5人前の桶寿司をひとりじめする

デイリーポータルZ

大きい桶に入った寿司を食べる機会に乏しい。

子供の頃は親戚が集まったときに親が頼んだり、法事や葬式のときに出くわしたものだが、大人になってからぱったりと桶に会うことがなくなった。

幼少期から食い意地の張っていた筆者はあの桶に入った寿司をひとりじめできたらどんなにいいだろうとよく夢に見ていた。

大人になった今ならできる。咎める人がいないからだ。大人になるってこういうことだ。やってやろうじゃないか。

価格におののけ!出前寿司

今回は出前寿司の定番チェーン店「銀のさら」でオンライン注文をすることにした。寿司を注文するのはスシローのお持ち帰り予約を除いて人生初である。緊張してきたぞ。

それにしても桶の寿司は値段が高い。5人前とくればなおさらだ。メニューを開いた瞬間にぎょっとしてしまった。デパ地下で適当に買ったサラダが想定よりめちゃくちゃ高かったときの感覚と一緒だ。

寿司を食うと言い出したくせに価格に完全にひよってしまった。編集担当の古賀さんに思わず確認の連絡をする。お金は出してくれるらしい。ありがたい限りだ。

しかし完全にチキンとなった筆者の出せる勇気の限界はもっともリーズナブルなメニューだった。それでも5000円くらいするんだぜ。

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公式サイトのメニューより。どれもおいしそうでどれも高い。

「甘エビをボイルのエビにしてください」

お寿司といえば1つや2つ食べられないネタがありがちだと思う。電話で注文する際はネタを入れ替えてもらうといった融通は効くだろうと想像がつく。ネット注文となるとそうしたイレギュラー対応はできないだろうな、と思いながら注文画面を操作していると、しっかりと入れ替えしたい場合の選択画面があった。

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入れ替えの画面。とってもありがたい。

真イカがあまり得意ではないのと、どうしても食べたかったのでいくらに交換した。お高めのネタに変更した場合は差額が加算される。

子供の頃、商店街にある持ち帰り専用のお寿司屋さんをたまの贅沢として利用していた。母が電話で注文をしてお散歩がてら取りに行くのが恒例であった。

当時甘えびが苦手だった筆者を気遣い、母は注文する電話口で「甘エビをボイルのエビにしてください」とよく言っていた。火を通したエビは大好きな筆者は好物を聞かれると「ボイルのエビ」と答えるようになっていた。中学生になり「蒸しエビ」という言葉を知るまでずっとである。

だいたい、ボイルのエビってなんだ。なんでちょっとカッコよくいっているんだろう。回らないお寿司屋さんで「ボイルのエビ!」とか言ってしまわなくてよかった。

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