ガネット(Gannett)の収益は、減少に歯止めがかからない。
新聞を中心とするメディア・コングロマリットのガネットが2023年2月23日に発表した2022年通期および第4四半期収支報告によると、広告収入への打撃が続いているだけでなく、同社にとって重要な成長事業のひとつであるデジタルコンテンツ事業の成長も鈍化していることが明らかになった。
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- ガネットの通期総売上は29億5000万ドル(約4000億円)で、前年比7%減となった。
- 総売上(約30億ドル)の約3分の1がデジタルコンテンツ事業によるもの(デジタルコンテンツ購読、広告、そのほかのオンラインビジネスを含む)で、合計10億ドル(約1355億円)強となった。この事業単体で見れば、前年比1.8%の増加だ。
- 第4四半期の総売上は7億3070万ドル(約990億円)で、前年同期比11.6%減。
- 第4四半期のデジタル広告収入は前年同期比20.5%減。
- ガネットは2022年にデジタルコンテンツ購読加入者が200万人を超え、2025年までに600万人にまで増やすという目標の3分の1に到達した。
- 登録ユーザーは2021年末の370万人から2022年末の590万人へと60%増加した。
広告収入が再び急降下
デジタル広告収入は、第4四半期に前年同期の9580万ドル(約129億9000万円)から7590万ドル(約102億9100万円)へと、20.8%減少した。ガネットの第4四半期および2022年通期の減収の主な要因は、印刷広告とデジタル広告の両広告事業における大幅な売上減少であると、同社CFOのダグ・ホーン氏は決算説明会で述べている。
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ガネットの第3四半期の総売上は前年同期比9%減。続く第4四半期も11.6%減と低調な点について、「前年と比較して収益化率が低い状況が続いている弱気な市場」に起因するものだとホーン氏はいう。また、これらの減少は、2023年上半期中は続く見通しだと付け加えた。
デジタルコンテンツ事業の契約者数は増加。ただし、成長は鈍化
2022年第4四半期、ガネットのデジタルコンテンツ購読者数は4万7000人純増したが、それ以前には3四半期連続で11万5000人〜11万8000人程増加していたことに比べると、減少と言わざるを得ない。同社の決算報告書によると、デジタルコンテンツ事業の2022年第4四半期の収益は3550万ドル(約48億1300万円)で、前年同期比28.6%増だが、同年第3四半期の収益3450万ドル(約46億7700万円)と比べるとわずか3%増、第2四半期の収益3250万ドル(約44億600万円)と比べると9%増に過ぎない。
この明白な業績減速にもかかわらず、同社CEO兼会長のマイク・リード氏は、最新の決算説明会で、有償の集客戦略を中断するなどマーケティング費用を削減して、代わりに登録ウォールなどのオーガニック集客戦略(無料登録など)や既存加入者の維持を優先させると述べた。
ガネットが発行する主力全国紙USAトゥデイ(USA Today)は、2021年7月にペイウォールを開設。当初は急成長を遂げる同社のデジタルコンテンツビジネスの重要な推進力になると期待されていた。しかし、ガネットの購読者の90%以上が、200以上のローカル新聞の読者で構成されているとリード氏は述べる。
それゆえ、「今後も購読者数の増加の大部分はローカルニュース市場が牽引すると思われる」と同氏は言い、さらに現時点でガネットの地元出版物に対するデジタルコンテンツ購読者は全体のわずか3%に過ぎないと明らかにしている。
また、2023年にはデジタル版のみの購読料収入が増加する見込みだが、「2022年の軌道と比べるとやや低調になる」とホーン氏は語る。
有料購読者へ結びつける鍵は「登録」
ピアノ(Piano)の最新報告書『Subscription Benchmark Report(サブスクリプション・ベンチマーク・レポート)』によると、ガネットの登録ウォール戦略は、過去1年間に何百万人もの未購読者を既存読者(既知のユーザー)として登録・情報獲得に成功しているという。さらに、この作業に成功した場合、最終的に有料購読者へコンバージョンする可能性が通常の45倍に跳ね上がる仕組み作りにもガネットは成功したという。
決算説明会によると、2022年、ガネットは登録ユーザーの総数を370万人から590万人に増やし、前年比60%増とした。
既存読者は、ガネットの出版物に無料アカウントを作成したユーザーとして分類され、匿名ユーザーが受けられないような特典を受けることができる。これらの特典には、サイト上の無料または従量課金制の追加コンテンツ、コメントの投稿、フォトギャラリーの無制限閲覧などが含まれるが、プレミアムとマークされたコンテンツにはアクセスできず、同社にとって最も望ましいユーザーである「有料購読者」へと導くためのさまざまな仕掛けが施されている。
USAトゥデイの黒字化までの道のり
2021年7月にUSAトゥデイのデジタルコンテンツ事業を開始して以来、広告収入よりも購読者数の増加が優先されたため、同紙の売上減少を招いたとリード氏は話す。そこで2023年中に、収益構造・バランスの改善を図るべく、より大規模な施策が着手される予定で、USAトゥデイを早期に黒字に戻す目論みだという。
「その結果、USAトゥデイの購読者獲得数は減少するが、全体的な売上額と収益性は向上する見込みだ」とリード氏は強調する。
今後の展望
2023年の総売上は27億5000万ドル(約3730億円)から28億ドル(約3798億円)のあいだとなる見通しで、2022年から5%から6.7%程度の減少が想定されるとホーン氏は述べる。
しかし、2023年の調整後EBITA(税引前利益に支払利息と減価償却費を加えて算出される利益)は2022年比で10~15%増加する見通しで、2022年後半に行ったコスト削減の取り組みと昨年返済の1億4700万ドル(約199億4100万円)相当の債務返済もあって、「フリーキャッシュフローが大幅に増加」する見込みだとリード氏は話す。ただし同社には、すでに総額約13億ドル(約1763億円)に上る負債があり、さらに1億2000万ドル(約162億円)の負債が2023年中に上乗せされる予定だという。
[原文:Gannett’s Q4 earnings reveal most business lines are feeling the impact of the wobbly economy]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)