平成の流行がレトロになった令和 – NEWSポストセブン

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いま、若者たちの間でガラケーが注目されているという

 30年ちょっと続いた「平成」が終わり、元号が「令和」となって2年半ほどが経った。つい最近のことのような気もするが、すでに「平成」に流行ったモノを懐かしんだり、そもそも当時の流行を知らない世代が新鮮味を感じるなどして、当時のアイテムやヒット作品などにブームが再来しているのだという。高校2年の娘を持つ50代男性が語る。

【写真5枚】「セレクト」や「モード」のボタン、金属クリップあるチェーンを付けたポケベル。キティのモデルも。他、真っ青な空と下に菜の花畑の武富士のティッシュ、「Hi」の写ルンです、プリクラミニアルバム等

「家に眠っている『ガラケーを見せて』と娘が言うんです。『アンテナが付いている、可愛い!』と、物珍しそうに見ていました。“平成レトロ”と言うらしいのですが、平成なんてほんのつい最近。スマホのほうが形も機能もよっぽど洗練されていますし、古いガラケーの何がいいのか(苦笑)」

「流行は繰り返す」とは言うものの、まだ早いのでは──そう思う人も多いだろう。しかし、日経トレンディの「2021年ヒット商品ランキング」では、「昭和・平成レトロブーム」が4位にランクイン。現在10~20代の「Z世代」が注目しているのが、平成初期のブームだという。博報堂・生活者エクスペリエンスクリエイティブ局の山本健太氏が解説する。

「ルーズソックスやゲームボーイアドバンス(任天堂)、ポケベル、ガラケー、韓流ドラマ『冬のソナタ』といった1990~2000年代くらいまでのアイテムを生活に取り入れる動きが若年層の間で起きています。ガラケーをあえて使い始めたり、動画配信サービスで冬ソナを見たり。彼らはもちろん、ガラケーやヨン様世代ではありませんが、平成の生活や空気感にノスタルジーを感じているのです。

 その影響はSNSによるところが大きい。例えばガラケーは機能が制限されている分、SNSを見なくて済んだりと逆にいいところがあるという声もあります。その一方、SNSで“自己ブランディング”をするために中高生が昔のモノを取り入れている側面もあります。自分のセンスを差異化してアピールできるものを探していくなかで、平成のアイテムがその“宝庫”になっているのでしょう」

 インスタグラムで「#ガラケー」と検索すると、約3万6000件がヒット。ガラケーを手にする女子高生や、ガラケーをモチーフにしたカプセルトイをシールでデコる投稿などが見られる。また、平成ギャルの間で流行ったルーズソックスを令和の女子高生が身に着けるなど、「平成リバイバル」は様々なシーンで発生しているようだ。しかし、平成に流行したものを「レトロ」と呼ぶには、いささか違和感を覚えるが……。

「平成レトロブームはまだまだこれからだと思いますが、中には定番化して価値を認められていくものもあるでしょう。例えば、レコードや純喫茶の再評価といった『昭和レトロ』ブームはこれまでに何度か起こるうちに定番化してきました。平成レトロで言うと、ルーズソックスを現代風にアレンジして履いたり、“暖かい”という機能面の理由で今後定番のアイテムになっていく可能性があります」(山本氏)

 単純なリバイバルから脱し、徐々に価値が認められて定番アイテムとなっていくこともあるわけだ。

 平成文化研究家で、「平成レトロ」という言葉を最初に使い始めたという山下メロ氏は、「もともと、平成の世で流行したものは、文化として軽く見られがちでした」と振り返る。

「昭和レトロというと、『三丁目の夕日』のような戦後の高度成長期にみられる重厚長大な印象の文化のことを指します。それと比べて、“平成はイマイチ”という空気があります。昭和に流行したもののなかでも、1980年代のおニャン子クラブやファンシーグッズ、タレントグッズなどは、“軽薄だ”という印象があるためか、なかなか昭和レトロのくくりには入ってきませんでしたが、同様に平成の流行も価値を認められることは少なかった。

 その原因のひとつに、昭和はみんながテレビを見ていたために流行したものを誰もが知っている時代だったのに比べて、インターネットが普及した平成は流行も細分化したことが挙げられます。“平成グッズ”と言われて、みんなが同時に思い浮かべられるものが見つかりにくい。また、昭和は敗戦から立ち上がっていく勢いがありますが、平成は幕開けしてすぐにバブルが弾けて不況に突入していった時代です。そうしたこともあって、平成の文化が軽んじられてきたのではないでしょうか。最近のブームの到来で、そうした価値観も変わっていくといいなと思っています」

 30年間のうちにいろいろな流行グッズ、ヒット作品が生まれた平成時代だが、これから何がどのように再評価されていくのだろうか。

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