北海道に広がる美しい芝生に絶対入ってはいけない理由 / 実は “アレ” のために栽培されている大切な農地

ロケットニュース24

北海道の郊外を走ると、広い原っぱをよく見かける。視界の限りに緑色の芝生が育ち、のびのびとした “北海道っぽさ” が溢れる景色だ。遠く離れた北の大地にやって来たことを実感して感動する人も多いだろう。

「せっかくだから原っぱの中で記念撮影をしたい! SNSにアップすればきっとたくさんイイネがもらえるぞ〜!」なんて思っている方、ちょっと待ってほしい。

北海道でよく見かける原っぱは、ただの雑草ではなくある用途で使うための大切な場所。外部の人間は絶対に入ってはいけないのです!

・原っぱの正体は牛のご飯

単刀直入に言おう。北海道に多数存在する広〜い原っぱは、牛のご飯。つまり牧草だ。


ご存知の通り北海道では多くの牛が育てられている。農林水産省の畜産統計調査によると2022年現在、乳牛が84万6100頭、肉牛が5万3300頭飼育されている。

そして一般社団法人Jミルクによると、乳牛1頭の1日分の食事は青草(夏)の場合は50~60kg、乾燥した草(冬)の場合は15kgほど。

これらを計算すると、1日に消費される牧草が膨大な量になることがお分かりいただけるかと思う。


つまり何が言いたいかって言うと、牧草地がどれだけ広くて余っているように見えても需要があって育てられているということ。立派な農地なのである。


・部外者の侵入が病気に繋がる

原っぱの役割はわかってもらったところで、なぜ部外者が侵入してはいけないのかをご説明しよう。理由はズバリ、病気を予防するため。


皆さんは『口蹄疫(こうていえき)』という病気を聞いたことがあるだろうか?

口蹄疫とは偶蹄類(ぐうているい)の家畜(牛、豚、山羊など)の伝染病のひとつで、感染した動物は発熱、口の中や蹄の付け根などに水ぶくれができるといった症状が出る。

この病気の恐ろしいところは、非常に感染力が強いこと。

そのため罹患(りかん)した家畜は、家畜伝染病予防法にもとづいて殺処分の対象となってしまう。酪農家への精神的・経済的ダメージは計り知れないし、なにより牛にとってあまりにも理不尽で辛いことである。


口蹄疫は、外部の人間の靴底や持ち物に付着したウイルスから感染が広がることがわかっている。つまり、消毒もなしに牧草地に入るなんてもっての外ということなのである。


・マナーを守って楽しい観光を

そもそもの話だが、牧草地に限らず私有地へ無断で侵入するのは立派な犯罪。昆布を干すための干場(ほしば)や野菜畑、湿地など、部外者が侵入することで環境が崩れてしまう場所は数えきれないほどある。

実際 過去に北海道では、SNSで有名になったシンボルツリーを撮影しようと付近の畑へ侵入する人が後を絶たず、所有者が苦渋の決断でツリーを伐採したという出来事が起きている。

残念ながら一部のマナーの悪い観光客の影響で、実害が出てしまっているという状況なのだ。

北海道にはシャッターを押すだけで作品になるようなスポットが数多く存在する。本州の人間としては憧れとロマンを感じざるを得ないし、観光に訪れること自体は悪いことではない。

大切なのは、行動する前に1度立ち止まって「地元の人々の生活を脅かしていないか?」と考えること。

北海道に限らず、ローカルルールというものは全国各地に存在する。まずは知らないうちにマナー違反をしてしまわないよう、お出かけ前に調べるところから始めてみるのはいかがだろうか。

参考リンク:一般社団法人Jミルク「乳牛の体形や食事量」農林水産省「畜産統計調査」、農林水産省「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」
執筆・イラスト:高木はるか
Photo:RocketNews24.

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