フィーエルヤッペンはじめました(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

フィーエルヤッペンという競技がある。棒高跳びの要領で棒を使って川を跳び越えるのだ。オランダでは250年以上の伝統を持つ立派なスポーツなのだという。言葉だけでは説明しがたいのでぜひとも日本フィーエルヤッペン協会のHPを参照してもらいたい。ここに出ている動画がかなりすごいことになっているので。

このフィーエルヤッペン、日本ではまだマイナーなスポーツで競技人口は30人程度しかいないらしい。しかもその中で実際に試合に出てくるのは8人くらいだとか。これは今のうちからはじめておけばオランダでオリンピックが開催されるときには日本代表になれるんじゃないか。そういうわけで始めてみました。

2006年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

まずは道具探しから

フィーエルヤッペンは長いアルミの棒を使って川を跳び越える。要するにはじめるためにはまず棒が必要ということだ。買いに行ってきた。

公式の棒は7.5~13メートルの長さらしいが、そんな長いアルミ棒どこにも売っていなかった。市販されている中では竿竹が一番近い。

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使えそうです。

今回選んだ竿竹はアルミ製なので材質は純正と同じだ。いいしなり方をしており期待が持てる。公式の棒よりは短いが、今回は売り場で一番長かった3.5メートルの竿竹を使うことにした。

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いいしなり。

竿竹は跳ぶ時に握りが滑りそうなので手袋も合わせて買うことにした。

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用途に合わせて多種多様。

滑り止めならイボイボのついた軍手でいいかなと思ったのだけど、スポーツっぽくないのでちょっと見栄を張って革のやつを選択した。

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引越しを思い出します。
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これはちょっとやりすぎだ。
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これに決めました。

この手袋、以前勤めていた会社では実験機器を扱うときに手を保護するために使っていた。だけど今回は竿竹を持つ手が滑らないために使う。状況が変われば用途も変わる、ということだ。

準備完了です

なにはともあれ早くも道具が揃ってしまった。それもスポーツ店ではなく全てホームセンターで。

いよいよオランダへと続くドアをたたきたいと思います。

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僕の移動手段にはちょっと長すぎた。
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練習を始めます

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フィーエルヤッパー参上。

それでは練習を始めたい。最初から川を跳ぶのは怖かったので、まずは陸でフォームを固めることにした。跳ぶべき幅はおおよそ3メートル。防波堤から歩道を越えて対岸へ着地する。

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うわ、高。
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まったまったまったまった。

これしきの幅、跳べないやつが川なんて跳べっこない、と思っていのだけど、いざ棒を持って上から見るとすごいこわい。どうしても一歩を踏み出すことができない。

怪我したくなかったのでちょっと低いところから始めることにした。

予想以上に危険です

棒にすがりつきながら対岸目指して踏み切った。

やあ。ばっさー。

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低くなろうがへっぴり腰です。
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ばん。
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きゅー。

弧を描いて対岸へと向かうはずの棒の上端が木に引っかかって止まった。僕の体はすでに浮いていたので止まった棒に股間から激突。恐ろしい競技だ。これが川だったらうずくまったまま落水だ。

この教訓を踏まえて川へと挑むことにします。 

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跳べる川、ありませんか

結局ぜんぜん陸地で練習していないわけだが、練習したところでかえって怖くなるだろうと思ってやめた。いいから川を跳ぼう。

怪我せずに跳べそうな川を探して竿竹片手に歩いた。だけど見た感じ安全に跳べそうな川なんてない。

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ぜんぜん無理。
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ここも広すぎる。
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なにより高いもん。

ありました

日本にはフィーエルヤッペンで跳べる川なんて無いんじゃないか、とあきらめかけた矢先、なんともちょうどいいスケールの川を見つけてしまった。それがこれ。春の小川みたいなのどかなやつだ。

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このくらいなら跳べるな。

そんなにがっかりしないでまあ見て下さい。

ちょっとだけ助走をつけて、踏み切る一歩手前で川底に棒を突き刺す。そしてその棒に抱きつく勢いで川を跳び越える。

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いよっ。
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踏み切って。
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ぴょん。
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楽々成功。

あまりにも楽々跳べてしまった。

だけどなんだこれ、楽しいぞ。このくらいの幅の川ならば普通にまたげるから本来棒なんてぜんぜん必要ないはず。だけどそこをあえて道具を使って跳び越えることで、またぐという日常がフィーエルヤッペンという名のスポーツに変わるのだ。僕は今まさにその境界に触れてしまった。実際にやってみた者だけが知るこの面白さ。プライスレスだ。

さらに高みを目指そう。

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川幅、広げます

あの程度の小川ではさすがに読者も僕も納得すまい。ということでもうちょっと跳びごたえのある川を探して近所の住宅街へとやってきた。実は小川を跳んだことで楽しくなり、もう少し上を目指したくなったのだ。

それにしても写真で見ると棒が不必要に長いのがわかる。不審者、と指差すのも怖いほどに不審だ。

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背の倍ある。

ここでいい幅の川を見つけた。幅2メートルくらいだろうか。まさに僕に跳ばれるためだけに存在するといっても過言ではない川(過言だ)。それになにより浅い。これならば落ちても大丈夫だろう。

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水深10センチくらい。

では跳ぼう。このクラスならば助走はいらない。しっかりと棒を川底に突き立て、一気に上へ向けて踏み切った。

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サクッとセットして。
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ぴょん、と跳ぶと同時に。
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棒に全てを預けます。

えいや。 

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成功。

成功した。しかし実を言うとこの幅でも結構怖かった。なぜだろう、普通に跳び越えてもそれほど怖くない幅なのに、棒を使うと一気に怖い。だけど棒で跳ばないことにはオランダに行けないのだ。ルールには従うしかない。

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さらに広く

流れは下流へいくにつれ徐々に川幅を増していく。このあたりだと3メートル近くありそうだ。本気出さないとやばいクラスだ。

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落ちたら痛そうです。

今回初めて助走をつけてみた。

軽い助走から狙っていた石の前に竿竹を突く、そして勢いを殺さないように竿竹に体重を乗せて一気に上へと跳んだ。

「フィーエルヤッペン!」

跳べ、対岸はオランダだ。

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狙いの場所に竿竹を固定して。
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踏み切ると同時に上へ。
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あとは竿竹にしがみつくようにして。
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対岸を目指します。
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いよいよ着地。

これが精一杯です

竿竹は大きく弧を描き、僕の体は対岸の縁石ぎりぎりに着地した。最後に棒で体を押し出してバランスを保つ。成功だ。

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イナバウアーでな。

しかしこの幅が今の僕の限界だということも明らかになった。もしかしたらもっと長い棒を使えばさらに広い川も跳べるかもしれないが、それは練習の積み重ねにより伸ばしていく距離なのだ。ビギナーの僕が高望みしてはいけない。

大阪に行きたいです

どうやら現在、大阪府岸和田市の運動公園にフィーエルヤッペンの競技場があるらしい。そこへ行けばもっと長い棒で遠くまで跳べるのだろうか。オランダへの入り口は意外にも大阪にあったのだ。

春だし何か新しいことを始めたい、とお考えのあなた、フィーエルヤッペンを始めてみませんか。今なら日本代表も狙えるかもしれませんよ。

※むやみに川を跳ぶのはかなり危険な行為です。十分な準備と対策を心がけましょう。また竿竹を競技に使うのも本来危険ですのでやめましょう。

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