一度無所属になって、立憲民主党に入った。この方は映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が話題になった人。
西村さんは新潟出身の女性で、当選6回、旧立憲民主党からの流れになる。これはどうかと思うが、立憲民主党はジェンダーや多様性を推しているので、「女性候補が出ないのはまずい」というかたちになっている。立憲民主党の中では、「そう言わなくても済むようになりたいよね」と言っている女性議員もいた。それで白羽の矢が立っているのが西村さんで、性交同意をめぐる失言で議員辞職した本多平直さんの妻。
大串さんは、枝野さんの最側近の1人と言われている。今も役員室長といって、秘書室長のような、枝野執行部を支えていた1人だ。佐賀県出身の元財務官僚で、当選6回、非常に政策に通じている。
一新への期待に対して、「若手や女性であれば誰でもいいというのはおかしい」「そんなことをやったらまた党が分裂する。枝野さんが100人超の党にしたのがまた元に戻ってしまう」と懸念する声がある。
一方で、枝野さんや旧民主党政権で大臣や党幹部を経験した人たちで4年間やってきて、古い顔に戻せばいいのかというと「思い切って世代交代すべきだ」という声もある。当選回数で言えば、自民党なら大臣経験者にあたるような泉さんがいるわけで、これは結局は鶏と卵。下が育たないからずっと同じ人がやっているのか、同じ人がやっているから下が育たないのか。自民党でも岸田さんに総理が務まるのかと言われていた時代もあったが、今はそれなりに総理らしくなっている。若手に任せるのはリスクもあるが、それは企業なども同じ話で、議論が分かれるところだ。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)