ひとつの巨大な火山?
NASAの探査機ジュノーが今月に入って実施した木星の衛星「イオ」へのフライバイ*の画像が公開されました。
これで同探査機は、2カ月の間に2度も太陽系で最も火山活動が活発な天体のそばを飛行したことになります。また今回の近接通過では、衛星の地表から噴煙(プルーム)のようなものを2つ観測していました。
フライバイ:宇宙探査機が観測やデータ収集のために天体や衛星などの天体の近くを高速で通過すること
イオ上空1500kmを再び通過
2月3日(土)、ジュノーはイオから約1500km地点を通り過ぎて2度目の近接フライバイを完了。
その際、同探査機はイオの地形や、表面に存在する数百もの火山とケイ酸塩溶岩を捉えました。
Oh good lord. The volcanoes of Jupiter’s moon Io, seen by the @NASAJuno probe during a close flyby. https://t.co/T58rgJEwP3
— Corey S. Powell (@coreyspowell) February 5, 2024
フライバイ時のRAW画像はNASAによって公開されており、ビジュアル・デザイナーや天文ファンがそれらを画像処理することも。
そんな最新画像の1つをクローズアップしたものにはイオの表面から噴き上がる2つの噴煙が写っており、サウスウエスト・リサーチ・インスティテュート(SwRI)は「1つの巨大な火山の火道の2つ、または互いに近い2つの火山から上がっている」と説明しています。
ジュノーミッションのチームは、画像の中で起きていることへの理解を深めるため、今回のフライバイで収集されたデータの分析を進めているとのこと。
イオの観測を続けるジュノー
2016年から木星系を調べているNASAの探査機ジュノーは、このところ木星の衛星の中で3番目に大きいイオに目を向けています。2023年5月と7月に行なったフライバイでもイオを観測しており、9月には巨大ガス惑星とその衛星が並んだ木星とイオの“家族写真”も撮影していました。
ジュノーは12月30日に実施した1回目の接近観測で、イオの地獄のような地表から約1500km地点を通り過ぎています。
NASAによると、それはジュノーが最も近づいたフライバイで、過去20年間のどの探査機よりも近い距離のイオへのフライバイだったそう。その近接画像には、火山から噴出した硫黄に由来する特徴的なオレンジ色をしたイオのデコボコな地表の細部が写っていました。
木星の4大衛星「ガリレオ衛星」の中で最も内側にあるイオ。木星と、衛星のエウロパ及びガニメデからの重力相互作用を受けています。それによって常に膨張・収縮し、火山活動が生じるとされています。
またイオの表面には火山とケイ酸塩溶岩の湖がまるで無数のヤケド痕のように散らばっており、地表全体が荒んでいるのです。
NASAによると、科学者たちは2度(12月及び今回)にわたる近接フライバイを活用して、イオの地殻の下にマグマの海が存在するのかどうかを調べるとのこと。また、イオの火山がどのくらいの頻度で噴火し、どれくらい明るくて熱いのか、そして溶岩流の形状がどう変わるのかも研究するそう。
さらにテキサス州サンアントニオにあるSwRIの科学者たちのグループも、ジュノーのデータとハッブルとジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による遠隔観測を組み合わせ、イオの火山活動が木星の磁気圏にある荷電粒子の流れとどのようにつながっているのかを研究するようです。
ジュノーは今年、現地時間の9月20日にもイオへのフライバイを控えています。