海外でも「emoji」と呼ばれている絵文字は、細かいニュアンスが伝わりづらいメッセージやメールで気持ちを表すのに重宝されており、絵文字ひとつで法的効力のある契約が成立しうるという判例も出ています。絵文字を使うと実際の顔の表情よりも正確かつ迅速に感情を伝えられることが、イタリアの研究により判明しました。
Emojis vs. facial expressions: An electrical neuroimaging study on perceptual recognition: Social Neuroscience: Vol 18, No 1
https://doi.org/10.1080/17470919.2023.2203949
People are better at decoding emojis compared to real facial expressions, study finds
https://www.psypost.org/2023/07/people-are-better-at-decoding-emojis-compared-to-real-facial-expressions-study-finds-166233
実際に会って会話をする際は、言葉だけでなく表情やアイコンタクト、声のトーンなどの非言語コミュニケーションが使われています。これに対し、ソーシャルメディアやメッセージングアプリなどでは声や顔が直接相手には伝わらないので、代わりに絵文字で感情や気持ちを表現することがよくあります。
この絵文字がどのくらい正確に感情表現できるのかを調べるため、イタリア・ミラノビコッカ大学のアリス・マド・プロバービオ氏らは、絵文字と人間の顔の表情を見た際の脳の反応を比較する実験を行いました。
実験にあたり、研究チームは喜び、悲しみ、驚き、恐怖、怒り、嫌悪の6つの基本的感情を表す顔写真48枚と絵文字48個を用意しました。そして、18~35歳の男女51人に感情を意味する単語を見せた後で絵文字か顔写真を見せ、そこから読み取れる感情が単語と一致しているかを答えてもらいつつ、参加者が感情を読み取る精度や反応速度、参加者の脳の電気信号を記録しました。
この実験の結果、絵文字を見せられた場合は顔写真より平均73ミリ秒反応が速いことがわかりました。また、精度も絵文字の場合は92.7%と高かったのに対し、顔写真では82.43%にとどまりました。
絵文字の方が反応しやすいということは、脳の反応からも裏付けられています。研究チームが、外部の刺激に対する脳の反応である事象関連電位を分析したところ、脳波の反応は単語とその後に見た画像が一致していない時に大きく、特に絵文字の場合の方が顔写真の場合より振れ幅が大きかったことがわかりました。
この実験ではほかにも、喜びの顔が最も素早く認識することが可能で、驚きと怒りがそれぞれ2番目と3番目に認識しやすい表情だということもわかりました。一方、恐怖の表情は最も認識に時間がかかりました。この傾向は、絵文字でも顔写真でも同じだったとのことです。
今回の研究は参加者が51人と、サンプル数としては少ない点に注意が必要です。また、顔を見ながらのコミュニケーションはリアルタイムで表情が変化しますが、実験では静止画が使われました。
こうした点を踏まえて、研究チームは論文の中で「絵文字は、その図式性(schematicity)による反応速度や正確さ、タイムラグの短さの点で顔より優位だという仮説が成り立ちます。つまり、リアルなディティールが省かれていることや、描かれている顔のパーツが限られていることなどにより、少なくとも静止画においては顔より絵文字の方が感情の分類が容易になっている可能性があるということです」と結論づけました。
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