銀行口座のお金はカジノのチップと同じ

GIGAZINE
2022年12月17日 12時00分
メモ



多くの人は「一万円札と銀行口座に入った1万円は同じで、形が違うだけ」「デジタルマネーは現金を使いやすくしたものに過ぎず、同じものをより現代的にしただけ」と考えています。このように、現金とそれ以外のものが「同じ価値のお金が違う形になっているだけ」と信じ込むのは「OTOMI(One-Type-Of-Money-Illusion:お金の形態は1種類だけという錯覚)」であり、金融における多くの重要なテーマを理解する妨げになっていると元金融ブローカーのブレット・スコット氏が指摘しました。

The Casino-Chip Society – by Brett Scott
https://brettscott.substack.com/p/casino-chip-cashless-society

ある人が現金を銀行に預けると、口座にお金があることを表す「銀行預金」を獲得することになります。多くの人は「銀行預金は銀行の中にある現金だ」と考えてしまいますが、実際に銀行預金分の現金が存在するわけではありません。

「現金」とそれ以外の形態について、スコット氏はカジノのチップに例えて説明しています。Aさんが1万円の現金をもってカジノに入り、それをチップに変換したとします。そうすると「カジノに渡った1万円」と「カジノが発行したチップ」の2種類が存在することになりますが、重要なのはAさんはもはや現金を持っていないということです。チップはあくまで「借用書」にあたり、借用書をキャッシュバックして初めて現金を取り戻すことができるというのがカジノの仕組みです。


ここで、カジノが運営をデジタル化することを決めたとします。カジノはデータベース上にある顧客のアカウントに顧客のお金を入金し、デジタルチップを専用のアプリを通して配布するか、スマートウォッチのようなデジタル端末を通して配布すると仮定します。それでもやはりデジタルチップはチップであり、あくまで借用書に過ぎません。このような考え方は銀行口座のお金に当てはめて考えることができます。銀行口座のお金は「デジタルチップ」に当たるのです。

スコット氏はお金の形態を2種類に分け、私たちは常に2種類のお金を使っていると解説します。その2種類とはつまり「現金」と「チップ」であり、チップは銀行口座に振り込んだお金などを指します。チップは現金へアクセスするための借用書に過ぎません。

しかし、多くの人々はその両方を「お金」とひとくくりにして考えており、このような人は、「OTOMI」にかかってしまっているとスコット氏は指摘します。スコット氏は「OTOMIの人は、キャッシュレス化とは『一種類のお金がより進化した別の種類のお金になること』だと思い込んでいることが多いです。しかし、キャッシュレス化は物理的な現金が銀行発行のデジタルチップに蹂躙されているような状況にほかなりません」と述べます。


また、現金を第一層、現金に換えられるデジタルチップを第二層とすると、デジタルチップに換えられる第三層という概念が存在します。例えば、デジタルチップで購入できるテーマパーク専用のメダルやコイン、PayPalなどのキャッシュレス決済サービスに振り込んだお金などがこれにあたります。仮想通貨も、本質的には第三層と考えられます。

このような違いを把握することにより、お金について行われる議論が理解しやすくなるとスコット氏は説明しています。例えばキャッシュレス社会となりつつある昨今において、現金(第一層)を維持したい組織と、デジタルチップ(第二層)を維持したい組織がいることが見えてきます。特に銀行ははるか昔から第2層を推し進めようとしてきましたが、第一層を維持したい人民の声を受け、中央銀行デジタル通貨(CBDC)という新しいお金を発行しようとしています。これについてスコット氏は「銀行は第2層のシステムを支配していますが、将来的には仮想的な第一層となるCBDCと、法定通貨などと連動するように紐付けられたステーブルコイン等の第三層に挟まれ、つぶされていく可能性があります」と推測しました。

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2022年12月17日 12時00分00秒 in Posted by log1p_kr

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