PCやネットに詳しい人から「Wi-Fiは急につながらなくなることもあるから、いざという時のために有線LANも使えた方がいい」とアドバイスを受ける機会があるかもしれません。これは正しいことですが、かといって、今から無理をして有線LAN環境を用意する必要まではないでしょう。
昔ほどWi-Fiは不安定でなくなった
自宅でオンライン授業を受けたりリモートワークをしたりするとき、「ネットがつながらない」ことは致命的です。コロナ禍でそのような大変な経験をした人も、少なくないかもしれません。
ネットがつながらない原因はさまざまですが、通信事業者の回線トラブルなどなら、あきらめて回復を待つしかありません。関係者にも、理由を話せば「それは仕方がない」と納得してもらえるでしょう。
しかし、自宅のWi-Fiルーターが壊れたとか、Wi-Fiの設定などに問題が生じてつながらなくなったとかいった場合には、自力で解決しなければなりません。そうした急なWi-Fiのトラブルがあったとき、有線LANが利用できると、緊急避難として重宝します。有線LANはケーブルを接続すれば設定不要ですぐに使えますし、Wi-Fiルーターが壊れたときにも、大抵のケースでは、通信事業者から提供されているホームゲートウェイなどの機器に直接接続してネットを利用できます。
以前は、動画の視聴などの用途だとWi-Fiでは不安定で、有線LANの方がいい、とされたこともありました。仕様上では十分な性能があっても、実際に使ってみるとWi-Fiではスムーズにデータが転送されず、動画の再生がカクカクしてしまったりするのです。
しかし、Wi-Fiの性能が向上して、通信速度も安定性も増した昨今では、日常的な用途にはWi-Fiさえあれば十分となりました。その結果、薄型のノートPCなどでは、有線LANポートを搭載しない製品が一般的になっています。スマートフォンやタブレットも、もっぱらWi-Fi接続です。
このように、Wi-Fiが十分な性能を持ち、一方で誰もが有線LANを使えるとは限らなくなっている昨今では、仮に自宅で急なWi-Fiのトラブルがあっても、「じゃあ有線LAN使えばいい」というのは、常識だとは言い難いでしょう。
いざという時のために有線LANがあった方がいいことは間違いありませんが、それは、誰もが想定しておくべきとも言えないレアケースと捉えられ、関係者にきちんと説明すれば「それは仕方がない」と納得してもらえるのではないか、と考えられます。
それでも有線LANのメリットはある
以上のように「使えることは常識」とは言い難くなった有線LANですが、PCやスマホ、タブレットで有線LANを利用できるようにするアダプターは数千円代前半程度で売られており、持っていると、いろいろと役に立つことは間違いありません。
Wi-Fi機器のトラブルがあったときや、Wi-Fiによる通信が不安定になったときに緊急避難的に使えるほか、トラブル発生時に問題の切り分けをするのにも使えます。例えば、急にWi-Fiでネットがつながらなくなった時、有線ではつながるならWi-Fiのトラブル、どちらでもつながらないなら回線事業者側のトラブルの可能性が高いと推測できます。Wi-Fiルーターの設定をやり直すときも、有線接続できた方が簡単です。
そのほか、旅行先や学校、仕事で訪れた客先などで、どうしても有線LANしか使えない、という状況があるかもしれません。ネットに接続する手段は、多い方が何かと便利です。
ちなみに、ふだん有線LANを使わない人には想像しにくいことですが、有線LANは設定不要でネットワークに接続できてしまうので、誰かが自宅のWi-FiルーターにLANケーブルを接続すれば、Wi-Fiのパスワードを教えていなくても簡単にネットワークに侵入し、インターネットも「ただ乗り」で利用できてしまいます。
信用できない人を家にあげたり、Wi-Fiルーターを触らせたりしないようにしよう、ということですが、自宅にすぐ接続できる有線LANケーブルがあると、そのようなことも起こり得る、ということは、一応留意しておきたいところです。