歳をとるにつれ、自分の限界に挑戦する機会もめっきり減ってきた。よく言えば加減が分かってきたということで、悪く言えばガッツがなくなってきたのだろう。
いっちょここらで、無理難題にも果敢にチャレンジする熱い心を取り戻すべきではないか。今こそこれまで敢えて避けてきた、米2.5合デカい豚カツが2枚ドンと乗っているという『国境食堂』のカツ丼(大)に挑む時が来た……のかもしれない。
・直径25㎝の丼
『国境食堂』は奈良と京都の、ちょうど合間に位置する。瓦葺の横長の建物で、店内には大きな提灯がぶら下がっており、どことなく懐かしい雰囲気だ。
はじめに持って来て下さるお冷を飲んで「おやっ」と思う人も多いに違いないが、それもそのはず。同店では提供される水ほか、料理にも地下水が多分に使用されているのだ。
随所にこだわりが感じられる、奈良県が誇る名店である。そんな同店の大人気メニューのひとつが『カツ丼大(税込1100円)』だ。通常の『カツ丼(880円)』と220円しか差がないので、大したことはないだろうと侮ることなかれ。
冒頭に書いた通りの、どえりゃあ量なのだ。店ではそのこだわり故か、料理が盛られる皿もデカい。故に写真ではさほどモリモリには見えないかもしれないが、目の当たりにすると圧倒されること必至である。
店に向かうまではヤル気元気食べる気十分だった記者も、いざ本番となるとシオシオと尻込み。こんな時は、強力な助っ人に頼るしかない。
以前にドロドロ系ラーメンや、そびえたつ若鶏のカツを一緒に食してくれた彼にヘルプミーだ!
聞くと彼は、この『カツ丼大』を「何度か完食したことがある」という。非常に心強い。彼さえいれば百人力、なんとかしてくれるだろう。
その予想が当たっていたことは、彼が注文時に “ミニうどん付き(1470円)” を所望したことからも明らかだ。なぜ敢えて自分を追い込んでいくのか疑問でしかないが、彼にとってうどんは味噌汁みたいなもの……なのかもしれない。
謎の安心感に包まれながら待っていると、おおよそカツ丼の入れ物とは思えない巨大な丼がやってきた。ササっと測ってみると、直径は25㎝だ。
・難関は押し寄せる米
蓋を開けると、圧巻のカツ……カツ……そしてカツ……!!!! 箸でめくってもその下からまた、カツがお目見えする、カツの無限ループだ。
数えてみると約20切れのカツが、米の上に乗っていることが分かる。店員さんに聞くと「大体400gくらいかなあ」とのことだった。
同店のカツは、非常にしっかりしている。端的に言えば、肉厚なのだ。油がたっぷり乗っていて、サックサクの衣が卵と溶け合い、食べるときには程よい柔らかさだ。
口に入れた瞬間ジュワっと豚の旨味が広がり、この上なく贅沢だ。ウマいっ……! いくらでも食べられそうな美味しさであるが、そうは問屋が卸さないところが三十路の記者のリアルなお腹事情である。
そうは言うものの、何度か完食している彼曰くカツの量は問題ではないという。一番の難関は2~2.5合ある、米であるとのこと。言われてみればなるほど。箸ですくっても掬っても押し寄せる米。
よくよく考えてみれば普段、それ程の米を一気食いすることはないものな。無謀という言葉は、今この時のために用意されていたのかもしれない。己の力(腹)不足を痛感させられた次第。
なんやかんやで、カツ丼(大)マスターの彼が「四十路には若干きつい。若い頃とは違う」などと呟きながらも奇麗に平らげてくれた。
ちなみにスタンダードなカツ丼でも、米が(大)の半分はあるので、その日の晩御飯を抜くくらいにはお腹いっぱいになった次第。
しかし周りを見ると、カツ丼(大)を食べている人はチラホラいらっしゃった。みな一様に良い体格をされていたが、食べ終えてはいる感じだった。
もしかすると食欲旺盛な方にとっては、これくらいはたいしたことない……のかもしれない。我こそはという猛者は、一度チャレンジしてみるとよいだろう。お腹も心も満たされること請け合いだぞ。
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 国境食堂
住所 奈良県奈良市奈良阪町2611-5
時間 11:00〜22:00(L/O21:30)※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が変動する可能性があるので注意
定休日 火曜日
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.